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一週間の外出禁止がとけ、今日からまた騎士団へ通える様になった。
「レイ、やっとよ。今日こそ会えるかしら」
「どうでしょう」
騎士団の練習場近くに馬車が着き、練習場まで歩いていると令嬢の黄色い声援が聞こえ、
「今日も凄いわね」
「そうですね。今日は人数もいつもより多い気がします」
「本当ね」
私は令嬢の後ろから眺める。
「今日は近衛隊の方々も来てるわよ。やっぱり近衛隊の方々は騎士団の騎士とは違うわね。まず見目が違うわ。美しい人しか居ないもの。それにあの身体付き。細いのに逞しいって素敵よね」
令嬢の話に耳を傾ける。
「レイ、今日は近衛隊の騎士の方が来てるって。ジークルト様かしら」
「ここからでは見えませんね」
「そうなのよ」
レイと小声で話していた。
「キャー、ジークルト様よ~。ジークルト様~」
「キャー、素敵ね~」
令嬢の黄色い声援。
「レイ、ジークルト様って」
「はい。確かに」
「見えないわ」
令嬢の人数が多くて見えない。
「ジークルト様って未だに独身でしょ?何でも王女殿下の事が幼い頃から好きらしいの。ジークルト様って公爵令息じゃない?王族のご友人として幼い頃から王宮に出入りしてて、王女殿下に一目惚れしたらしいわ」
「王太子殿下とジークルト様は幼馴染みですものね」
「公爵令息って言っても次男だから、王女殿下を娶るには身分が無いし、だからお側で護れる護衛騎士になったって聞いたわ。今では王女殿下付きの近衛隊の副隊長ですもの」
「王女殿下もジークルト様の事を好きらしいけど、身分違いで諦めるしかないけど、諦められないからお側に置いたんでしょ?」
「王女殿下って確か隣国の王子と近々婚約するって噂を聞きましたわ」
「ジークルト様はどうなさるのかしらね」
「王女殿下が隣国へ行っても独身を通すって聞きましたわ。生涯慕う人以外とは婚約しないと話していたと」
「ジークルト様に婚約を打診しても断られ続けるから今ではもう婚約を打診する令嬢が居ないと。それに令息として出席なさる夜会でもダンスは誰一人踊られないとか」
「まあ。王女殿下以外踊らないと言う事かしらね」
令嬢の話を聞いて、
「レイ、もう帰りましょう」
「お嬢様、ジークルト様を一目見に来たのではないのですか?」
「そうだけど、令嬢の話聞いてたら私なんか相手にされ無いって分かったから、もう良いの」
「お嬢様…」
ギルとニックの所に行き、馬車が停めてある所まで歩き出した時、
「キャー、ジークルト様がこっちを見たわ」
私は振り返り、ジークルト様と目が合った。
【 ドクン 】
自然と涙が溢れ、足早に馬車まで向かい、馬車の中で1人泣いた。
「目が合ったと思ったけど、私なんかと目が合うわけないのよ。でもやっぱり恋だった。恋だと思った瞬間失恋ね」
暫く泣いて、扉を開けレイを呼んで馬車は邸に向かい走り出した。
「ごめんねレイ」
「いえ」
「失恋ね」
「お嬢様…」
「良いの。恋が出来るって分かっただけ」
「はい…」
その日、夕食も食べずに部屋のベッドの上で泣いた。
初恋と分かったと同時に失恋だもの。ジークルト様は何年とこんな思いをしながらお側に居るのよね。王女様の為に鍛えて、慕う思いを声に出す事も出来ずに。お辛いでしょうね。
「レイ、やっとよ。今日こそ会えるかしら」
「どうでしょう」
騎士団の練習場近くに馬車が着き、練習場まで歩いていると令嬢の黄色い声援が聞こえ、
「今日も凄いわね」
「そうですね。今日は人数もいつもより多い気がします」
「本当ね」
私は令嬢の後ろから眺める。
「今日は近衛隊の方々も来てるわよ。やっぱり近衛隊の方々は騎士団の騎士とは違うわね。まず見目が違うわ。美しい人しか居ないもの。それにあの身体付き。細いのに逞しいって素敵よね」
令嬢の話に耳を傾ける。
「レイ、今日は近衛隊の騎士の方が来てるって。ジークルト様かしら」
「ここからでは見えませんね」
「そうなのよ」
レイと小声で話していた。
「キャー、ジークルト様よ~。ジークルト様~」
「キャー、素敵ね~」
令嬢の黄色い声援。
「レイ、ジークルト様って」
「はい。確かに」
「見えないわ」
令嬢の人数が多くて見えない。
「ジークルト様って未だに独身でしょ?何でも王女殿下の事が幼い頃から好きらしいの。ジークルト様って公爵令息じゃない?王族のご友人として幼い頃から王宮に出入りしてて、王女殿下に一目惚れしたらしいわ」
「王太子殿下とジークルト様は幼馴染みですものね」
「公爵令息って言っても次男だから、王女殿下を娶るには身分が無いし、だからお側で護れる護衛騎士になったって聞いたわ。今では王女殿下付きの近衛隊の副隊長ですもの」
「王女殿下もジークルト様の事を好きらしいけど、身分違いで諦めるしかないけど、諦められないからお側に置いたんでしょ?」
「王女殿下って確か隣国の王子と近々婚約するって噂を聞きましたわ」
「ジークルト様はどうなさるのかしらね」
「王女殿下が隣国へ行っても独身を通すって聞きましたわ。生涯慕う人以外とは婚約しないと話していたと」
「ジークルト様に婚約を打診しても断られ続けるから今ではもう婚約を打診する令嬢が居ないと。それに令息として出席なさる夜会でもダンスは誰一人踊られないとか」
「まあ。王女殿下以外踊らないと言う事かしらね」
令嬢の話を聞いて、
「レイ、もう帰りましょう」
「お嬢様、ジークルト様を一目見に来たのではないのですか?」
「そうだけど、令嬢の話聞いてたら私なんか相手にされ無いって分かったから、もう良いの」
「お嬢様…」
ギルとニックの所に行き、馬車が停めてある所まで歩き出した時、
「キャー、ジークルト様がこっちを見たわ」
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暫く泣いて、扉を開けレイを呼んで馬車は邸に向かい走り出した。
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「いえ」
「失恋ね」
「お嬢様…」
「良いの。恋が出来るって分かっただけ」
「はい…」
その日、夕食も食べずに部屋のベッドの上で泣いた。
初恋と分かったと同時に失恋だもの。ジークルト様は何年とこんな思いをしながらお側に居るのよね。王女様の為に鍛えて、慕う思いを声に出す事も出来ずに。お辛いでしょうね。
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