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番外編 愛は蜜
しおりを挟む「メアリは可愛いな」
ウォルは私の髪を撫で匂いを嗅いで私の寝顔をひたすら見つめる。
これは毎朝のウォルの日課。
ウォルがいつ寝ていつ起きるのか、未だに私は分からない。
私が寝るまでまるで子をあやす親みたいに隣で抱きしめたり髪を撫でたり、時には話をしながら私が眠るまでずっと私の顔を見ている。
私が目を覚ますと
「メアリ愛してる。メアリは?」
「私もウォルを愛してるわ」
そう言うと私にスリスリして起き上がる。
「おはようメアリ。さあ朝ご飯を食べようか」
「おはようウォル」
ウォルは尻尾を振りながら身支度を整える。私も起き上がり夜着からワンピースに着替える。その間ウォルは朝食作り。
初めは着替えも全てウォルが用意し着替えを手伝っていた。
でもね…、
夜着を脱がすまではいいの。脱がしワンピースを着せてくれるならね。
ウォルはそのまま私をベッドに横にし綺麗だ可愛いと言って全身を舐める。そうするとそのまま……ね…。
いつの間にか眠っていた私が目を覚ますとウォルの姿はなくテーブルにはサンドイッチとフルーツが置いてある。
『朝のメアリも美しかった。メアリを残して仕事に行きたくない。それでもメアリとの生活を守る為に仕事に行ってくるよ。早く帰ってくるから大人しく待っていてほしい。愛してるメアリ』
置き手紙はいつも残してあった。
流石にこう毎日だと私も疲れちゃう。だから今はウォルの仕事が休みの日だけ朝の支度を手伝ってもらう事にしたの。
ウォルは毎度私に確認する。俺を好きか、俺を愛してるかって。長年気持ちを見せず言葉を隠していた私が悪いんだけど信じてもらえないのはちょっと寂しい。
『メアリの気持ちを疑った事はない。ただ俺がメアリの声で聞きたいんだ。メアリの可愛い声を聞いたらそれだけで幸せになる』
私ももう隠さないと決めた。だけど愛情表現を自然に出来るウォルとは違い私はまだ照れちゃう。自分から伝えたのはウォルに比べたら少ない。だって私が愛してると伝える前にウォルが愛してると伝えてくれるし私の気持ちを聞いてくるから。
だからウォルを安心させる為にもこれからはもっと態度で言葉で伝えないとと思う。
私も毎日ウォルと一緒に暮らせて幸せなんだから
だからちょっと行き過ぎた束縛も許せる範囲。例えこの家から出れなくてもウォルの休みには一緒に街へ行けるし、ウォルの送迎ありでならお母様にも義母様にも会える。元々仲が良いと呼べる友達はいないし、ウォルと結婚しても今までと変わらない日常だから。
ただ、
『メアリが刺繍好きなのは知ってるし俺も止めてほしいけど止めはしない。いや、やっぱり止めてほしい。
だって針は凶器なんだぞ。もしうっかりメアリの可愛い手を刺したら…血が出るんだぞ。そう考えるだけで俺は針を折ってしまいそうだ』
ちょっと涙目で真顔でそう言ったウォルに呆れたのは仕方がない。
そりゃあついうっかり指に刺さる事はある。刺されば血もちょこっとだけど出る。でも直ぐに血は止まるし、またやっちゃったって思うだけなのに。
そこは断固戦った。
家に閉じ込めるなら家の中くらいは好きな事をさせてほしいと。そしたら条件付きでお許しが出た。
『俺のだけを作るなら、…許す』
不服そうな顔をしていたけどそれくらいは許してほしい。
だから未だに包丁は握った事がない。
『俺が作ったものをメアリが食べる。それが俺の楽しみで俺の幸せだ』
と言われればこのままお願いしようかな、と思ってしまう。
『メアリが着ていた服を洗うのが俺の喜びだ。それを奪わないでくれ』
尻尾を振って嬉しそうに洗濯した服を干してる姿を見るとそれを私が奪うのは可哀想かもって思い始めた。
でも服の匂いを嗅ぐのは止めてほしいけど…
掃除くらいは、と思っていたけど二人しかいないと掃除も案外手間がかからない。
私を家に閉じ込めてお昼には一度顔を見に帰ってくる。私の匂いを確認し安心した顔でまた仕事へ向かう。家に居る時は片時も離れず食事はウォルの膝の上。湯浴みをする時は一緒に入りそのまま横向きに抱かれベッドへ…。
こんなに甘やかされていいのかと思うほど溺甘だけどウォルの幸せな顔を見ていると私の羞恥心はもうどうでも良くなる。
ウォルが作った食事を食べ、ウォルが洗った服を着て、髪の毛から体までウォルが洗い、ウォルに抱かれ、頭の天辺から足の爪先まで私の体はウォル以外が触れる事はない。ウォルの愛にどっぷり浸かり、それが心地良いとさえ思える。
ウォルの愛は重たいと思う。だからウォルは何年とかけ少しずつその重さに私が耐えれるように慣れさせた。
花の甘い蜜に群がる蝶のように優しく甘く私を虜にした。
その優しさが
その甘さが
私の生きる糧かのように。
ウォルの深い愛情を知ってる今、もうウォルの優しさ無しでは甘さ無しでは愛無しでは、私が耐えられない。
いつの間にか私の一部になり、無くてはならないものになった。
ウォルの重すぎる深い愛の蜜
魂に勝るものは愛だと証明された。
今私は仕事から帰ってくるウォルを今か今かと待っている。
ガチャガチャっと玄関の鍵が開けば私は部屋から顔を出す。
愛しい人と目が合い、手を広げて待つ愛しい人に駆け寄る。
尻尾を左右に揺らし私を抱き上げる愛しい人。
「おかえりウォル、愛してる」
「ただいまメアリ、俺の可愛いくて愛しいお姫さま、愛してるメアリ」
私の鼻をかすめるウォルのふわふわの毛。その温もりに包まれ部屋の奥へ今日も二人で入っていく。
完結
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みんと様
嬉しいコメントありがとうございます。
違う作品もみんと様の目に止まると幸いです。
いろんな番の話がある中この作品は素晴らしかったです😭✨✨
素敵なお話をありがとうございました🥰
せち様
コメントありがとうございます。
獣人と人。運命の番ではありませんが心から愛したメアリを番にしたウォル。この二人はいつまでも幸せに暮らすと思います。
完結までお付き合い頂きありがとうございました。また違う作品もせち様の目に止まる事を願っています。
完結おめでとうございます〜
メアリが魂の番に怯えるのはすごくよくわかるし、前を向いてウォルと番になったことはとてもうれしいです!
が、グルーが「魂の番のもとに」と言い続けるのはすごーーーくイラっときました。
もはや王女に向かって「俺は魂の番ができたら王女を捨てます。王女より魂の番の方が幸せに決まってます。魂の番に抗える自信ありません。」と言ってるも同然じゃないですか。魂の番制度が適応されるということはそれらの言葉は全部自分に返ってくるんですから……
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かなみん様
コメントありがとうございます。
グルーは元々気弱なので自分よりも…と思ってしまいます。でもサニーを思う気持ちは誰にも負けません。
ですがそこは狼獣人、懐に入れたらとことん尽くし愛し抜きます。
完結までお付き合い頂きありがとうございます。また違う作品もかなみん様の目に止まる事を願っています。