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しおりを挟む今日からキース様が護衛として私に付いてくれます。
今は私の私室…
「キース様申し訳ありません」
「俺は居ないものと思ってくれて良いから。好きに過ごしてね?」
「はい。あの、外は行ってもいいですか?」
「外?」
「庭師さんが花壇にお花を植えてくれるのですが、見に行きたくて」
「外って庭ね、庭なら良いよ」
「ありがとうございます!」
早速庭に出て年配の庭師さんの作業を見ていた。
「お嬢さんも一緒にやるか?」
「良いのですか?お邪魔ではありませんか?」
「そこに立っていられる方が気になっちまう」
「あ!すみません」
「やり方を教えるから」
「はい!お願いします」
スコップで土に穴をあけてその穴にまだ花が咲いてない葉っぱだけの苗を入れて土を被せる。
苗の植え方を聞いて私も一緒に苗を植えます。
「楽しいです。キース様もご一緒にどうですか?」
「俺も?」
「はい。楽しいですよ?」
「それならやるか」
庭師さんは流石に手慣れたものでどんどんと植えています。
私も負けてられないわ。
ベンチの前の花壇に植え終えた庭師さんは木の剪定をしていました。私とキース様はベンチでお茶をしています。
「あの、キース様、少しお聞きしてもよろしいですか?」
「どうぞ」
「まだジル様と婚姻していませんが私も騎士の方々にご挨拶をしたいのですが。街へ行った時もご挨拶が出来ず、帰って来た時はお恥ずかしいのですが、私寝てしまいまして…」
「挨拶か…、まあ必要と言えば必要だよな。王女といえど辺境伯夫人になる訳だし」
「はい」
「でも騎士達を思うとな…」
「どういう意味ですか?」
「挨拶するって事は少なくても言葉を交わすよね?」
「そうですね」
「それこそ「はじめまして」だけの挨拶だけで終わらないよね」
「そうですね。労いの言葉やご迷惑をかけるのでそのこともお伝えしたいと思います」
「そうするとな…」
「はい?」
「ジルが嫉妬するだろ?」
「嫉妬、ですか?」
「俺のシアと話すな!って」
「まあ!ジル様がそんな事を?ふふっ」
「そうするとその後の稽古が…あ~考えたくない。王女様、挨拶はいらないと思う」
「そうですか?残念です。騎士隊の稽古を一度見てみたかったのですが」
「見てもむさ苦しいだけだよ?男ばっかだし。それに口も悪い」
「こちらだけで約150名の騎士の方々がいるのですよね?
私は騎士の方々には常日頃から感謝をしています。辺境を護る騎士の方々には特に感謝をしています。だからこそどんな稽古をしているのか一度見てみたかったのです」
「それなら早朝見れるかもよ?」
「早朝ですか?」
「騎士は鍛錬こそが基本なんだ。自分と向き合う唯一の時間かな?稽古はその確認」
「はい」
「ジルの格好いい所見てみたくない?」
「見たいです!」
「早朝ジルは毎日鍛錬をする。いや俺も騎士達もしているけどね。ジルの鍛錬を見ると良いよ」
「はい!」
「だけどジルには内緒ね?ジルは人に見られるのを嫌うんだ」
「それなのに私が見てもいいのでしょうか」
「王女様なら喜ぶんじゃない?」
「では内緒でこっそり見ます」
「そうしてやって」
私は次の日の早朝、まだ朝焼けの景色が残る時間。
ジル様は邸の庭で鍛錬をしていると昨日キース様に聞いていた。
私はジル様が一人で鍛錬をしている姿をこっそり覗く。
話しかける気も邪魔をする気もない。それでも一振り一振りとても真剣な顔で剣を振る姿はとても凛々しくて素敵だわ。
私はジル様の鍛錬する姿に目を奪われた。
こんな素敵な方が私の旦那様になるなんて…。ジル様はどれだけ私にジル様を好きにさせるのかしら。
ジル様の鍛錬が終わり、
「シア、そこで何をしているんだ?」
「見つかってしまいました」
「ん?」
「ジル様の鍛錬のお姿を見ていました」
「そうか。まあ見て楽しいものじゃないが」
「そんな事はありません!ジル様の格好いいお姿に私は目を奪われました。それに…」
「それに?」
「ジル様はずるいです!」
「俺の何がずるいんだ?」
「こんな素敵なお姿を見て私は益々ジル様が好きになりました。ジル様は格好良くて素敵で私だけがジル様を好きになってしまいます」
「おいおい、それは褒め過ぎだぞ?」
「そんな事ないです」
「俺もシアが俺を、その、素敵、だと言ってくれると嬉しい。それに気持ちを伝えてくれるシアの姿に俺はまた惚れる」
「ジル様大好きです」
「俺もシアが大好きだ」
「ふふっ」
「フッ」
私達はお互いを見つめながら笑ってしまいました。
日が昇り朝食までの時間二人で庭の散歩をしました。
「ジル様、この花は私が植えました」
「シアが植えたのか?」
「はい、とても楽しかったです」
「そうか。ならここにある花壇全部に花を植えるか」
「良いのですか?」
「ああ」
「その時はジル様も一緒にお花を植えませんか?」
「そうだな」
私達はそのまま食堂へ行き朝食を食べた。
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