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しおりを挟む疲れが溜まっていたみたいで、ぐっすりと寝てしまったわ。扉をノックする音で目が覚め、慌てて起き、ケイトが部屋の中に入ってきた。
「ケイト、ごめんなさい。寝坊してしまったわ」
「アリシアお嬢様、馴れない馬車の旅だったのです。疲れも出たのでしょう。もう少しお休み頂いてもよろしいのですよ」
「大丈夫よ。ジルベーク様はもうお出掛けになったのかしら」
「ジルベーク様は自室にいらっしゃいます。アリシアお嬢様の準備が出来次第、こちらにお迎えにみえるそうです。今日は使用人との顔合わせと邸の案内をして下さるそうですよ」
「ジルベーク様をお待たせしているの?慌てて着替えるわ」
「アリシアお嬢様、ゆっくりで大丈夫ですよ。ジルベーク様は待たせておけば良いのです」
「それは駄目よ。私一人で着替えれるから大丈夫よ」
「一人でできるのですか?」
「ええ。メイドを連れて来れなかったから、練習してきたの」
「そうでしたか」
「それに、簡単に脱ぎ着ができるワンピースだもの。ケイトに迷惑かけない様にするから」
「アリシアお嬢様、そんな悲しい事言わないで下さい。私はアリシアお嬢様のお世話ができると楽しみにしていたのですから」
「そう?なら、お願いしようかしら」
「はい。遠慮せず何でもおっしゃって下さい」
「なら、ワンピースと髪留めを選んでもらおうかしら」
「はい。私が選んでいる間、顔を洗って待っていて下さい」
「ありがとう」
私は顔を洗い、夜着を脱いでケイトが選んでくれたワンピースを着て、髪は簡単に髪留めで止めた。それからケイトがジルベーク様を呼びに行って、
トントン
私は扉を開け、
「ジルベーク様おはようございます。お待たせしてすみませんでした」
「いや、朝食を一緒にとろう」
「はい」
私はジルベーク様の後からついて行き食堂へ向かった。食堂には朝食が準備されていて、ジルベーク様の前の席に座り、朝食を食べ始めた。ジルベーク様は大量にあった料理を直ぐに食べ終わり、私が食べ終わるのを待っていたから、私は慌てて食べた。
「そんなに慌てて食べなくても良い」
「はい」
「ゆっくり食べてくれて良いから、食べながら聞いて欲しい」
「はい」
「昨日はすまなかった。貴女がこちらへ来た時に留守にしてしまった。不安にさせた」
「いえ、大丈夫です」
「そうか。今日は使用人を紹介する。ただ、邸の使用人は最低限しか居ない。ここ辺境は絶えず争いが絶えない。小競り合いで今の所大きな戦は無いが、俺も騎士達も強いが使用人を護りながら戦を戦う事はできない。戦いが始まれば俺は前線へ行く事になるからな。邸が手薄になる。その為、自分の事は自分で出来るだけやって欲しい」
「はい、心得ています。ケイトに少し手は借りますが、自分の事は自分で出来ますので大丈夫です」
「王女殿下として暮らしていた貴女には酷な話だが…」
「ジルベーク様に嫁ぐのですから、元王女です。王女と臣下では、立場も暮らしも違うのは当たり前です」
「そうか」
私はできるだけ慌てて食べた。私が食べたのを見計らい、使用人の紹介をしてもらった。本当に少ない使用人しか居なかったわ。
執事のイザーク、メイドのケイト、イザークとケイトは夫婦で、10歳と12歳の息子さんがいて、今は王都近くの親戚の家で暮らしているそう。王都にある、執事育成の学校に入る為の勉強をそちらでしているそうなの。辺境の地では家庭教師も見つけられないし、呼ぶ事も出来ないからだとか…。いずれはジルベーク様と私の子の執事になる予定なんですって。
料理長のベン。そして見習いのベンの息子のバン。ベンの奥様は騎士隊の方でベンの弟家族と一緒に働いているみたい。バンは基本こちらの邸でベンに料理を習っているのだけど、夕食の時は騎士隊の食堂へ借り出されている。邸と騎士隊の食材の下準備はバンとベンの弟の息子さん二人と騎士隊の見習い騎士としているらしい。騎士隊だけでも見習い騎士合わせて300人近くいるらしい。国境に約150人、ここに約150人と毎日とても大変なんだとか…。
約150人分の料理なんて想像が出来ないわ。私がここに来る前はジルベーク様も騎士達と一緒に食事をしていたらしく、ベンも基本は騎士隊の方で料理を作っていたって。騎士達の食事と邸の食事は内容が違う為「私も騎士達と同じ料理で大丈夫だから無理しないで欲しい」と伝えたら「前辺境伯様が生きていらした時は邸で召しあがっていたから無理はしていない」と。後「ようやく自慢の腕が振るえる事を楽しみにしていた」と。確かにとても美味しくて王城で食べていた食事にも劣らなくて驚いた程だったわ。
邸に仕える使用人は四人だけだった。馬車はあるけど御者は騎士隊の騎士がやり、庭はあるけど庭師は領地からたまに来て貰い、木の剪定だけしてもらうだけ。だから、少し?だいぶ?殺風景の庭だったのね。
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