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しおりを挟むジル様が騎士隊の方に行き、今は私の私室。
「キース様、ジル様の鍛錬のお姿はとても凛々しくてとても素敵でした」
「見れて良かったね」
「はい!教えて下さりありがとうございます。それで私も剣を少しでも扱えたならと思いまして」
「う~ん、それは止めた方が良いかな」
「何故ですか?」
「下手に剣を扱えると相手に向かっていくだろ?」
「そうですね。少しでも皆様のお力になれば、と思います」
「王女様が俺達の力になりたいと思ってくれるなら剣を扱えるよりもいかに助かるかを考えてほしい。戦うのは俺達騎士の使命だ。そして王女様は相手国の手に渡らないように逃げ切る。それが王女様の使命だ」
「分かりました。それなら剣よりも馬に乗れた方が良いと言う事ですか?」
「それもちょっと違うけど」
「ですがお父様から頂いた馬もいますし」
「あの馬ね。あの子はなんと言うか…
王女様、今からあの馬を見に行こうか?」
「はい、お願いします」
私は服を着替えてから私室を出て邸にある馬小屋に着いた。
馬が数頭いて、どの馬だったか、すら分かりません。
「キース様、どの馬でしょうか」
キース様に案内され一頭の馬の前…
「この子は大人しい子だから戦闘には向いていない。この子は散歩とかには良いけど。大人しいから乗りやすいし扱いやすい」
「そうなのですね」
「王女様でも乗れると思うよ?」
「私でも一人で乗れますか?」
「一人で乗れるけど絶対に一人では乗ったら駄目だからね!ジルか俺か、誰か必ずお供を付けてほしい」
「分かりました。この子は男の子ですか?女の子ですか?」
「牝馬だね。賢い子だから指示をきちんと聞くよ」
「そうですか」
「一度乗ってみる?」
「はい、乗ってみたいです」
「なら初めに馬の名前を付けて触る所からね」
「はい。名前ですか……、ブランカ、ブランカはどうでしょう」
「良いんじゃない」
私は馬に、
「ブランカ、貴女の名前よ?」
ブルル
「気にいってくれた?」
ブルル
「私はアリシア、よろしくね。これからブランカに触るけど良い?」
ブルル
私はブランカに触った。賢くて優しくてまるでお姉様みたい。
「王女様、慣れてきたら乗ってみる?」
「はい」
私は乗り方を教えてもらい、少し手を借りブランカの上に座った。
「ありがとうブランカ」
「手綱は俺も持つから少し歩いてみようか」
「はい」
私は手綱を持ち、キース様が引いてくれたので後は身に任せた。
ブランカがゆっくり歩いてくれたから一人でも怖いないわ。
庭を一周して、
「どう?」
「ブランカがとても丁寧に歩いてくれたので怖くありませんでした。ありがとうブランカ」
ブルル
「ふふっ、ブランカはとても賢くて優しいですね」
「さぁ降りようか」
「はい」
「ブランカ、そのまま王女様を大人しく乗せててね」
ブルル
キース様はそういうともう一頭馬を連れて来て馬に跨りました。
「王女様見ててね?」
「はい」
「こうやって降りて」
キース様は身軽に馬から降りました。
え?それを私に求めるの?無理よ。鞍を持って右足を左足の方に持ってきて飛び降りる?無理です無理です!
「キース様、申し訳ありませんが私を抱っこしてもらえませんか?ジル様がしてくれるように…お願いできますか?」
「それは…俺の身が危ないというか…。少し待ってて」
キース様は懐から何かを取り出し何かを吹いていました。
「直ぐにジルが来るからそれまで待ってて?」
「はい。申し訳ありません」
直ぐに大きな鳥がキース様の肩に止まった。
「とても大きな鳥ですね」
「鷹ね。騎士隊にいる鷹をこっちに飛ばしたからジルが直ぐにかけつけてくるよ」
数分後、
ドドドドドドドドド
地響きの音が聞こえ、
「来たか」
「え?」
「キース!シアに何かあったのか!」
馬に跨り颯爽と現れたジル様の姿に胸が高鳴りました。
またジル様の素敵な姿に目を奪われたわ。本当に格好いいわ。
「早かったな……」
「鷹が邸に向かって飛べば何事かと思うだろ」
「いや、王女様が馬から降りれなくてさ」
「どうしてシアが馬に乗ってる!キース!危険な真似はさせるなと言ってあっただろ!」
「ジル様、私が乗りたいとお願いしたのです。キース様を怒るのは止めて下さい」
「そうなのか?」
「はい。お父様に頂いた子です」
「それは分かっていたが」
「それで…その…私を降ろして頂けませんか?」
「俺が降ろしても良いんだけど流石に抱っこして降ろす訳にもね…」
「そうか、すまない」
ジル様が腕を広げてくれたので私はジル様に抱きつきました。そのまま横抱きされ、
「ジル様、降ろして下さい」
「嫌だ」
「キース様がいます」
「キース見てるか?」
「いや、俺は何も見てないよ。俺の事は風景の一部だと思ってくれれば良いよ」
「だそうだ」
「もう!」
チュッ
「ジル様!……恥ずかしいです…」
私は真っ赤になった顔をジル様に抱きついて隠した。
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