15 / 60
15.
しおりを挟む目が覚め、ぼんやりした目で辺りを見渡し、自室の部屋のベッドの上に居る事を自覚して慌てて起き上がり、状況が分からない私は薄暗い部屋をキョロキョロと。
「馬車に乗って、ジル様とお話をしていて、それから…。 そうよ!いつの間にかジル様の肩にもたれ掛かってて、ジル様が私の髪を優しく撫でてて、それがとても心地良くて、とても安心して。もしかして私寝ちゃったの! キャー!恥ずかしいわ~!もしかしてジル様に寝顔見られちゃた?どうしましょう!」
と、一人でぶつぶつ言っていたら、落ち着きを取り戻し、ベッドの側の電気を付け、部屋の灯りを付けた。時計を見ると夕食の時間がとうに過ぎていて、慌てて手ぐしで髪を整え、鏡で確認し、皺になったワンピースが気になったけど、ジル様をお待たせしてもいけないし、足早に食堂へ向かった。
食堂の扉を開けて中に入るとケイトと目が合い、
「アリシアお嬢様、お呼び頂けたら迎えに行きましたのに。申し訳ありませんでした」
「寝てて起きられなかった私がいけないのよ。ケイトも忙しいのだから、自分で出来る事ぐらいしないと。でも、少し皺が気になるのだけど、着替えて来た方が良いかしら?」
「このくらいの皺は気になりませんから大丈夫ですよ」
「そうかしら。それよりジル様はどちらにいらっしゃるのかしら。夕食の時間をとうに過ぎてしまったわ」
「ジルベーク様は帰られてから騎士隊の方へ行かれたので、先に夕食を召しあがってて欲しいと。今準備致しますのね」
ケイトはベンに声をかけに行き、私は席に座って待っていた。暫くすると夕食が並べられ、食べ始めた。食べ終わる頃ジル様が食堂に入って来て、ジル様の分も並べられ、食べ終わった私はジル様が食事をしている所を眺めていた。
「何だ?」
「ジル様の食べてる姿を見ているのです」
「そうか。少し食べづらいが…。食べ終わったら一緒にマフィンを食べよう」
「はい!」
ジル様はあっという間に食べ終わり、ケイトに話し掛けていた。食堂と繋がっている応接間へ移動し、ソファーに座るとジル様が横に座った。
マフィンと紅茶をケイトが机に並べてくれ、
「ケイト達の分も買って来たから後から食べてね。ベンの家族とベンの弟さん家族の分も入ってるから食べてって伝えてもらえる? とても美味しいの。ジル様にお願いして買って貰ったのよ」
「ありがとうございます。後で頂きますね。では、何かありましたらお呼び下さい」
ケイトが応接間から出て行き、早速マフィンを食べた。
「うぅ~ん。美味しいです」
「俺の分も食べるか?」
「ジル様も分はジル様が食べて下さい。私は自分の分だけで十分です」
ジル様はマフィンを二口で、二口?食べ終わり、紅茶を飲んでいた。私も紅茶を飲み、
「今日は楽しめたか?」
「はい。とても楽しかったです」
「そうか。それでだ………」
「ジル様?」
ジル様は突然何も話さなくなり、
「ジル様?どうされましたか?」
「ゴホン。それでだ、初めてのデートの記念にだな、何ていうか、その、何か形に残る物があれば良いと思ってだな…」
ジル様が上着のポケットから長細い箱を取り出し、
照れながら私に渡して、
「私に?でしょうか?」
「シア以外で誰に渡すと言うんだ」
「ありがとうございます。私、何も用意してません、すみません」
「俺が渡したかったんだ」
「ありがとうございます。開けてもよろしいでしょうか」
「あぁ、その、気に入ってくれれば良いが…」
私は長細い箱を開け、
「これ………」
「シアが見ていたから気に入ってくれると良いが」
「はい!ありがとうございます」
「良かった」
「このネックレスの石、ジル様の髪の毛と同じ色なのです」
「ああ、そうだな」
「それで、とてもシンプルで普段付けていても邪魔にならないデザインで」
「そうなのか?」
「はい。普段、アクセサリーは身に付けないのですが、この石を見た時、毎日身に付けてたら何ていうか、お恥ずかしいのですが、ジル様に護られてる様な、近くにいるような感じがして…」
「それは、うん、嬉しいな」
「嬉しいですか?」
「当たり前だろ、自分の色を毎日身に付けたいと思ってくれたら、嬉しいだろ」
「はい、ですから私は自分で買いたかったのです。買ってこっそり身に付けようと」
「シア、俺がシアに付けても良いか?」
「はい、お願いします」
「シア、俺が言ってる意味が分かってるのか?」
「え?初めてデートした記念以外に何か意味があるのですか?」
「ある。初めてデートした記念に贈りたいと思ったのは本当だ。だが、シアが俺の色を毎日身に付けたいと思ってくれ、俺も毎日身に付けて欲しいと思ったら、別の意味ができた」
「別の意味ですか?」
「ああ。シアに俺の手でネックレスを付けたら、もうシアを手放せない。一生離せなくなるがそれでも俺が付けても良いか?」
「はい。…ジル様に付けていただきたいです」
ジル様は私の手にあるネックレスを箱から取り出し、私に付けてくれました。
「シア、抱きしめても良いか?」
「はい」
ジル様に抱きしめられ、私もジル様の背中に手を回し抱きしめました。暫くするとジル様が少し離れ、私の額に口付けを落とし、私は顔が真っ赤になり俯いてしまいました。
60
お気に入りに追加
2,141
あなたにおすすめの小説
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人
キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。
だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。
だって婚約者は私なのだから。
いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣)
小説家になろうさんにも時差投稿します。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている
黎
恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。

婚約者様は大変お素敵でございます
ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。
あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。
それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた──
設定はゆるゆるご都合主義です。
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる