辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
13 / 60

13.

しおりを挟む

店の外で待っていたお二人に、


「お待たせしました」

「遅かったな」

「お金をお支払いしようと…。ジル様ありがとうございます。よろしいのですか?」

「あぁ。シアが使う物は俺が出したいんだ。だから気にするな」

「ありがとうございます」

「で、何故足を止めていた?」

「え?」

「さっき、足を止めて何か見てただろ?」

「あっ、いえ、何でもありません」

「シア、昨日も言っただろ?俺は察するとか出来ない。言ってもわないと分からないぞ?」

「何でもありません」

「シア!」

「あの…、とても目に惹かれたお洋服がありまして。ですが、お目当てのズボンは購入しましたし、贅沢です」

「キース、すまないが少し待っていてくれ」


ジル様が私の手を引いてお店の中に入り、


「どの服だ?」


私は指をさし、


「あの飾ってある服です」

「あれか。すまない、あの服を着せてもらえるか?」


店員さんが服を取り、先程の試着室へ。 服を着てジル様の前に来ました。


「どうでしょう?」

「うん。可愛い」

「え?」

「いや、何でもない。これを貰えるか?」

「今度は自分で購入します」

「分かったから、早く着替えてこい」


私はワンピースに着替えて、試着室から出たら、先程着ていた服が袋に入ってる状態でした。ジル様は袋を受け取り、私の手を引き店の外へ出て来ました。


「ジル様、私が自分で購入すると言いました」

「分かってる。だが、シアが使う物は俺が全て買いたい。そこは譲れん」

「ですが…」

「服を数枚買うのが贅沢か?」

「必要のない物を購入するのは贅沢です」

「だが、俺もシアに何か贈りたい。俺は自分で何か考えて贈るのは苦手だから、シアが気にいった物を贈りたい。それにさっきの服は可愛いかった、シアに似合っていた。だから、俺が買いたかったんだ」

「まぁまぁまぁ。王女様、ジルの気持ちも分かってあげて下さい。ジルは自分で買った物を身に纏って欲しかっただけです。これからも自分で買った物を身に纏って欲しい、そういう事です。自分が買った物を身に纏った姿を見て満足するんです。王女様は俺のものだという独占欲です。男とはそういう生き物です」

「そうなのですか?」

「ああ。これからもシアの物は俺が買いたい。だから欲しい物は遠慮せず言って欲しい」

「ジル様、ありがとうございます。私もジル様に私のものだという証が贈りたいです」

「ああ、楽しみに待っている」

「はい!」

「じゃあ、次はどうする?」

「先程、皆様が食べていた物が食べたいです」

「あれね。マフィンね。じゃあ買いに行こうか」

「はい!」


暫く歩いて屋台があり、列の最後尾にジル様と並びました。キース様は違う屋台で色々購入していました。


「ジル様は何個食べますか?」

「俺は一個で良い。シアは何個食べるんだ?」

「私も一個で十分です」


マフィンを三個購入し、キース様が待っているベンチに向かったら、机の上には色々な料理が並んでいて、


「ついでにお昼ご飯も屋台ですまそうと思って、適当に色々買ってきたから、好きな物食べてね。王女様、屋台の料理も初めてでしょ?」

「はい、初めてです。楽しみです」


私は色々な料理を少しづつ貰い、大量にあった料理があっという間に無くなりました。ジル様だけでなく、キース様も大量に食べるので驚きました。騎士の方って皆さんそうなのかしら。

食後にマフィンを食べ、とても甘くて、ふわふわしててでもしっとりとしてて、とても美味しかったわ。


「ジル様、屋台の料理もマフィンもとても美味しかったです。それで、ケイトに一つ購入してもよろしいですか?」

「それなら使用人の分を買って行こう。シアも夕食後に食べたいなら買っても良いぞ」

「よろしいのですか?食べたいです。ジル様は?」

「俺も買っていこう。夕食後一緒に食べないか?」

「はい、一緒に食べたいです。では買ってきますね」

「シア、一人で行くな」


ジル様は私の手を取り一緒に歩き出しました。ケイト達の分も合わせて十一個購入し、荷物が多くなったのでキース様が一度馬車まで置きにいってくれました。




しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。 だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。 だって婚約者は私なのだから。 いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣) 小説家になろうさんにも時差投稿します。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている

恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。

婚約者様は大変お素敵でございます

ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。 あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。 それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた── 設定はゆるゆるご都合主義です。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

処理中です...