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しおりを挟む昼食後、ジルベーク様からお茶の誘いがあり、殺風景の庭のベンチで向かい合い座った。
ケイトがお茶とお菓子の用意をして、邸の中に帰り、ジルベーク様と二人きり。
「……………」
「……………」
お互い無言で…何ともいたたまれない。さて、どうしましょう。
午前中にお願いは言ったし、その返事を貰ってもいいのかしら?
私はジルベーク様の顔をチラチラと見て、
「何だ?」
「え?」
「何か言いたい事があるのか?」
「良いのですか?」
「構わない」
「では…、先程お話した事ですけれど、その…愛し愛される関係を築いて欲しいと言う事ですが…お返事を頂いてもよろしいでしょうか」
「ぶっ!」
ジルベーク様が紅茶を吹き出してしまったわ、大丈夫かしら。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、すまない。俺は構わないが、貴女なら他に良い人が居ると思うんだが」
「ジルベーク様はこんな小娘でもよろしいのですね?綺麗でも妖艶な身体付きでもありませんのに」
「あぁ、構わない。その…可愛らしいと思う…」
「まあ!私もジルベーク様が良いです」
「そうか…。それでだな、俺は今までモテた事などなくてだな………。いや、26年間生きてきて、恋はした。だが、恋人は居なくてだな………。その…女性心とか分からないんだ…。すまない。心を読むとか言葉尻を考えるとか、そんな器用な事出来ない。だから、はっきり言って欲しい」
「分かりました。私は恋と言うのも恋人も初めてです。私も恋愛初心者です。 お互い思ってる事は言葉に致しましょう。 私も心を読むとか言葉尻を考えるとか、そんな器用な事できませんもの」
「あぁ、そうしよう。遠慮なく言ってくれ」
「はい。では早速よろしいでしょうか」
「何だ?」
「お庭が少し殺風景のように思います。このベンチの前の花壇だけでもお花を植えてもよろしいでしょうか」
「確かに殺風景だな。今迄、ベンチに座る事が無かったからな。イザークに頼んで直ぐに手配してもらう」
「ありがとうございます」
「嫌、こちらが先に気がつくべきだった」
「……………」
「……………」
お互いまた無言になってしまい、
「気の利いた会話が出来なくてつまらないだろ?」
「私も何を話して良いのか…私こそつまらないですよね、すみません」
「一つ気になったんだが、俺達は夫婦になるだろ?」
「そうですね」
「なら、もう少し気軽に話して欲しい」
「気軽にですか?」
「あぁ。メイド達にはもっと気軽な話し方ではないのか?」
「確かにそうですね」
「俺も余り変わらないが、キースとかにはもう少し砕けた話し方をする。俺も気軽に話すから貴女にも気軽に話して欲しい。夫婦になっても気が抜けない間にはなりたくないんだ。どうだろうか」
「分かりました。直ぐには無理かも知れませんがメイド達と話す時みたいにお話します。ジルベーク様も貴女は止めて下さいね」
「そうだな。では何と呼ぼう。今迄何と呼ばれていた?」
「そうですね、アリシアと普通に」
「そうか。なら、シアと呼んでも良いか?」
「シアですか。愛称ですね、嬉しいです」
「シア、俺の事もジルと呼んでくれないか」
「ジルですか?分かりました、ジル様。 なんかとても恥ずかしいです」
「あぁ、俺も恥ずかしい。 シア」
「ジル様。 とても仲が良くなった様に思えます」
二人で顔を真っ赤にして俯いてしまいました。
「シア、明日馬に乗って少し邸の外へ行こうか」
「楽しみです。ワンピースでは馬には乗れませんよね?」
「乗れなくはないが、初めて乗るのならズボンの方が良いと思うが、ズボンはないのか?」
「お父様に馬を貰ったのに、ズボンは作っていません」
「そうか。なら明日は街に出てズボンを買いに行こうか」
「よろしいのですか?楽しみです。勿論ジル様は一緒に馬車に乗って頂けますよね?」
「シアが嫌でなければ」
「ジル様と一緒に乗りたいです」
「キースに馬車の用意を頼んでおくよ」
「楽しみです。ジル様、俗に言うデートと言う物ですよね?明日が楽しみです」
「デ、デート?そうだな、デートだな…」
ジル様に街には何屋があって、何が売っているのか聞いていたら、本当に明日が待ち遠しくなりました。デートというのも初めてだし、今日の夜は寝れるかしら…。
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