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ベッドで眠るリーを見つめ、髪を撫でる。
意識を失い倒れたリーを抱きしめた。俺を思い出したのか、それともまた忘れてしまうのか、俺は倒れたリーを離す事が出来なかった。
王女が俺の初恋はリーだと言ったらしい。王女も倒れた原因が自分にもあると言い、王宮で意識が戻るまで面倒を見ると。 王宮の客室に寝かせると言われたが俺が頑なに抱いてるリーを離さなかった。
王太子も来て俺を説得したが、それでも俺はリーを離さなかった。結局俺の私室でリーを寝かせ、俺は意識が戻るまで近衛隊は休ませて貰い片時も側を離れなかった。
リーが倒れた日、医師の治療と診察の間、父上と母上、それから王女から状況を聞いた王太子と俺でフランベル伯爵家へ行き、王宮で預かる事を王太子が説明した。
「王太子殿下の説明は分かりました。王女殿下が気になさる事も理解しました。ですが、我が伯爵家にも優秀な医師はいます。早急にサリーリを引き取りに行きます。サリーリを我が家で休ませてやりたい」
「フランベル伯爵、お願いします。俺からリーをサリーリ嬢を離さないで下さい。お願いします」
「ジークルト、やめなさい。フランベル伯爵、息子が申し訳ありませんでした」
「いや。 ジークルト君、サリーリが攫われた日、君とサリーリの間に何があったか妻に聞いている。サリーリが君に初恋をした事も、君がサリーリを今でも慕っている事も知っている。 だがサリーリはあの日の記憶を封じ、それまでの記憶を封じた。 幼い頃は思い出そうとし何度も意識を失い倒れたが、何もかも忘れ今は元気に過ごしていたんだ。
王女殿下のお茶会で王宮へ行くようになってからまた意識を失い倒れるようになった。王宮と、君に会う事で無意識に記憶を思い出そうとしているのではないのか? 私は娘が可愛い。それに一人娘だ。もう娘には苦しんでほしくないんだ。私の気持ちも分かってくれないか」
「俺もリーが苦しむのは見たくありません。ですが意識を失う前、リーは俺をルトだと思い出した。あの日俺が意識を失う前にリーに言った言葉をリーが口にした。今迄もふたりしか知らない場所や話を口にした。今日も俺の髪を無意識に引っ張ったり、花壇の花を見つめる俺の顔が昔と変わらないとあの日の笑顔で返してくれた。
お願いします、フランベル伯爵、リーの意識が戻る迄の間だけで構いません。俺からリーを離さないで下さい。お願いします。もうリーと離されるのは嫌だ。お願いします、お願いします」
「ジークルト、やめなさい!」
「父上、すみません。リーの側に居たいんです。俺を思い出さないならそれで良い。それでももう離されるのは嫌だ。離れてる時に何かあったら俺はもう耐えられない。あんな思いは一度で充分だ。
フランベル伯爵、意識が戻っても俺を思い出さないのなら潔くリーを諦めます。ですから最後の一時だけ、意識を戻す迄の一時だけで構いません。俺をリーの側で護らせて下さい。リーの側に居させて下さい。リーと離さないで下さい。お願いします」
「ジークルト君の気持ちも分かるが、婚約もしてない男女が一緒に居るのは許されない。記憶が戻らなかった場合、悪く言われるのはサリーリの方だ。君の私室にいる以上、噂されて傷者になるのはサリーリなんだぞ」
ガチャ
「旦那様」
「お前は下がっていなさい」
「いえ旦那様、サリーの事はジークルト様にお任せ致しましょう」
「それは出来ない」
「旦那様ももうお分かりだと思います。リーと言う呼び名。そしてサリーの心には今でもジークルト様がいらっしゃる。心や記憶を封じても、ジークルト様とお会いすれば心は恋慕う方を探し求めたのです。 記憶も最近では少しづつ思い出し始めていました。記憶を取り戻すかそれともまた封じるかそれは分かりません。ですが、一時の間ジークルト様にお任せ致しませんか?」
「だが」
「あの時、何もかも忘れたサリーにジークルト様を頑なに会わせなかったのは旦那様です。離されたくないジークルト様のお気持ちもお分かりでしょう。それにもし噂話が出ても、ジークルト様と婚約してしまえばよろしいのよ。また新たに想いを築けば良いだけではありませんか。そうでしょ?ジークルト様」
「俺は婚約も婚姻もリー以外とするつもりは今後もありません。リーと結ばれないのなら一生独身でも構わない。リーの側にいられるのならそれだけで俺は良いのです」
「はぁ、分かった。意識が戻るまでジークルト君に預けよう。だが意識が戻り記憶を取り戻さなかった時は伯爵家で静養させる。記憶を取り戻した時は王宮の医師の指示に従おう。王太子殿下もよろしいですか」
「はい。それまで王宮で預からせて頂きます」
「フランベル伯爵、伯爵夫人、申し訳ない。息子の我儘を聞いて貰う形になってしまった」
「嫌、もしもの時は婚約して頂きます。それでもよろしいですか?」
「こちらは申し分ない話です」
「それなら問題はないでしょう」
「フランベル伯爵、夫人、ありがとうございます。リーを必ず護ります。リーの側を離れません。ありがとうございます、ありがとうございます」
伯爵家から帰って来てから俺はずっと側に寄り添った。
意識を失い倒れたリーを抱きしめた。俺を思い出したのか、それともまた忘れてしまうのか、俺は倒れたリーを離す事が出来なかった。
王女が俺の初恋はリーだと言ったらしい。王女も倒れた原因が自分にもあると言い、王宮で意識が戻るまで面倒を見ると。 王宮の客室に寝かせると言われたが俺が頑なに抱いてるリーを離さなかった。
王太子も来て俺を説得したが、それでも俺はリーを離さなかった。結局俺の私室でリーを寝かせ、俺は意識が戻るまで近衛隊は休ませて貰い片時も側を離れなかった。
リーが倒れた日、医師の治療と診察の間、父上と母上、それから王女から状況を聞いた王太子と俺でフランベル伯爵家へ行き、王宮で預かる事を王太子が説明した。
「王太子殿下の説明は分かりました。王女殿下が気になさる事も理解しました。ですが、我が伯爵家にも優秀な医師はいます。早急にサリーリを引き取りに行きます。サリーリを我が家で休ませてやりたい」
「フランベル伯爵、お願いします。俺からリーをサリーリ嬢を離さないで下さい。お願いします」
「ジークルト、やめなさい。フランベル伯爵、息子が申し訳ありませんでした」
「いや。 ジークルト君、サリーリが攫われた日、君とサリーリの間に何があったか妻に聞いている。サリーリが君に初恋をした事も、君がサリーリを今でも慕っている事も知っている。 だがサリーリはあの日の記憶を封じ、それまでの記憶を封じた。 幼い頃は思い出そうとし何度も意識を失い倒れたが、何もかも忘れ今は元気に過ごしていたんだ。
王女殿下のお茶会で王宮へ行くようになってからまた意識を失い倒れるようになった。王宮と、君に会う事で無意識に記憶を思い出そうとしているのではないのか? 私は娘が可愛い。それに一人娘だ。もう娘には苦しんでほしくないんだ。私の気持ちも分かってくれないか」
「俺もリーが苦しむのは見たくありません。ですが意識を失う前、リーは俺をルトだと思い出した。あの日俺が意識を失う前にリーに言った言葉をリーが口にした。今迄もふたりしか知らない場所や話を口にした。今日も俺の髪を無意識に引っ張ったり、花壇の花を見つめる俺の顔が昔と変わらないとあの日の笑顔で返してくれた。
お願いします、フランベル伯爵、リーの意識が戻る迄の間だけで構いません。俺からリーを離さないで下さい。お願いします。もうリーと離されるのは嫌だ。お願いします、お願いします」
「ジークルト、やめなさい!」
「父上、すみません。リーの側に居たいんです。俺を思い出さないならそれで良い。それでももう離されるのは嫌だ。離れてる時に何かあったら俺はもう耐えられない。あんな思いは一度で充分だ。
フランベル伯爵、意識が戻っても俺を思い出さないのなら潔くリーを諦めます。ですから最後の一時だけ、意識を戻す迄の一時だけで構いません。俺をリーの側で護らせて下さい。リーの側に居させて下さい。リーと離さないで下さい。お願いします」
「ジークルト君の気持ちも分かるが、婚約もしてない男女が一緒に居るのは許されない。記憶が戻らなかった場合、悪く言われるのはサリーリの方だ。君の私室にいる以上、噂されて傷者になるのはサリーリなんだぞ」
ガチャ
「旦那様」
「お前は下がっていなさい」
「いえ旦那様、サリーの事はジークルト様にお任せ致しましょう」
「それは出来ない」
「旦那様ももうお分かりだと思います。リーと言う呼び名。そしてサリーの心には今でもジークルト様がいらっしゃる。心や記憶を封じても、ジークルト様とお会いすれば心は恋慕う方を探し求めたのです。 記憶も最近では少しづつ思い出し始めていました。記憶を取り戻すかそれともまた封じるかそれは分かりません。ですが、一時の間ジークルト様にお任せ致しませんか?」
「だが」
「あの時、何もかも忘れたサリーにジークルト様を頑なに会わせなかったのは旦那様です。離されたくないジークルト様のお気持ちもお分かりでしょう。それにもし噂話が出ても、ジークルト様と婚約してしまえばよろしいのよ。また新たに想いを築けば良いだけではありませんか。そうでしょ?ジークルト様」
「俺は婚約も婚姻もリー以外とするつもりは今後もありません。リーと結ばれないのなら一生独身でも構わない。リーの側にいられるのならそれだけで俺は良いのです」
「はぁ、分かった。意識が戻るまでジークルト君に預けよう。だが意識が戻り記憶を取り戻さなかった時は伯爵家で静養させる。記憶を取り戻した時は王宮の医師の指示に従おう。王太子殿下もよろしいですか」
「はい。それまで王宮で預からせて頂きます」
「フランベル伯爵、伯爵夫人、申し訳ない。息子の我儘を聞いて貰う形になってしまった」
「嫌、もしもの時は婚約して頂きます。それでもよろしいですか?」
「こちらは申し分ない話です」
「それなら問題はないでしょう」
「フランベル伯爵、夫人、ありがとうございます。リーを必ず護ります。リーの側を離れません。ありがとうございます、ありがとうございます」
伯爵家から帰って来てから俺はずっと側に寄り添った。
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