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しおりを挟む今日は婚約式です。指輪も届き、庭の花も咲き始めました。
庭にテーブルを置いて料理が並べられ、キース様、イザークはじめ皆様が見届け人です。
今日は前に街でジル様に買ってもらった紺色のスカートと白のセーターを着ました。ジル様とデートする時に着ようと思っていたのと、何かお祝い事の時に着ようと思っていたので。それに、ジル様が可愛いとあの時言ってくれたので、お見せするならまた可愛いと思ってほしいです。
本来ならドレスやワンピースだと思います。それでもお互い飾らない姿で婚約式をしたいとお伝えしました。
ジル様にエスコートされ私室から庭に向かいます。
「やっぱりその服シアに似合ってる。可愛い」
「ジル様も素敵です」
ジル様は私に合わせて紺地のズボンに白いシャツ姿です。
庭に着くと皆様集まっていてくれて、皆様の前に行きます。
ジル様は突然片膝をついて、
「始まりは王命による政略結婚だったが俺はこの婚姻は恋愛結婚だと思っている。
シア、アリシア王女、私の妻になってほしい」
「はい、お願いします」
「シア愛してる」
「私もジル様を愛しています」
ジル様は立ち上がり、ジル様の唇が私の唇と重なった。
ジル様は私を優しく包み込むように抱きしめてくれました。
「シアは俺が必ず護る」
「はい、お願いします」
「もう離さないからな」
「はい、私も離れません」
「国王にも返さないぞ」
「ジル様がお父様に返そうとしても私はジル様に縋りついてでも離れません」
「安心しろ、もし国王が無理矢理連れて帰ったら戦を起こしてでも取り返す」
「その時は私も参戦します。王城の隠し通路をお教えします」
「フッ」
「ふふっ」
「シア愛してる」
「ジル様愛しています」
キース様や使用人達の温かい拍手に見守られながらジル様は私の左手の薬指に指輪をはめた。
それから皆で楽しく食事をして今はジル様と二人でお茶をしています。
「ジル様、こちらを」
私は刺繍したハンカチを渡した。
「これはハンカチか?」
「はい。使ってくれますか?」
「勿論だ。ありがとう、嬉しい」
「前に証を贈りたいと言ったのを覚えていますか?」
「街でだろ?」
「はい。ジル様は私のものという証です」
「大切に使わせてもらう。もしかして刺繍をしたのはシアか?」
「はい。あまり上手くはないのですが…」
「上手いだろ!嬉しい、凄く嬉しい。
母上が生きていた時もこうやって刺繍をして贈ってくれたのかな…」
「ジル様?」
「母上の記憶があまり無くてな。よく笑っていた顔はなんとなく覚えているんだが、何をもらったとか覚えてないんだ。それに母上の物が何一つ残ってなくてな。刺繍が得意な人だったとは聞いているが…。
今迄わざわざ俺の為に刺繍をしてくれる人もいなかったからな、本当に嬉しい。ありがとう、ありがとう…」
「ジル様、これからは私がジル様の為だけに刺繍を刺します。あ、でも子が産まれたら子にも刺繍を刺したものを贈りたいです」
「ああ、子が産まれるまでは俺だけだろ?」
「勿論です」
「楽しみだ」
上手くはないけど刺繍を刺すのは好きなの。一針一針刺していく動作が好きで出来上がった時とても温もりを感じる。それに手間ひまかけて作った物には愛着も湧くし、普通のハンカチが刺繍を刺す事でとても豪華な物に見えるわ。私の腕ではまだまだ豪華には見えないけど、その分思いは込めたもの。
肌身は出さず持ち歩く物だからこそ思いを込めた物をジル様にお渡しできて良かったわ。
それにお義母様も刺繍が得意だったのね。まだ生きてらしたらお義母様と一緒に刺繍を刺せたのに…。
でも、何も残ってないって事あるのかしら。
今は夜中、
「どうしよう」
月のものが予定より早く来てしまいネグリジェもシーツも汚れてしまった。
私はワンピースに着替え、ベッド脇にあるランプを持って部屋を出た。
コンコン
「こんな夜中にどなたです」
「イザーク起こしてしまってごめんなさい。ケイトはいるかしら」
玄関のドアが開き、
「アリシアお嬢様こんな夜中にどうされたのです」
「ケイトに少し用事があって」
「少しお待ち下さい」
イザークがケイトを呼んできてくれ、
「アリシアお嬢様どうされました?」
「その……」
私はチラチラとイザークを見ました。
「あなたは寝て下さい」
「だが、」
「寝て下さい!」
「わ、分かった」
イザークが奥へ入ったのを確認し、
「ケイト起こしてしまってごめんなさい。それにこんな夜中に…」
「私は大丈夫ですよ」
「それでね、その、月のものが…」
「分かりました。湯に浸かって体を温めましょうか」
「その、シーツやネグリジェを汚してしまって」
「洗えば済むだけです。気にしないで下さい」
「ごめんなさい」
「なぜ謝るのです?月のものは必要なものですよ?さあ部屋に戻りましょう」
「ケイトありがとう」
「頼ってもらえて私は嬉しいです」
ケイトと部屋に戻りお風呂で体を洗った。
私はその時、部屋の外が騒がしい事に気付いてもいなかった。
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