辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

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ジルベーク様を怒らせてしまったかしら。ここからが本題だったのに、どうしましょう。


「あの……、まだ大事なお願いがありまして…。よろしいでしょうか」

「何だ」

「はい。この婚姻は国王陛下から無理矢理決められた婚姻だと思います。ジルベーク様の心を無視し、ジルベーク様ご自身も思う所はあるかと思います」

「……………」

「ジルベーク様は恋人はいらっしゃいますか?」

「もし居たら婚姻の了承などしない」

「では、好意を寄せた方はいらっしゃいますか?」

「好意を持っている女性は居ないが、恋人と好意を寄せた人との区別が俺には分からん」

「恋人はお互い思いを伝え合い愛し合う者同士です。好意を寄せるは一方的に心で思っているだけです」

「そうか…。で、何が言いたい」

「はい。私達の婚姻は政略結婚です。そこに相手の好み等関係ありません。ジルベーク様にとって、私のような小娘など興味も無いかも知れませんが、恋人も好意を寄せている女性も居ないのであれば、私と愛し愛される関係を育てては頂けませんか?」

「は?」

「ですから、私と愛し愛される関係を築いて頂きたいのです」

「はぁ………」

「私は例え政略結婚だったとしても、愛し愛される関係は築く事が出来ると思っていますし、私も馬鹿王子ではありませんが、真実の愛と言う物を味わいたいと思います。私はお姉様みたいに綺麗ではありませんし、発展途上とは言え、娼館のお姉様方みたいに妖艶な身体付きではありませんが…」

「あ、あ、貴女は、何を考えている!」

「あら、大事な事ではありませんか。結婚すると言う事は閨を共にしますでしょ? この辺境の土地を護る後継者も数人産まなくてはいけませんでしょ?」

「それはそうだが………」

「だからこそ、愛し愛され、仲が良い夫婦になりたいと思います。ジルベーク様が私を生理的に無理だとおっしゃるのなら、隣国の問題が片付いた後に離縁して頂いても結構です」

「俺は無理ではないが、貴女の方が無理だろ?俺は歳もかなり上だし、体格も大柄だし、傷だらけだ。それに、顔も恐いだろ?」

「あら、ジルベーク様の顔は恐くありません。好みか好みじゃないかと言われたら、好みです。それに体格も日々の鍛錬の結果ですよね、素敵だと思います。歳もたった10歳違うだけです。何も問題ありません」

「そうか…なら良いが…、これからお互いを知る時間を作ろう」

「えぇ、勿論です」


話が終わり私は執務室を後にした。






私が出て行った執務室で、


「どう思う?」

「王女?16歳なんてまだ護られて当たり前の歳なのに、死ぬ覚悟をしてるってやるせないよな。それも幼い頃に覚悟を決めたってな…。ウチの見習い達だって戦で死ぬ覚悟なんて出来てないぞ?

確かに隣国へ嫁いだ後、戦になったら真っ先に殺されるだろうけど、それだって国と国の為の婚姻だろ?犠牲になるのはいつも、か弱い者なんだな」

「それもだが、そっちじゃなくて…」

「あぁ、ジルはそっちが気になったんだ~へぇ~」

「気になって悪いか!」

「い~や~悪くないよ~。良いじゃん。愛し愛される関係。王女はジルの事好ましいって思ってる訳だしさ~。ジルは王女の事、好ましいと思えないの?王女可愛いじゃん」

「いや、俺も好ま、しい、と思うし、可愛いと、思う。だが、俺じゃなくてももっと選べただろうに。それに婚姻を結ばなくても護ったさ」

「国王は今だけの話じゃないからお前に預けたんだろ?この先だって、この土地も王女も狙われる可能性はある。第一王女は帝国の皇太子が護ってるし、帝国に刃向かう馬鹿は居ないさ!

そうなると第二王女の方が狙いやすい。あっちは海が欲しいんだからな。こっちに攻め入るより兄弟で争って欲しいよ。弟から奪えば海は手に入るんだ」

「確かにな。王弟は民から絶大な支持がある。貴族も王弟に国王をって言ってるぐらいだ。弟の領地に攻め入るよりこちらを攻め入った方が己の傷が付かないんだろうな」

「そうだろうね。こっちからしたらはた迷惑な話だけどな。お前は嫁を命懸けて護ればいいさ。俺達に前線は任せとけ。それに愛し合えばお前は無敵だよ。愛する者を死なせたくないだろ?」

「俺に嫁いで来たんだ。例えそこに愛情がなくても命懸けで護る」

「お前はそういう奴だよ。だけどな、王女はお前と愛し合いたいと言っているんだ。お前も努力しろよな」

「努力か…、 何をすれば良い?」

「あ~~~もう! その位自分で考えろよ!毎日花でも贈れば良いだろ」


キースは恋に奥手の友に溜息をついた。




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