47 / 61
番外編 ⑧
しおりを挟む
フィルが産まれて三年後、今度は女の子が産まれた。
「お…じょう…ざま……」
「レ、イ、」
「おめ…で…どう…ご…ざい…ま…ず」
「今回もレイは大泣きね」
「あだり…まえ…でず…」
私より泣いてるレイを見ると泣けないのよね…。おまけに出しきった感の方が強くて感動より疲れた…が正直な感想だわ。
「さあさあ、貴女は外で今か今かと待ってるお父さんを呼んで来て」
フィルの時は産婆さんに怒られたからルトは声がかかるまでは待ってくれてる。
「は…い…グズ」
レイが扉に手を掛けようとして瞬間、
バタン!
「リー」
ルトは一目散に私のベッドまで駆け寄った。
「貴女のお父さんは毎度せっかちね」
産婆さんの呆れた声…。
「はいお父さん、可愛い女の子ですよ」
ルトは産婆さんから受け取った。
「可愛いな」
ルトの優しい顔、優しい声、愛おしそうに見つめる瞳…。
「リーの髪色だな」
「そうね」
「瞳の色は?」
「ルトの好きな色よ」
「そうか」
少し微笑んだルト。そんなに私に似た方が良いのかしら。私はルトやフィルの髪色や瞳の色好きなのに…。この子も出来ればルトに似てほしかったな。
ルトは赤子をレイに渡し、
「リーありがとう。俺の子をもう一人産んでくれてありがとう」
「ふふっ、もう一人産んでも大丈夫よ?」
「リー」
「今度はお乳出るかしら…」
「ミルクは大量にあるから大丈夫だ。俺もミルクなら飲ませる事ができるしな」
「そうね」
「リーありがとう」
「うん」
「お疲れ様」
「うん」
「今は体調を戻す事に専念してくれ」
「でもフィルもいるし」
「フィルは皆が見てくれる」
「それもそうね。フィルの取り合いだもの」
「その分俺はリーを独り占め出来るけどな」
「今度は女の子よ?」
「ああ、ありがとうリー」
「もう名前は考えてるの?」
「アニフェスはどうだろうか」
「良いわね」
「リーありがとう、愛してる」
「ルト」
「リーには感謝してもしきれない。俺の子供を二人も産んでくれて、俺を男の子と女の子の父親にしてくれて、本当にありがとう」
「ルト」
「リー、愛してる。俺だけの愛しいお姫様」
「あら、アニフェスもお姫様よ?」
「そうか、そうだな。ならアニフェスは可愛いお姫様だな」
「ふふっ」
「リー愛してる」
「私も愛してるわルト」
ルトの唇が私の唇に重なる。
「仲がよろしいようで。これは三人目も直ぐかしらね」
産婆さんが居るのをスッカリ忘れた私達…。私は恥ずかしくて顔を手を覆った。ルトは、
「はい。その時はまたお願いします」
って、ルト…、そんな笑顔で答えないで。
「かーたま」
「フィル」
フィルが部屋の入口からこちらを見ていた。
「入ってきていいのよ?」
「いーの?」
「いらっしゃい」
パタパタとフィルが側に来た。
「かーたま、あーちゃは?」
「赤ちゃん?」
「うん。もーと」
「妹、そうね。フィルはお兄様ね?」
「フィーにーた? もーと、だーじだーじよ?」
「そうね」
フィルはルトに抱っこされ、私のベッドの上に乗せられ、
「かーたま、だーじだーじよ?」
「母様は大丈夫よ?」
「めなの。かーたまだーじだーじ」
フィルは私の頭を優しく撫でてくれてる。
「フィル愛してるわ。私の可愛い王子様」
「フィーもかーたまちゅきよ?」
フィルはルトに抱っこされ、
「フィル、母様は疲れてるからねんねの時間だ」
「ねんね?」
「そうだ。フィルは父様とねんねしような」
「とーたまとねんね?ちゅる」
「良い子だ」
ルトは私を見て、
「フィルの昼寝をさせてくる。寝かせたらまた来るがリーも休んでくれ」
「分かったわ。フィルにアニフェス見せてあげてね」
「分かった」
ルトは私に口付けして部屋を出て行った。
フィルは他の三歳児と比べ言葉が遅く、それでも最近は良く話してくれる様になった。私は悩みに悩んだけどルトは「いつか話すようになるから大丈夫だ」と言った。それでも私のせいだと思ってしまう。
「お乳が出てれば…」
私は独り言を言った。
「あら、ミルクでも問題はないわよ?」
「え?」
「お乳の出が悪くて悩んでるの?」
「お乳の出と言うよりはお乳で育てなかったから息子は他の子より言葉が遅いのかと…」
「そんな事で悩んでるの?」
「はい…」
「いい?同じ親から産まれた兄妹でも息子さんと娘さんは髪の色や瞳の色が違うでしょ? 例え同じ色だったとしても、一人一人違うのよ?全く同じ子なんていないの」
「そうですが…」
「息子さんは今言葉を覚えてる最中なの。もう少ししてみなさい、煩いと思う程話し出すわ。お乳で育てようがミルクで育てようが、子の成長はそれぞれよ」
「はい」
「きちんと意思疎通も出来てるし心配しなくても大丈夫。お乳で育てようと思い悩む方がよくないの。お母さんが悩んでると子供には伝わるわ。それよりドンと構えてなさい。大人になるまでには話せるようになるって思ってた方が心に余裕ができるわ」
「はい」
「娘さんもミルクで育ててもいいのよ?皆で育てる、それも子を育てるのに大事な事よ?息子さんはあんなに優しく育ってるじゃない」
「分かりました」
一生懸命話す息子の成長に、産まれたばかりの娘に、そして愛する旦那様の優しさに、心を寄せて私は幸せだと本当に思う。宝物が一つ増え、後どれだけ増えるか分からないけど、この幸せがこの先も続いていく事だけは確信している。
私は幸せよ
「お…じょう…ざま……」
「レ、イ、」
「おめ…で…どう…ご…ざい…ま…ず」
「今回もレイは大泣きね」
「あだり…まえ…でず…」
私より泣いてるレイを見ると泣けないのよね…。おまけに出しきった感の方が強くて感動より疲れた…が正直な感想だわ。
「さあさあ、貴女は外で今か今かと待ってるお父さんを呼んで来て」
フィルの時は産婆さんに怒られたからルトは声がかかるまでは待ってくれてる。
「は…い…グズ」
レイが扉に手を掛けようとして瞬間、
バタン!
「リー」
ルトは一目散に私のベッドまで駆け寄った。
「貴女のお父さんは毎度せっかちね」
産婆さんの呆れた声…。
「はいお父さん、可愛い女の子ですよ」
ルトは産婆さんから受け取った。
「可愛いな」
ルトの優しい顔、優しい声、愛おしそうに見つめる瞳…。
「リーの髪色だな」
「そうね」
「瞳の色は?」
「ルトの好きな色よ」
「そうか」
少し微笑んだルト。そんなに私に似た方が良いのかしら。私はルトやフィルの髪色や瞳の色好きなのに…。この子も出来ればルトに似てほしかったな。
ルトは赤子をレイに渡し、
「リーありがとう。俺の子をもう一人産んでくれてありがとう」
「ふふっ、もう一人産んでも大丈夫よ?」
「リー」
「今度はお乳出るかしら…」
「ミルクは大量にあるから大丈夫だ。俺もミルクなら飲ませる事ができるしな」
「そうね」
「リーありがとう」
「うん」
「お疲れ様」
「うん」
「今は体調を戻す事に専念してくれ」
「でもフィルもいるし」
「フィルは皆が見てくれる」
「それもそうね。フィルの取り合いだもの」
「その分俺はリーを独り占め出来るけどな」
「今度は女の子よ?」
「ああ、ありがとうリー」
「もう名前は考えてるの?」
「アニフェスはどうだろうか」
「良いわね」
「リーありがとう、愛してる」
「ルト」
「リーには感謝してもしきれない。俺の子供を二人も産んでくれて、俺を男の子と女の子の父親にしてくれて、本当にありがとう」
「ルト」
「リー、愛してる。俺だけの愛しいお姫様」
「あら、アニフェスもお姫様よ?」
「そうか、そうだな。ならアニフェスは可愛いお姫様だな」
「ふふっ」
「リー愛してる」
「私も愛してるわルト」
ルトの唇が私の唇に重なる。
「仲がよろしいようで。これは三人目も直ぐかしらね」
産婆さんが居るのをスッカリ忘れた私達…。私は恥ずかしくて顔を手を覆った。ルトは、
「はい。その時はまたお願いします」
って、ルト…、そんな笑顔で答えないで。
「かーたま」
「フィル」
フィルが部屋の入口からこちらを見ていた。
「入ってきていいのよ?」
「いーの?」
「いらっしゃい」
パタパタとフィルが側に来た。
「かーたま、あーちゃは?」
「赤ちゃん?」
「うん。もーと」
「妹、そうね。フィルはお兄様ね?」
「フィーにーた? もーと、だーじだーじよ?」
「そうね」
フィルはルトに抱っこされ、私のベッドの上に乗せられ、
「かーたま、だーじだーじよ?」
「母様は大丈夫よ?」
「めなの。かーたまだーじだーじ」
フィルは私の頭を優しく撫でてくれてる。
「フィル愛してるわ。私の可愛い王子様」
「フィーもかーたまちゅきよ?」
フィルはルトに抱っこされ、
「フィル、母様は疲れてるからねんねの時間だ」
「ねんね?」
「そうだ。フィルは父様とねんねしような」
「とーたまとねんね?ちゅる」
「良い子だ」
ルトは私を見て、
「フィルの昼寝をさせてくる。寝かせたらまた来るがリーも休んでくれ」
「分かったわ。フィルにアニフェス見せてあげてね」
「分かった」
ルトは私に口付けして部屋を出て行った。
フィルは他の三歳児と比べ言葉が遅く、それでも最近は良く話してくれる様になった。私は悩みに悩んだけどルトは「いつか話すようになるから大丈夫だ」と言った。それでも私のせいだと思ってしまう。
「お乳が出てれば…」
私は独り言を言った。
「あら、ミルクでも問題はないわよ?」
「え?」
「お乳の出が悪くて悩んでるの?」
「お乳の出と言うよりはお乳で育てなかったから息子は他の子より言葉が遅いのかと…」
「そんな事で悩んでるの?」
「はい…」
「いい?同じ親から産まれた兄妹でも息子さんと娘さんは髪の色や瞳の色が違うでしょ? 例え同じ色だったとしても、一人一人違うのよ?全く同じ子なんていないの」
「そうですが…」
「息子さんは今言葉を覚えてる最中なの。もう少ししてみなさい、煩いと思う程話し出すわ。お乳で育てようがミルクで育てようが、子の成長はそれぞれよ」
「はい」
「きちんと意思疎通も出来てるし心配しなくても大丈夫。お乳で育てようと思い悩む方がよくないの。お母さんが悩んでると子供には伝わるわ。それよりドンと構えてなさい。大人になるまでには話せるようになるって思ってた方が心に余裕ができるわ」
「はい」
「娘さんもミルクで育ててもいいのよ?皆で育てる、それも子を育てるのに大事な事よ?息子さんはあんなに優しく育ってるじゃない」
「分かりました」
一生懸命話す息子の成長に、産まれたばかりの娘に、そして愛する旦那様の優しさに、心を寄せて私は幸せだと本当に思う。宝物が一つ増え、後どれだけ増えるか分からないけど、この幸せがこの先も続いていく事だけは確信している。
私は幸せよ
21
お気に入りに追加
991
あなたにおすすめの小説
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました
Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。
必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。
──目を覚まして気付く。
私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰?
“私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。
こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。
だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。
彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!?
そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
あなたの一番になれないことは分かっていました
りこりー
恋愛
公爵令嬢であるヘレナは、幼馴染であり従兄妹の王太子ランベルトにずっと恋心を抱いていた。
しかし、彼女は内気であるため、自分の気持ちを伝えることはできない。
自分が妹のような存在にしか思われていないことも分かっていた。
それでも、ヘレナはランベルトの傍に居られるだけで幸せだった。この時までは――。
ある日突然、ランベルトの婚約が決まった。
それと同時に、ヘレナは第二王子であるブルーノとの婚約が決まってしまう。
ヘレナの親友であるカタリーナはずっとブルーノのことが好きだった。
※R15は一応保険です。
※一部暴力的表現があります。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる