48 / 61
番外編 ⑨
しおりを挟む
5歳になったフィルは産婆さんが言ったようにとてもお喋りになった。
「母様、僕、ようやく父様に剣を教えてもらったんだ」
「そう、良かったわね」
「僕が騎士になったら母様とフェスをまもるんだ」
「フィルも頼もしくなったわね」
「僕、父様とはライバルなんだ。父様ね、母様とフェスをまもるのは俺だって言うんだ。だから僕は父様に負けない騎士にならないといけないんだ。それに赤ちゃんの兄様になるし、もっともっと強くなるから見ててね?」
フィルは私のお腹を撫で、
「母様、赤ちゃんは男の子かな?女の子かな?僕ね男の子がいい。だってフェスだと剣のけいこも出来ないし、木登りだって出来ないもん。この前なんてフェスに木登りさせようとしたら父様にものすごくおこられたんだよ?女の子に何をさせるんだって。だから今度は男の子がいい。母様、男の子うんでね?」
「ふふっ、それは分からないわ。産まれてからのお楽しみよ? 父様が怒ったのはまだフェスが木登りするには小さいからよ?それにフェスは女の子だから木登りはしないと思うわ」
私はフィルの頭を撫で、
「母様、フィルが騎士になるの楽しみにしてるわね?母様とフェスを護ってくれるのでしょ?」
「うん。でも爺ちゃまの跡も継がないと。爺ちゃまと約束したんだ」
「あらあらフィルは大変ね?」
フィルは私のお腹に顔を近づけ赤ちゃんに話しかける。
「兄様だよ、聞こえる?兄様がまもってあげるからね、心配しないでね」
「おい!フィル!」
「父様?」
「稽古をさぼって母様と何をしてるんだ」
「母様とお話。それに今はきゅうけいって父様が言ったんだよ?」
「さあ休憩は終わりだ。素振りをやってみろ」
フィルは私の前で素振りをしている。ルトは私の横に座り、
「大丈夫か?」
「大丈夫よ」
ルトは少し目立つ様になったお腹を優しく撫でる。
「ルトは休憩の間どうしてたの?」
「フェスの寝顔を」
「また?」
「どれだけ見ても可愛い娘なんだ、いいだろ?」
「別に良いけど、やっぱり私は娘とルトを取り合うのよね」
「俺の愛しい姫はリーだけだ」
「はいはい、フィルが待ってるわよ?」
「リー」
「フィルもよく喋るようになったわ」
「だから言っただろ?いつか話すようになるって」
「そうだけど」
「子供の成長って早いわよね」
「父様!」
「あぁ、悪い」
ルトはフィルの元へ行き、私はフェスの様子を見に行こうと立ち上がった。
「リーどこに行く」
「フェスの様子を見てくるわ」
「危ないから駄目だ。少し待っててくれ」
「大丈夫よ。ルトはフィルを見てあげてね」
「リー!」
私はルトを無視し歩き出した。先日一人で庭の散歩中、小石に躓いて転けてすり傷を作ってから一人の散歩は禁止された。
その日、ルトはお父様と出掛けてて、フェスは昼寝中でお母様が見ててくれ、フィルはレイに剣を習っていた。ルトが最近忙しくてなかなかフィルの剣の稽古を見る事が出来ず、代わりにレイが見てくれる事になったからだ。
勝手知ったる我が家の庭だし、フィルの時もフェスの時も庭の散歩は毎日欠かさずしていた。フィルの時はルトやレイと。フェスの時は歩くのが楽しいフィルと手を繋いで。後ろにルトかレイはいたけど…。
その日は本当にたまたま一人で散歩していて、伸びをしながら歩いたから小石に躓いた。すり傷っていっても手のひらにうっすらと血が滲む程度。
私は手の傷よりもお腹の赤ちゃんが心配で医師を呼んだんだけど…。それがいけなかった。医師からお父様に伝わり、お父様からルトに…。帰って来たルトに一人で歩くのは禁止と言われた。
フェスの部屋に入り、寝ているフェスを見て、
「レイありがとう。代わるわ」
「お嬢様、もしかして一人で庭からお戻りになられたのですか?」
「そうよ」
「ジークルト様は何をしているのですか。またお嬢様が転けたらどうするつもりなのでしょう」
「ほら、ルトはフィルに剣の稽古つけてる所だから」
「それでも」
「フィルは父様に教えて貰えるのが嬉しいみたいだし」
「そうですけど」
「私なら大丈夫よ?ゆっくり歩いて来たし、ね?」
「分かりました」
「レイも休憩して?フェスの夜泣きは落ち着いたけど今でもフィルやフェスと一緒に寝てるでしょ?なかなかゆっくり眠れてないんじゃないの?」
「いえ、お二人共朝までぐっすりお眠りですから」
「それでもこの子が産まれたらまた子守りよ?もうそろそろフィルやフェスにもメイドを付けないといけないわね。お父様に相談してみるわ」
「お嬢様!」
「何?」
「私の楽しみを奪わないで下さい。フィル坊っちゃんとフェス嬢様と過ごすのが私の幸せなのです。後、お嬢様のお世話も誰にも譲りません」
「レイ、貴女は一人しかいないのよ? 何度も言ってるけどフィルやフェスの世話だけでも大変なの。だから私にはシアがいるから大丈夫」
「シアには譲りませんから。お嬢様を世話し護るのは私の生き甲斐です」
「分かったわ」
シアも私付きのメイドでレイはシアの教育係だった。だから私付きになったのだけど…。レイはシアでさえ私を触らせようとしない。着替えるのもお化粧も髪を結う事も。このままではレイが倒れてしまうわ。
「母様、僕、ようやく父様に剣を教えてもらったんだ」
「そう、良かったわね」
「僕が騎士になったら母様とフェスをまもるんだ」
「フィルも頼もしくなったわね」
「僕、父様とはライバルなんだ。父様ね、母様とフェスをまもるのは俺だって言うんだ。だから僕は父様に負けない騎士にならないといけないんだ。それに赤ちゃんの兄様になるし、もっともっと強くなるから見ててね?」
フィルは私のお腹を撫で、
「母様、赤ちゃんは男の子かな?女の子かな?僕ね男の子がいい。だってフェスだと剣のけいこも出来ないし、木登りだって出来ないもん。この前なんてフェスに木登りさせようとしたら父様にものすごくおこられたんだよ?女の子に何をさせるんだって。だから今度は男の子がいい。母様、男の子うんでね?」
「ふふっ、それは分からないわ。産まれてからのお楽しみよ? 父様が怒ったのはまだフェスが木登りするには小さいからよ?それにフェスは女の子だから木登りはしないと思うわ」
私はフィルの頭を撫で、
「母様、フィルが騎士になるの楽しみにしてるわね?母様とフェスを護ってくれるのでしょ?」
「うん。でも爺ちゃまの跡も継がないと。爺ちゃまと約束したんだ」
「あらあらフィルは大変ね?」
フィルは私のお腹に顔を近づけ赤ちゃんに話しかける。
「兄様だよ、聞こえる?兄様がまもってあげるからね、心配しないでね」
「おい!フィル!」
「父様?」
「稽古をさぼって母様と何をしてるんだ」
「母様とお話。それに今はきゅうけいって父様が言ったんだよ?」
「さあ休憩は終わりだ。素振りをやってみろ」
フィルは私の前で素振りをしている。ルトは私の横に座り、
「大丈夫か?」
「大丈夫よ」
ルトは少し目立つ様になったお腹を優しく撫でる。
「ルトは休憩の間どうしてたの?」
「フェスの寝顔を」
「また?」
「どれだけ見ても可愛い娘なんだ、いいだろ?」
「別に良いけど、やっぱり私は娘とルトを取り合うのよね」
「俺の愛しい姫はリーだけだ」
「はいはい、フィルが待ってるわよ?」
「リー」
「フィルもよく喋るようになったわ」
「だから言っただろ?いつか話すようになるって」
「そうだけど」
「子供の成長って早いわよね」
「父様!」
「あぁ、悪い」
ルトはフィルの元へ行き、私はフェスの様子を見に行こうと立ち上がった。
「リーどこに行く」
「フェスの様子を見てくるわ」
「危ないから駄目だ。少し待っててくれ」
「大丈夫よ。ルトはフィルを見てあげてね」
「リー!」
私はルトを無視し歩き出した。先日一人で庭の散歩中、小石に躓いて転けてすり傷を作ってから一人の散歩は禁止された。
その日、ルトはお父様と出掛けてて、フェスは昼寝中でお母様が見ててくれ、フィルはレイに剣を習っていた。ルトが最近忙しくてなかなかフィルの剣の稽古を見る事が出来ず、代わりにレイが見てくれる事になったからだ。
勝手知ったる我が家の庭だし、フィルの時もフェスの時も庭の散歩は毎日欠かさずしていた。フィルの時はルトやレイと。フェスの時は歩くのが楽しいフィルと手を繋いで。後ろにルトかレイはいたけど…。
その日は本当にたまたま一人で散歩していて、伸びをしながら歩いたから小石に躓いた。すり傷っていっても手のひらにうっすらと血が滲む程度。
私は手の傷よりもお腹の赤ちゃんが心配で医師を呼んだんだけど…。それがいけなかった。医師からお父様に伝わり、お父様からルトに…。帰って来たルトに一人で歩くのは禁止と言われた。
フェスの部屋に入り、寝ているフェスを見て、
「レイありがとう。代わるわ」
「お嬢様、もしかして一人で庭からお戻りになられたのですか?」
「そうよ」
「ジークルト様は何をしているのですか。またお嬢様が転けたらどうするつもりなのでしょう」
「ほら、ルトはフィルに剣の稽古つけてる所だから」
「それでも」
「フィルは父様に教えて貰えるのが嬉しいみたいだし」
「そうですけど」
「私なら大丈夫よ?ゆっくり歩いて来たし、ね?」
「分かりました」
「レイも休憩して?フェスの夜泣きは落ち着いたけど今でもフィルやフェスと一緒に寝てるでしょ?なかなかゆっくり眠れてないんじゃないの?」
「いえ、お二人共朝までぐっすりお眠りですから」
「それでもこの子が産まれたらまた子守りよ?もうそろそろフィルやフェスにもメイドを付けないといけないわね。お父様に相談してみるわ」
「お嬢様!」
「何?」
「私の楽しみを奪わないで下さい。フィル坊っちゃんとフェス嬢様と過ごすのが私の幸せなのです。後、お嬢様のお世話も誰にも譲りません」
「レイ、貴女は一人しかいないのよ? 何度も言ってるけどフィルやフェスの世話だけでも大変なの。だから私にはシアがいるから大丈夫」
「シアには譲りませんから。お嬢様を世話し護るのは私の生き甲斐です」
「分かったわ」
シアも私付きのメイドでレイはシアの教育係だった。だから私付きになったのだけど…。レイはシアでさえ私を触らせようとしない。着替えるのもお化粧も髪を結う事も。このままではレイが倒れてしまうわ。
11
お気に入りに追加
991
あなたにおすすめの小説
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました
Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。
必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。
──目を覚まして気付く。
私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰?
“私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。
こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。
だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。
彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!?
そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
あなたの一番になれないことは分かっていました
りこりー
恋愛
公爵令嬢であるヘレナは、幼馴染であり従兄妹の王太子ランベルトにずっと恋心を抱いていた。
しかし、彼女は内気であるため、自分の気持ちを伝えることはできない。
自分が妹のような存在にしか思われていないことも分かっていた。
それでも、ヘレナはランベルトの傍に居られるだけで幸せだった。この時までは――。
ある日突然、ランベルトの婚約が決まった。
それと同時に、ヘレナは第二王子であるブルーノとの婚約が決まってしまう。
ヘレナの親友であるカタリーナはずっとブルーノのことが好きだった。
※R15は一応保険です。
※一部暴力的表現があります。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる