辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
10 / 60

10.

しおりを挟む

昼食後、ジルベーク様からお茶の誘いがあり、殺風景の庭のベンチで向かい合い座った。

ケイトがお茶とお菓子の用意をして、邸の中に帰り、ジルベーク様と二人きり。


「……………」

「……………」


お互い無言で…何ともいたたまれない。さて、どうしましょう。

午前中にお願いは言ったし、その返事を貰ってもいいのかしら?

私はジルベーク様の顔をチラチラと見て、


「何だ?」

「え?」

「何か言いたい事があるのか?」

「良いのですか?」

「構わない」

「では…、先程お話した事ですけれど、その…愛し愛される関係を築いて欲しいと言う事ですが…お返事を頂いてもよろしいでしょうか」

「ぶっ!」


ジルベーク様が紅茶を吹き出してしまったわ、大丈夫かしら。


「大丈夫ですか?」

「あぁ、すまない。俺は構わないが、貴女なら他に良い人が居ると思うんだが」

「ジルベーク様はこんな小娘でもよろしいのですね?綺麗でも妖艶な身体付きでもありませんのに」

「あぁ、構わない。その…可愛らしいと思う…」

「まあ!私もジルベーク様が良いです」

「そうか…。それでだな、俺は今までモテた事などなくてだな………。いや、26年間生きてきて、恋はした。だが、恋人は居なくてだな………。その…女性心とか分からないんだ…。すまない。心を読むとか言葉尻を考えるとか、そんな器用な事出来ない。だから、はっきり言って欲しい」

「分かりました。私は恋と言うのも恋人も初めてです。私も恋愛初心者です。 お互い思ってる事は言葉に致しましょう。 私も心を読むとか言葉尻を考えるとか、そんな器用な事できませんもの」

「あぁ、そうしよう。遠慮なく言ってくれ」

「はい。では早速よろしいでしょうか」

「何だ?」

「お庭が少し殺風景のように思います。このベンチの前の花壇だけでもお花を植えてもよろしいでしょうか」

「確かに殺風景だな。今迄、ベンチに座る事が無かったからな。イザークに頼んで直ぐに手配してもらう」

「ありがとうございます」

「嫌、こちらが先に気がつくべきだった」

「……………」

「……………」


お互いまた無言になってしまい、


「気の利いた会話が出来なくてつまらないだろ?」

「私も何を話して良いのか…私こそつまらないですよね、すみません」

「一つ気になったんだが、俺達は夫婦になるだろ?」

「そうですね」

「なら、もう少し気軽に話して欲しい」

「気軽にですか?」

「あぁ。メイド達にはもっと気軽な話し方ではないのか?」

「確かにそうですね」

「俺も余り変わらないが、キースとかにはもう少し砕けた話し方をする。俺も気軽に話すから貴女にも気軽に話して欲しい。夫婦になっても気が抜けない間にはなりたくないんだ。どうだろうか」

「分かりました。直ぐには無理かも知れませんがメイド達と話す時みたいにお話します。ジルベーク様も貴女は止めて下さいね」

「そうだな。では何と呼ぼう。今迄何と呼ばれていた?」

「そうですね、アリシアと普通に」

「そうか。なら、シアと呼んでも良いか?」

「シアですか。愛称ですね、嬉しいです」

「シア、俺の事もジルと呼んでくれないか」

「ジルですか?分かりました、ジル様。 なんかとても恥ずかしいです」

「あぁ、俺も恥ずかしい。 シア」

「ジル様。 とても仲が良くなった様に思えます」


二人で顔を真っ赤にして俯いてしまいました。


「シア、明日馬に乗って少し邸の外へ行こうか」

「楽しみです。ワンピースでは馬には乗れませんよね?」

「乗れなくはないが、初めて乗るのならズボンの方が良いと思うが、ズボンはないのか?」

「お父様に馬を貰ったのに、ズボンは作っていません」

「そうか。なら明日は街に出てズボンを買いに行こうか」

「よろしいのですか?楽しみです。勿論ジル様は一緒に馬車に乗って頂けますよね?」

「シアが嫌でなければ」

「ジル様と一緒に乗りたいです」

「キースに馬車の用意を頼んでおくよ」

「楽しみです。ジル様、俗に言うデートと言う物ですよね?明日が楽しみです」

「デ、デート?そうだな、デートだな…」


ジル様に街には何屋があって、何が売っているのか聞いていたら、本当に明日が待ち遠しくなりました。デートというのも初めてだし、今日の夜は寝れるかしら…。




しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。 だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。 だって婚約者は私なのだから。 いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣) 小説家になろうさんにも時差投稿します。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている

恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。

婚約者様は大変お素敵でございます

ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。 あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。 それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた── 設定はゆるゆるご都合主義です。

処理中です...