私と貴方の宿命

アズやっこ

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「嫌ーーーーー!ーーーーー!」


エティーシアの声が聞こえた気がして部屋へ急いで向かう。


バタン

「何の騒ぎだ!」


目の前にはガタガタと震えるお前の姿。

そして、

……………………


「テシー!急いで医師を呼べ!早くしろ!」


テシーが血だらけで横たわっていた。


「誰が、誰が!テシーにこのようなまねを!!」


私は怒気を纏った。

血の付いた剣を持つ騎士を睨む。


「お前!!今すぐ殺してやる!!」

「殿下、お待ち下さいませ。わたくしの護衛ですわ」

「だから何だと言うんだ!」


あれだけ部屋には入るなと、口出しするなと言ってあったのに、勝手に部屋に入り、エティーシアを傷つけ、

テシーを、

テシーを、

殺した。


「早く出て行け!お前が婚約者を辞めようが止めはしない、勝手にしろ。だがな、まだ婚約者でいると言うのなら今後この女に近寄るな!」


婚約者と騎士、メイドが出て行き、


「テシー、すまない。テシー………」


私はテシーを抱きかかえた。


「テシー……………」


幼馴染みであり、妹のように、友のように、いつも私を側で支えてくれていた。

エティーシアの事もずっと気にかけてくれていて、エティーシアが過ごしやすいように、私がどれだけ乱暴に扱ってもテシーだけは優しくエティーシアに接してくれていた。

エティーシアの笑い声を聞けたのもテシーのおかげだ。

エティーシアと一緒に食事を食べるようになれたのもテシーのおかげだ。

そもそも私自身の気持ちを気づかせてくれたのもテシーだ。


テシー

テシー

テシーがいて初めて繋がるものしかここにはない

テシーがいなければ

誰が私を止める

誰が私を叱る

テシーがいなければ

誰がエティーシアの心を護る

誰がエティーシアの気持ちに寄り添う

テシー

テシー

すまない

すまない

すまない………




テシーの死はエティーシアに暗い影を落とした。


毎日贈る花を飾ってくれなくなった。

誰かと会話をする話し声を聞かなくなった。

誰かと会話し笑った声を聞かなくなった。

ベッドの脇にある花瓶にはテシーが活けた花が、もう枯れた花がいつまでも飾ってある。それもいつしかゴミ箱に捨てられていた。


そうか

私は

お前の

大切なものを

全て奪い

殺す


両親を

兄上様を

お兄様を

テシーを

お前から奪い

殺した


そうか

私は

お前の

憎むべき相手

どこまでいっても

優しく抱いても

一緒に食事をしても

会話をしても

私は

お前の

憎むべき相手…


すまない、

すまない、

すまない……





いつものように朝食を一緒にとり私は政務をする為に部屋を出る。


ガタン


大きな音が部屋からして急いで部屋の中に入る。

喉を抑え倒れているエティーシアに駆け寄り、エティーシアを胸に抱く。


「おい!どうした!」


エティーシアはずっと、


「ゔぅ…ゔぅ……ゔぅぅ…………」


喉を押さえ唸っている。

何かが詰まった感じではない。なら答えは一つしかない。


毒だ!


誰が!

誰が!

誰が毒を!


「どうしてだ!なぜだ!誰が毒を盛った!お願いだ死なないでくれ!お願いだ目を開けてくれ!」

「シア!しっかりしろ!」



嫌だ!

嫌だ!

嫌だ!!

エティーシアを

失えば

私は

俺は……


「愛してる」


言葉にはしないと誓った。

それでも、

言葉にしなければ

今、言葉にしなければ

もう一生

伝える事はできないと


最後は私の気持ちを

エティーシアの気持ちではなく

私の気持ちを

私は

取った。



「愛してる。俺は愛してしまったんだ。俺はシアを愛してしまったんだ。

なぁ、俺を残して死ぬな。俺を一人にしないでくれ。お前は俺のだろ?

なぁ、なぁ、シア、俺を残して死ぬな、シア、死ぬな…、お前が死んだら俺はどうすればいい……」


私の頬を涙が伝う。


「シア、来世も必ずお前を愛す。だから来世はお前も俺を愛してくれ。シア愛してる、シア愛してる、シア…シア………」


「……ルー………………………………」


エティーシアの消えそうなか細い声が聞こえた。


ルー

ルーベンのルーなのか?

私の名を

呼んでくれたのか?

なぁ

なぁ

エティーシア

答えてくれ

なぁ………




「毒を盛ったのは誰だ!シアに毒を盛った奴を今直ぐ殺せ!」


私は胸に抱くエティーシアを見つめ、頭を、頬を、優しく撫でる。


エティーシアの手がダランと落ちた。


「シア、シア、シアーーーーー」


シア愛してる。

来世で必ず、

来世では必ず、

憎むべき相手として出会うのではなく愛する人として出会おう。

そして、堂々とお前を愛したい。

神様が本当にいるのなら、

お願いだ、

お願いだ、

来世でもエティーシアと出会わせてくれ。

来世でもエティーシアを愛させてくれ。

お願いだ……



私は死んでもお前を離す事は出来ない

お前を一人にはさせない

私達はいつも一緒だ

お前だけを

お前だけを一人にはさせない



腰にある剣を鞘から抜き、


「シア、待っていろ。シアだけに辛い思いはさせない」


シア愛してる


心臓を一突きした。





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