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しおりを挟む昨日の夜は少し興奮してしまい、あまり眠れず、ケイトに起こしてもらった。
ジル様と朝食を食べて、ジル様が騎士隊の方に一度顔を出してくるからと食堂を出て行って、私はケイトと一緒に準備をした。
「ケイト、変じゃないかしら」
「アリシアお嬢様、先程から同じ事をおっしゃっていますよ。とても可愛らしいです」
「そう?楽しみで昨日もなかなか眠れなくて…」
「そうでしたか。街まで一時間以上掛かりますから、少し眠って行かれたらよろしいかと思いますよ」
「眠ってしまったらジル様に申し訳ないわ。大丈夫、眠ったりしないわ」
準備が出来、玄関まで行くとジル様がもう待っていてくれてました。
「ジル様、遅くなって申し訳ありません。お待たせしましたか?」
「いや、待ってない。さぁ、行くか。先に馬車に乗って待っててくれないか」
ジル様に手を借りて馬車に乗り込みました。御者はキース様がしていて、ジル様と少し話し、ケイトが何かジル様に話していた。
ジル様が馬車に乗り込み馬車は動き出し、馬車の前後に護衛の方々が騎馬でついて来ていたの。
「騎士の方々にご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「大丈夫だ。元々街へ巡回に行く部隊だからな。俺達が街を見て回ってる間に巡回し、帰りまた一緒に帰ってくる」
「そうですか」
「街に着くのは一時間以上掛かる。楽に座った方が疲れないぞ」
「はい。今は少しワクワクしています。こちらに来た時も思いましたが、草原がずっと続いていました」
「ああそうだな。草原がある事で領地に住む領民に被害が及ばない。昔は草原が戦地になる時もあったが、一時間もあれば領民の避難が出来る。その為の草原なんだ」
「領民を避難させるのですか?」
「ああ。隣の領地に避難させる」
「そうですか。大変ですね」
「だが、生きてこそだ」
「勿論です」
「辺境の地は広大の土地があっても結局は戦地になってしまう。建物を作れば標的にされるしな」
「目立ちますものね」
「だから街に住まいも人も集めてる。これから辺境伯婦人として領地経営もしてもらう事になるから分かると思うが、国からの支援金が一番大きいが国境沿いと言う事は隣国へ行き来するにはこの地を通るしかない。その為、街は栄えてるし、酒場も宿もあるし、所謂あれだ、娼館とかもある。それらの税で領地を回している。
それから、隣国と行き来するには予め申告している者しか行けないし、荷のチェックも厳重にやる。申告以外の物を持ち出せない様になってるし持ち込む事も出来ない。 勿論、罰金も多額に発生する。通行料もそれなりに高額だしな。それらは騎士隊の支援に回している。
騎士隊で使用している剣もこの地で作って王都や他の辺境へ売買したり、他国へ貿易している。俺は商会を持っているんだが、いずれシアに任せたいと思う。その売上の半分を騎士隊の支援に回している。勿論、邸で暮らすのに必要なお金はあるから、遠慮せず使って欲しい」
「贅沢をするつもりはありませんが、必要な物があればその時は使わせて頂きます」
「贅沢してくれて良い。それくらいの蓄えはある」
「ですが、無駄に贅沢する必要はありません。騎士隊だけでも約300人居ますもの。食事代、お給金、それだけでも多額です。それらを賄えてるなんてジル様は素晴らしいですね」
「いや、国からの支援が大半だぞ?」
「国からの支援は当たり前です。辺境の地を護る騎士が居なくては、国は護れませんもの」
「それはそうだが」
「帝国側と大国側の辺境は少なくともお姉様とお兄様が居る以上、争う事はありませんし、二国とは同盟国として条約を結びましたもの。辺境で争いが絶えないのはこちらの辺境だけです。その辺境を護ってるジル様はとても素敵です」
「そうか」
ジル様と話をしていたら、もうすぐ街に着くそうです。
「シア、街の中では、俺とキースの側を離れずに居て欲しい」
「分かりました」
馬車が次第にゆっくりになり、止まりました。扉をキース様が開けてくれ、ジル様が先に降り、ジル様の手を借りて馬車から下りた。
何か、ドキドキ?ワクワク?しているわ。
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