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しおりを挟む辺境伯へ嫁ぐ事が決まり、半年間の婚約期間の時から辺境へ行く事になったの。婚約期間が終わり次第婚姻をする為、もうこの王城に帰ってくる事はないわ。
年一回の建国記念のパーティーに出席するぐらいだけど。それも毎年辺境伯様は欠席してるから、私も欠席すると思う。
三ヶ月の準備期間中、手軽に一人で着れるワンピースを作り、帽子や、ヒールの低い靴、ヒールの無い靴を作り、一人で髪を纏めれる様に簡単な髪留めを作り、侍女やメイドにアレンジ方法まで手解きを受けたわ。
後は、一人で湯浴みが出来る様に練習したし、湯浴み後の体に塗るクリームやら髪の毛のオイルやらケアの仕方、マッサージまで何とか一人で出来る様になったの。
隣国ではなく、同じ王国の元へ嫁ぐなら、侍女かメイドを本来なら連れて行く事も可能だけど、王女だし? でも、辺境伯様からの手紙で、出来れば連れて来て欲しくないと書かれていたの。
私が嫁ぐ辺境の地は、嫁ぐ予定だった馬鹿元王子の隣国と接している。そして、馬鹿元王子のせいで隣国は荒れているらしい。婚約を打診した側なのに、馬鹿元王子のお陰で、婚約は無くなり、我が国を通って大国へ、又、海を渡って他国へ、という手段が取れなくなったから。
この国は、海と面しており、他国への貿易が盛んなの。
隣国も海に面してはいるけど、海側は王弟殿下の領地で、国王と王弟は兄弟仲が悪い。
王弟殿下は海をこよなく愛し、大型の商船の出入りを嫌った為、他国との貿易が出来ない。
馬鹿元王子と私の婚姻で国の通行料、貿易の手数料が格段と安くなるはずだった。
それを、あの馬鹿元王子のせいで、これからも高額な通行料、手数料を払うしかなくなった隣国が戦争を起こす可能性がある為に、私一人ならまだしも、足手まといになる侍女やメイドは遠慮して欲しいと。
私も今まで世話をしてくれた侍女やメイドが戦争に巻き込まれるのは嫌だし、私は王女だもの。最悪、捕虜として使えるだろうし、殺される事もあるかもしれないけど交渉には使える。そんな事は幼い頃からとうに覚悟は出来てるわ。
お母様が立派な嫁入り道具も揃えてくれて、数枚のドレスをお兄様がプレゼントしてくれた。帝国に嫁いだお姉様から、唯一帝国だけで採掘されるダイヤモンドのネックレスとイヤリングが送られてきた。「婚姻式には行けないけど、幸せになれる事を祈ってるわ」って手紙付きで。
お父様からは…馬を貰ったわ。私、馬乗れないんだけど、どうしたらいいのかしら? 一応連れて行くけど…。
あっという間に準備期間の三ヶ月が経ち、遂に明日辺境の地へ向かうわ。 婚姻式にはお兄様、王弟の叔父様夫妻が参加してくれるそうよ。
王城での最後の晩餐、お母様とお兄様、お義姉様と話しながら和やかに食事を楽しんでたら、お父様が突然入って来て、席に座ったの。お父様の前にも食事が用意され、お母様が、
「今日はこの子の好きな料理ばかり用意したの。貴方も好きな料理でしょ?」
「ああ」
「明日嫁ぐ娘に何か一言ないの?」
「別にない」
「そう?本当に素直じゃないんだから」
お父様は食事を済ませ部屋を出て行ったわ。
「お父様って可愛い人よね~」
「お母様?お父様は可愛くないです」
「あら。お父様はね、本当は嫁に出したくないのよ。出来ればずっと娘は手元に置いておきたいの。だから幸せになれって言えないの。エミリアの時もそうだったわ。
国と民を思えばこその犠牲を貴女に、自分の娘にしなければいけない事を誰よりも心を痛めてるのはお父様よ?」
「そうでしょうか?」
「どっかの馬鹿王子に嫁がせなくて良かったと一番喜んでるのもお父様よ」
「ですが、私は王都と辺境の地を強固にする為の婚姻と聞きました」
「あら、誰に聞いたの?」
「宰相からですが」
「宰相はそう思ったのね。でもお父様の考えは違うわよ。辺境伯へ嫁がせるのは、その方法しか無かったからなの。隣国は未だに貴女を諦めてないのよ。あちらの事情も分かるけど、貴女を護る為には辺境伯へ嫁がせるのが安全だったの」
「どういう意味ですか?」
「辺境伯はこの国で一番強い方だから、貴女を護るには適任だったの。 貴女だけ政略結婚をさせる事になってごめんなさいね」
「え?」
「あら、お父様と私は恋愛結婚よ。エミリアもロベルドも恋愛結婚よ」
「ええ~!嘘ですよね?」
「嘘じゃないわよ。ねぇ、ロベルド」
「ああ」
お兄様とお義姉様二人共、顔が真っ赤になっていたわ。いつも仲が良いお兄様夫妻を見ていて、政略結婚でも仲良くなれるんだ!と思っていたら、恋愛結婚だったとは…。
ちなみに、エミリアはお姉様、ロベルドはお兄様よ。
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