辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

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目が覚め、ぼんやりした目で辺りを見渡し、自室の部屋のベッドの上に居る事を自覚して慌てて起き上がり、状況が分からない私は薄暗い部屋をキョロキョロと。


「馬車に乗って、ジル様とお話をしていて、それから…。 そうよ!いつの間にかジル様の肩にもたれ掛かってて、ジル様が私の髪を優しく撫でてて、それがとても心地良くて、とても安心して。もしかして私寝ちゃったの! キャー!恥ずかしいわ~!もしかしてジル様に寝顔見られちゃた?どうしましょう!」


と、一人でぶつぶつ言っていたら、落ち着きを取り戻し、ベッドの側の電気を付け、部屋の灯りを付けた。時計を見ると夕食の時間がとうに過ぎていて、慌てて手ぐしで髪を整え、鏡で確認し、皺になったワンピースが気になったけど、ジル様をお待たせしてもいけないし、足早に食堂へ向かった。

食堂の扉を開けて中に入るとケイトと目が合い、


「アリシアお嬢様、お呼び頂けたら迎えに行きましたのに。申し訳ありませんでした」

「寝てて起きられなかった私がいけないのよ。ケイトも忙しいのだから、自分で出来る事ぐらいしないと。でも、少し皺が気になるのだけど、着替えて来た方が良いかしら?」

「このくらいの皺は気になりませんから大丈夫ですよ」

「そうかしら。それよりジル様はどちらにいらっしゃるのかしら。夕食の時間をとうに過ぎてしまったわ」

「ジルベーク様は帰られてから騎士隊の方へ行かれたので、先に夕食を召しあがってて欲しいと。今準備致しますのね」


ケイトはベンに声をかけに行き、私は席に座って待っていた。暫くすると夕食が並べられ、食べ始めた。食べ終わる頃ジル様が食堂に入って来て、ジル様の分も並べられ、食べ終わった私はジル様が食事をしている所を眺めていた。


「何だ?」

「ジル様の食べてる姿を見ているのです」

「そうか。少し食べづらいが…。食べ終わったら一緒にマフィンを食べよう」

「はい!」


ジル様はあっという間に食べ終わり、ケイトに話し掛けていた。食堂と繋がっている応接間へ移動し、ソファーに座るとジル様が横に座った。

マフィンと紅茶をケイトが机に並べてくれ、


「ケイト達の分も買って来たから後から食べてね。ベンの家族とベンの弟さん家族の分も入ってるから食べてって伝えてもらえる? とても美味しいの。ジル様にお願いして買って貰ったのよ」

「ありがとうございます。後で頂きますね。では、何かありましたらお呼び下さい」


ケイトが応接間から出て行き、早速マフィンを食べた。


「うぅ~ん。美味しいです」

「俺の分も食べるか?」

「ジル様も分はジル様が食べて下さい。私は自分の分だけで十分です」


ジル様はマフィンを二口で、二口?食べ終わり、紅茶を飲んでいた。私も紅茶を飲み、


「今日は楽しめたか?」

「はい。とても楽しかったです」

「そうか。それでだ………」

「ジル様?」


ジル様は突然何も話さなくなり、


「ジル様?どうされましたか?」

「ゴホン。それでだ、初めてのデートの記念にだな、何ていうか、その、何か形に残る物があれば良いと思ってだな…」


ジル様が上着のポケットから長細い箱を取り出し、
照れながら私に渡して、


「私に?でしょうか?」

「シア以外で誰に渡すと言うんだ」

「ありがとうございます。私、何も用意してません、すみません」

「俺が渡したかったんだ」

「ありがとうございます。開けてもよろしいでしょうか」

「あぁ、その、気に入ってくれれば良いが…」


私は長細い箱を開け、


「これ………」

「シアが見ていたから気に入ってくれると良いが」

「はい!ありがとうございます」

「良かった」

「このネックレスの石、ジル様の髪の毛と同じ色なのです」

「ああ、そうだな」

「それで、とてもシンプルで普段付けていても邪魔にならないデザインで」

「そうなのか?」

「はい。普段、アクセサリーは身に付けないのですが、この石を見た時、毎日身に付けてたら何ていうか、お恥ずかしいのですが、ジル様に護られてる様な、近くにいるような感じがして…」

「それは、うん、嬉しいな」

「嬉しいですか?」

「当たり前だろ、自分の色を毎日身に付けたいと思ってくれたら、嬉しいだろ」

「はい、ですから私は自分で買いたかったのです。買ってこっそり身に付けようと」

「シア、俺がシアに付けても良いか?」

「はい、お願いします」

「シア、俺が言ってる意味が分かってるのか?」

「え?初めてデートした記念以外に何か意味があるのですか?」

「ある。初めてデートした記念に贈りたいと思ったのは本当だ。だが、シアが俺の色を毎日身に付けたいと思ってくれ、俺も毎日身に付けて欲しいと思ったら、別の意味ができた」

「別の意味ですか?」

「ああ。シアに俺の手でネックレスを付けたら、もうシアを手放せない。一生離せなくなるがそれでも俺が付けても良いか?」

「はい。…ジル様に付けていただきたいです」


ジル様は私の手にあるネックレスを箱から取り出し、私に付けてくれました。


「シア、抱きしめても良いか?」

「はい」


ジル様に抱きしめられ、私もジル様の背中に手を回し抱きしめました。暫くするとジル様が少し離れ、私の額に口付けを落とし、私は顔が真っ赤になり俯いてしまいました。


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