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しおりを挟む馬車から下り、街に入ったら、とても活気のある街並みで、少し興奮してしまいます。
「ジル様、ジル様、早く行きましょ」
私はジル様の手を引いて街の中に入って来ました。王都でも馬車から覗く程度で街へ出掛ける事は無かったから。王城では出入りの許可を持つ商店から小物は購入していたし、ドレスはお抱えデザイナーに作ってもらっていたし、お針子さんも王城に居たものね…。
「シア、少し待て。キースが来てからだ」
「あっ!申し訳ありません。少し興奮してしまいました」
「シアは王都では街へ出掛けたりしていたのか?」
「いいえ。初めて街へ来て興奮してしまいました」
「お待たせ~」
「キース様!お待ちしていました。ジル様、もう行ってもよろしいですか?」
「あぁ、行こう」
「ジル、ジル、王女様どうしたの?」
「街に出るのが初めてらしくて張り切っている」
「そうなんだ。で、もう手繋いでるの?」
「シアは無意識だ」
「あぁ、でも可愛いな~。張り切る王女様。おいおい、睨むなよ。可愛いってそういう可愛いじゃないからな!」
「ジル様、あの店は何が売っているのですか?あの店は?」
「シア、まずズボンを買いに行こう。それから気になるお店を覗けば良い」
「そうでした。ズボンはどのお店にありますか?」
「キース」
「了解!じゃあ案内するね~。俺の後をついて来てね~」
「キース様、お願いします。ジル様、ジル様、後で皆様が食べてるあれを食べたいです」
「あぁ、後で食べよう」
若い女の子が好む服屋に連れて来てもらい、ジル様と店の中に入り、そこで、初めてジル様と手を繋いでいた事に気が付いたの。
「ジル様、申し訳ありません。手を繋ぐなんてはしたない行為でした」
私は顔が真っ赤になりました。それも私から繋いだわよね?キャー!どうしましょう。
ジル様は服屋の店員さんと何か話していて、店員さんがいくつかズボンを持ってきてくれました。私は店員に連れられ試着室で店員さんに教えて貰いながらズボンを履き、ワンピースを着ていたから、ズボンに合わせた上の服も着替えた。 試着室を出てジル様に見せます。
「ジル様、どうでしょう?」
「うん。良いと思うが。やはりケイトを連れて来るべきだったな。少し待て」
ジル様は外で待つキース様を連れて来ました。
「キース、どうだ?」
「え?良いんじゃない?」
「そうか。ならそれを貰おう」
「ちょ、ちょっと待ちなよ!とりあえず数枚着てから決めようよ。って事で、次着て来て」
「え?まだ着るのですか?」
「そうだよ。数枚着ると良い所や気になる所が分かるからね!ほらほら、着替えて来て」
「はい…。分かりました…」
私は次の服をまた上下着替えて二人の前に来ました。
「どうでしょう?」
「良いと思う」
「う~ん。なんか腰回りが大きくない?」
「確かに先程のよりは大きいですね」
「はい。じゃあ次ね」
私はまた着替えました。数回着替えて、少し疲れたわ。着て来たワンピースに着替えて二人の元へ向かいました。
「どれにしましょうか?」
「気にいった物は無かったの?」
「履きやすかったのは紺色のです」
「あれね。じゃあ紺色のズボンにしよう。上の服で気にいった物は無かったの?ズボンだけ買っても上の服がないと着れないよ」
「そうでした。緑色の服の脱ぎ着が楽でした」
「じゃあ、それも買おう」
「はい。では、お金を支払ってきます。ケイトに買い物の仕方を学んで来ましたので」
「ちょっと待ってね。おい!ジル!」
「決まったか?上の服とズボン一枚づつだけか?」
「はい。馬に乗れる様になれば乗馬服の方が良いですし」
「確かにな。悪いが包んでくれるか」
店員さんが包んでくれて袋に入れてくれました。
「すみません、おいくらですか?」
私は鞄から財布を取り出し、店員さんに尋ねた。
「お金はもう頂いていますよ。ありがとうございました」
袋を渡され、店の外に出ようとした所で、とても目に止まる服が飾ってありました。思わず足を止めて眺めてしまいました。 上の服はゆったりとした白のセーターで下な紺色のスカート。スカートの裾に刺繍が施してあり…。私のお金で買えるかしら。でも、お二人を待たせているし…。贅沢は駄目よね。
早く先程の食べ物を食べに行きましょ!
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