17 / 60
17.
しおりを挟むキース様が敷物を敷いてくれて居たので、私は敷物の上に降ろされ、ジル様も座り、色々な話をしました。王城で暮らして居た時の話や、ジル様の話や、勿論、私以外恋愛結婚だったと言う話も。後、ジル様のご両親の話も。
それから手を繋いで湖の周りを歩いて回り、同じ景色を見ていました。
敷物の敷いてある所に戻り、簡単に食べれる、具がサンドされたパンを食べました。
昼食を食べてから、ジル様は横になり、話をしました。
「ジル様、一つ気になったのですが」
「何だ?」
「先程キース様が帰られる時、何かあったら知らせてくれとおっしゃっていましたが、どうやって知らせるのですか?」
「鷹だ」
「鷹ですか?」
「ああ。早馬よりも早いからな。騎士隊の連絡用で使っている。緊急な時には鷹を飛ばして知らせが来る。国境は特にだが、巡回の時や部隊を動かす時に必ず飛ばせる」
「ですが今日は仕事ではありません」
「そうだが、シアが狙われてる以上、用心に越した事はない」
「そうですが」
「危険だからと邸の中に閉じ込めたい訳でもない。俺もシアと出掛けて息抜きが出来る」
「はい。私もジル様と出掛けるの楽しみです」
「俺もシアと出掛けたい。出来ればこうやって二人きりで」
「私もです。ジル様と二人きりで出掛けたいです」
「その為だ。呼べば直ぐ来るが呼ばなければその辺を飛んだり休んだりしてる」
「賢いのですね」
ジル様が起き上がり、私の横に座り、私をジル様の膝の上に横向きで座らせ、
「キャッ!ジル様!」
「嫌か?」
「嫌ではありません。ちょっと驚いただけです」
「そうか」
ジル様が優しく抱き締め、私はジル様の胸に顔を埋めた。ジル様が優しく髪を撫で、
「シア、聞いて良いか?」
「はい」
「シアは王子の事何とも思ってないのか?」
「あの馬鹿王子ですか?」
「馬鹿王子?そうだな、その馬鹿王子だ」
「思うも何も、何の感情もありません。一度もお会いした事ありませんし」
「そうなのか?」
「はい。王子として国を民を護る立場に居ながら真実の愛に酔ってる王子が国を護れるとは思いませんが」
「手厳しいな」
「事実です。他国の王族と婚約を結ぶという事の重要性が分かっていたなら、そんな馬鹿な事はしません。だってそうでしょう?あちらは側妃に妾も王族は持てるのですよ?真実の愛の方を側妃にすれば良かっただけの事です」
「そうだが」
「この国は王族も一夫一妻制ですが、他国は違います。お姉様が嫁いだ帝国も側妃を持てます。お義兄様は持たないと宣言されてますが」
「確かに」
「お義兄様はお姉様以外は娶るつもりは無かったらしくお姉様に振られたら一生独身を貫くとおっしゃっていたみたいです。私もこの間聞いたばかりですが。もしお姉様が王族でなくてもお義兄様はお姉様を娶ったと思います」
「だろうな」
「私は王女として産まれた以上、国と国を結ぶ婚姻になると幼い頃に教えられました。そしていざ争いが起これば見せしめで嫁いだ国で命を落とす事も教えられました。多くの命が奪われれば奪った国を憎むのは当然です。例え王妃でもその国の出と言うだけで矛先が向くのは仕方のない事です。他国の王族と婚姻するとはそういう事です。ですが、馬鹿王子に感謝もしています」
「感謝?」
「はい。幼い頃から他国の王族と婚姻するとは教えられましたが、相手は決まっていませんでした。だから、命を落とす覚悟は出来ていましたが、婚姻に関しては何も思っていませんでした。隣国の王子と婚姻するだろうと決まって、私は悲しかったのです。あちらは側妃に妾が持てますでしょ? 王子と愛情を育んでも、王子の愛は側妃に妾にも注がれます。
私はそれを認める事が出来ないと思いました。愛情を育まなければ気になりませんが、そうすれば形だけの王子妃です。王女としてそれも致し方ないと諦めていましたが、馬鹿王子のお陰で婚姻じたいが無くなり、感謝しています」
「それで俺だけどな」
「だから始めに聞いたのです。恋人はいるか、好意を寄せてる方はいるかと。どちらも居ないなら愛情を育めますでしょ?」
「もし俺に居たとしたら?」
「その時は諦めました。形だけの夫婦になるだけの事です。ですが、どちらも居ないとおっしゃられました」
「居ない。だから俺と育もう」
「はい。私もジル様と育みたいです」
「良かった」
「はい」
ジル様は私をギュッと抱きしめ、私もジル様を抱きしめた。もうこの温もりを手放す事など出来ません。
34
お気に入りに追加
2,078
あなたにおすすめの小説
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる