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しおりを挟む今日はジル様と前に約束した、花壇に花の苗を一緒に植えます。
庭師さんは今日は来れないみたいで…。
「ジル様は花を植えた事はありますか?」
「いや、無い」
「では、私がお教えしますね」
「頼む」
「ふふっ、なんか先生になった気分です」
「先生か、シア先生教えて頂けますか?」
「はい」
私は植え方を教えました。
「ジル様、見ていて下さいね?」
「ああ」
「こうして少し穴を掘って花の苗を穴に入れて土を被せたら終わりです」
「そうか、これなら俺でも出来そうだ」
「はい、キース様もお上手でしたよ?」
「はいはい、王女様、俺を褒めても何もいい事はありません!それに俺だって教えられたよ?ジル」
「キース、お前は少し黙ってろ。俺はシアに教えてほしいんだ」
「はいはい、壁になりますよ、風景に徹しますよ」
「シア、植えようか」
「はい」
私は黙々と植えました。花が植えてない花壇はまだたくさんあります。今日中に全て植え終えれたら良いのですが…。
こっそりジル様を見つめると必ず目が合います。そして優しい瞳で微笑んでくれます。
キャー、ジル様の微笑みは破壊力凄いです。心臓が高鳴り続けて…、はぁ、格好いい…。
途中でキース様も植えてくれ半分の花壇を植える事が出来ました。花の苗が無くなったので今日はここで終わりです。
キース様は騎士隊へ戻り、今はジル様と庭でお茶をしています。
「前に言っていた婚約式だが、近々やろうと思う」
「楽しみです」
「楽しみにしてくれるのは嬉しいがこじんまりとしたものだぞ?」
「それでも嬉しいです」
「使用人達の目の前で指輪を渡すだけだ。その後は皆で食事をしようと思う」
「分かりました」
「それでだ、婚姻式だが、辺境にも教会はあるが王都に比べれば小さい。辺境から少し離れた街にある教会でやろうと思う。そこなら大きいしな」
「私は小さくても辺境でしたいです。辺境の人達に見守られながらジル様の妻になりたいです」
「そうか。だがな王太子が来るのに流石にな…」
「お姉様もお兄様も大聖堂で婚姻式をしましたがそれは国を背負う者だからです。私は貴族に嫁ぎます。確かに王都に住む貴族は大きな教会でします。でもそれは王都に住んでいるからです。王都に住んでいても領地で式を挙げる貴族もいます。領民に見守られながら嫁ぐ、とても幸せな事だと私は思います」
「そうか?」
「辺境の地に骨を埋める覚悟で私はこちらに来ました。もう王都には戻る事はないとそう思っています。
それに辺境はもう私の故郷ではないのですか?」
「当然だろ」
「では辺境の教会で式を挙げたいです」
「分かった。そのように進めよう」
「はい、お願いします」
婚姻式まであと数ヶ月、ウエディングドレスはお母様が作ってくれたからもう準備はしてある。後は式の日を待つだけだわ。
早朝、私はいつものようにこっそりとジル様を見つめる。
ジル様の鍛錬が終わると、
「シア!」
ジル様が腕を広げて待っていてくれるので私はジル様に駆け寄りジル様の胸の中に顔を埋め抱きつきます。ジル様も私を優しく包み込んでくれます。
「今日のお姿も素敵でした」
「それは良かった」
「ジル様、私もジル様のように鍛錬したらジル様になれるでしょうか」
「俺みたいになってどうする」
「ジル様はお強いと聞いています。この辺境の騎士隊の隊長ですもの、当たり前ですが」
「それは俺が辺境伯だからだ」
「違います!皆さんジル様のお姿に惚れるのだと思います。隊長自ら己に厳しく鍛錬も稽古も手抜きをしない。だから皆に慕われ皆がついて行こうと思うのです」
「それなら良いが」
「ジル様の強さは日々の努力の賜物です。もっと誇るべきです」
「ここで育つと当たり前の事だからな」
「では私がジルの素晴らしさを褒め称えます。ジル様はとても凛々しくて、まずお顔が格好いいです。それに…」
「止めてくれ!…………恥ずかしい…」
「ジル様の照れた顔、可愛い」
「シアの方が可愛い。それにこんなおっさんが照れても気持ち悪いだけだ」
「私にはご褒美ですよ?」
「何の褒美だ!」
「普段なかなか見れないお顔にできたご褒美です」
「あ~、もう勝手にしろ」
「ふふっ、可愛い」
なかなか照れた顔は見れないもの。ジル様の照れた顔が可愛いのは私だけが知っていればいいし、私だけにこれからも見せて欲しい、なんて私の我儘かしら。
「ジル様、どうすれば私もジル様のように強くなれますか?」
「シアはもう強い」
「私は強くありません。馬に一人で乗る事もできません。それに剣も振れません」
「強さは人それぞれだ。俺みたいに剣の腕が強い者もいればシアみたいに心が強い者もいる。領地経営に長けてる者もいれば国王のように国を護り動かす者もいる。人それぞれ強さも弱さも持っている。
別に何かに長けていなくても努力する姿勢は誇れるだろ?」
「そうですね。目標に向かい努力する、それはいつか己の力になります」
「ああ、この辺境の騎士達がそうだ。今は弱くてもいつか必ず己の力になる。その成長を助けるのが俺の仕事だ」
「はい」
ほら、騎士達を思う顔もかっこよすぎます。
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