辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

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「で、どうしてシアは馬に乗ったんだ?」

「そうでした。お父様から折角頂きましたし、一度見てみたかったのと、大人しい子らしいので一人で乗れたらいいなと思いまして。

それから、この子の名前ブランカにしました」

「そうか、ブランカか」

ブルル

「ブランカ、シアを乗せている時は安全にな」

ブルル

「賢い子だ」

ブルル


「ジル様の馬は紹介してもらえないのですか?」


ジル様が馬の方を見たらこちらに歩いて来て、


「ブレーブだ」

「ブレーブ、よろしくね」

ブルル

「賢い子ですね」

「ああ、賢くて勇敢だ」

「ジル様と同じですね。そして顔立ちが格好いいです」

「シア…」

「颯爽と現れたジル様はとても素敵でした」

「ブランカに乗るシアもかっこよかったぞ?」

「本当ですか?目指すはジル様ですから嬉しいです」

「俺を目指すのはどうかと思うが」

「これでジル様と一緒に出かけられますね」

「俺はシアを俺の前に座らせて出かけたい」

「その方が安心しますが、ブランカと仲良くなったのでブランカに乗って出かけたいです」

「それならたまにはブランカに乗って出かけよう」

「はい」


ジル様の優しい眼差しが近くから感じられとても恥ずかしいです。


「ジル様、降ろして下さい」

「嫌だと言ったら?」

「ジル様はお仕事中ですよね?お呼びして申し訳ありません」

「呼ばれて嬉しい。もしキースが抱っこして降ろしていたら……(キースを一発殴っていただろうな。一発で済めば良いが…)」

「ジル様?」

「シア、今後ブランカに乗りたい時は俺を呼んでくれないか?」

「お仕事中でもですか?」

「ああ」

「分かりました」


ジル様の抱っこから降ろされ、


「ブランカ、また今度乗せてくれる?」

ブルル

「今日はありがとう」

ブルル


ブランカが可愛くて仕方ないわ。


ジル様は騎士隊へ戻り私は私室で、


「ケイトありがとう」


ケイトに頼んでいたハンカチが届き、ハンカチに刺繍を刺している。

剣と盾の刺繍をして上手く完成したらジル様にお渡ししようと思っているの。


「王女様楽しそうだね」

「はい。一針一針刺していくのですが、自分で使うものはあまり気にせず刺していけますが、ジル様にお渡しすると思うと丁寧に、できれば上手に見えるようにと思います。そしてその一針一針に思いも込めて刺しています。怪我をしないで、死なないで、好き、大好き、私の思いも一緒に込めているのでとても楽しいです。

王城でお義姉様と一緒に刺繍を刺していましたが、お義姉様がいつも幸せな顔をしていたのを思い出しました。お義姉様はいつもお兄様にお渡ししていましたから」

「王女様も今、幸せな顔をしているよ」

「本当ですか?今、とても幸せな気持ちなのです。今日のジル様もとても素敵でした。朝は凛々しいお姿を、先程は颯爽と現れて馬に跨がるお姿を、はぁ、素敵すぎます」

「う~ん、その、さ…」

「はい」

「ジルを思ってくれるのは凄く嬉しいんだけどね…」

「キース様は反対ですか?」

「違う違う!誤解だけはしないでね?俺は賛成も賛成、大賛成!ジル、おめでとうって思ってるよ?」

「なら」

「ジルを思ってる顔は俺が見てはいけないやつなんだよな…分かる?」

「全く分かりません」

「だよね、そうだと思った。ジルを思い浮かべる時は誰も居ない時か、ケイトと居る時だけにした方が良いかな。イザークの前でも駄目ね」

「はい?」

「ジルを思う顔はジルだけに見せて欲しいかな?被害を出さない為にもそうして欲しい」

「良く分かりませんが分かりました。ジル様の前だけで思い浮かべます」

「そうしてくれると助かる」


私は黙々と刺繍をしました。

キース様の言っている事が全く分からないけど、お義姉様がお兄様を思っている時の幸せそうな顔は確かに私が見てもとても愛くるしいと思ったわ。可愛いお義姉様が輪をかけて可愛くて思わず抱きしめたくなったもの。

幸せ、愛しい、その表情からも読み取れたわ。あの時は政略結婚なのに幸せになれるのねって思っていたけど、恋愛結婚なら当たり前よね。

お兄様がお義姉様を見つめる瞳も今思えば幸せ、愛しい、甘い瞳だったわ。

ジル様も私を甘い瞳で見つめてくれていたら嬉しいけど、どうなのかしら。

きっと今の私の顔も幸せを全開に出しているのかしら。



コンコン

「シア?」


私室の扉は開いているのにノックをしてくれる紳士さ、それに覗いた顔が、かっこよすぎます。

今は扉にもたれて私を見ていて、

そのお姿もかっこよすぎます、ジル様!


「ジル様!」


私はジル様に向かって速歩きで行き、ジル様に抱きつきました。


「ジル様、お仕事は終わりましたか?」

「ああ」


私はジル様を見上げる。


「シア、可愛い」

「ジル様の方こそかっこよすぎます」

「ただいま」

「おかえりなさい」


 チュッ


「ジル様、恥ずかしいです。キース様がまだ居ます」

「帰って来た口付けだ、それにキースはもう居ない」


私は部屋の中をキョロキョロ、キース様のお姿がいつの間にかありませんでした。





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