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お兄様が男爵になり、私はアニーと掃除をしたり庭をいじったり、伯爵家にいた時と変わらない生活をしている。
お兄様に学園に入るかと聞かれたけど、丁重にお断りした。お金が勿体ないのではなく、ただ行きたくないだけ。元々お茶会や夜会は得意な方でもないし、友達も別に欲しい訳じゃない。気の合う友達は欲しいけど、令嬢達のマウントの取り合いは疲れるだけだし。
クロードは騎士団を辞めお兄様の補佐として毎日頑張っている。私の婿になる為だって言ってるけど、毎日書類と格闘している。
お兄様は領地へ行って帰って来ないから、クロが書類と格闘しているんだけど…。私も多少は手伝えるから手伝ってるけど、執事を雇った方が良いと心から思う。
夫婦の寝室は鍵がかけられた。お兄様が領地へ行く時に鍵をかけ持って行った。結婚式をした日に渡して貰えるらしい。それでも廊下から入ってこれるから意味ないと思う。夜になるとアニーは1階にある使用人部屋で寝るし、2階は私とクロだけ。自由に行き来が出来るから中で繋がっていなくても関係ない。
昨日も夜になってクロは私の部屋に来た。クロ曰く「好きな女と一緒に住んでいて部屋に来ない男はいない」らしい。「一応結婚するまでは手は出さない。だけど一緒に寝るくらいの褒美が欲しい」って毎日一緒に寝ている。それだけ頭を使って書類と格闘するのは大変なんだって。まあその気持ちは分かる。
お父様とお母様はあれからどうなったかと言えば、伯爵家は没落した。お金は無い、稼ぐ事もしない、領地は荒れ放題の痩せ細った土地、散財する嫁、嫁に何も言えない夫、跡継ぎもいない、まあ没落するわよね。
伯父様に助けを求めたらしいけど「一切関与せず」と言われたらしい。お母様は侯爵家に帰ると言って帰ったらしいけど門前払いをされてお父様の元に帰ってきたみたい。
お父様が投資に失敗し貧乏になった時に「お金がないから今迄の生活は出来ない」とお母様にはっきりと言えていたら、「着ないドレスや宝石は買わない」と止めていたら、「贅沢はするな」と叱っていたら、今も家族で暮らせていたと思う。お父様が招いた事だけど家族で協力すれば貧乏ながら細々と暮らせていけた。それも今更だ。
惚れた弱み?そんなのでお金は貯まらない。
見栄?そんなのとうに無くなった。
お父様はいい格好しいで、お母様は過去の栄光に縋りつき、結局自分で自分の首を絞めてただけ。現実から目を背けて夢の中で生きてきたつけを今払っただけ。
一度、お兄様を訪ねて家に来たけど「親でも子でも無い」と追い返した。お父様は「薄情者」とか「親不孝が」と怒鳴り散らしていたけど、お兄様は選択肢をお父様に尋ねた。お父様が「親子の縁を切る」と選択した。今更文句を言っても遅いという事が何故分からないのか…。まあ、分からないから来るのよね。
お父様とお母様は伯爵家から逃げる様に出て行った、それも使用人を残して…。今は何処にいるのか何をしているのか私は知らない。別に聞くつもりもない。きっとお兄様か伯父様は知ってると思うけど…。
私はきっとお父様が言う様に薄情者で親不孝なのよ。二人が居ない生活が快適だと思うし、毎日楽しいの!
一年前のあの日、お兄様とクロードと思い出の詰まった邸を出た。思い出の詰まった邸は人手に渡りもう中に入る事は出来ない。それでも皆の心の中で覚えているから思い出は無くならない。
私は隣で歩くお兄様を見て、私達が進む前にいるクロードを見る。
小さな教会でごく僅かな人達に見守られクロードと結婚した。
結婚式が終わり、ささやかな宴も終わり、私は大きなベッドに座っている。部屋にあるお風呂は使っていてもこのベッドで寝た事は一度もない。夫婦になり初めて使うベッドに落ち着かない。
ガチャリ
鍵を開け、扉が開かれガウンを羽織ったクロードが入って来た。
私が座るベッドに乗り、私を抱きしめる。
「はぁぁ、長かった………。ようやくローラを抱ける」
私とクロードの唇が重なり「愛してる」と耳元で囁かれ、そのままベッドに寝かされ初夜を迎えた。
幼い時、お兄様と街へ出掛け倒れてるクロードを見つけ声をかけた。あの日がすべての始まりで、兄妹の様に育ちいつも側にいてくれた。夫婦になりこれからも側にいてくれる。
あの日、倒れてる子供は別の所にもいた。行き交う人達は知らぬ顔でそこに誰もいないかの様に通り過ぎていた。私もその一人。お兄様と手を繋ぎお父様の後を付いて歩いていた。それでも目に止まった一人の少年に向けてお兄様の手を振りほどき走って行った。
「お兄ちゃん大丈夫?ローラの家に一緒に帰りましょ?」
それが私とクロードの始まりの日…。
お兄様に学園に入るかと聞かれたけど、丁重にお断りした。お金が勿体ないのではなく、ただ行きたくないだけ。元々お茶会や夜会は得意な方でもないし、友達も別に欲しい訳じゃない。気の合う友達は欲しいけど、令嬢達のマウントの取り合いは疲れるだけだし。
クロードは騎士団を辞めお兄様の補佐として毎日頑張っている。私の婿になる為だって言ってるけど、毎日書類と格闘している。
お兄様は領地へ行って帰って来ないから、クロが書類と格闘しているんだけど…。私も多少は手伝えるから手伝ってるけど、執事を雇った方が良いと心から思う。
夫婦の寝室は鍵がかけられた。お兄様が領地へ行く時に鍵をかけ持って行った。結婚式をした日に渡して貰えるらしい。それでも廊下から入ってこれるから意味ないと思う。夜になるとアニーは1階にある使用人部屋で寝るし、2階は私とクロだけ。自由に行き来が出来るから中で繋がっていなくても関係ない。
昨日も夜になってクロは私の部屋に来た。クロ曰く「好きな女と一緒に住んでいて部屋に来ない男はいない」らしい。「一応結婚するまでは手は出さない。だけど一緒に寝るくらいの褒美が欲しい」って毎日一緒に寝ている。それだけ頭を使って書類と格闘するのは大変なんだって。まあその気持ちは分かる。
お父様とお母様はあれからどうなったかと言えば、伯爵家は没落した。お金は無い、稼ぐ事もしない、領地は荒れ放題の痩せ細った土地、散財する嫁、嫁に何も言えない夫、跡継ぎもいない、まあ没落するわよね。
伯父様に助けを求めたらしいけど「一切関与せず」と言われたらしい。お母様は侯爵家に帰ると言って帰ったらしいけど門前払いをされてお父様の元に帰ってきたみたい。
お父様が投資に失敗し貧乏になった時に「お金がないから今迄の生活は出来ない」とお母様にはっきりと言えていたら、「着ないドレスや宝石は買わない」と止めていたら、「贅沢はするな」と叱っていたら、今も家族で暮らせていたと思う。お父様が招いた事だけど家族で協力すれば貧乏ながら細々と暮らせていけた。それも今更だ。
惚れた弱み?そんなのでお金は貯まらない。
見栄?そんなのとうに無くなった。
お父様はいい格好しいで、お母様は過去の栄光に縋りつき、結局自分で自分の首を絞めてただけ。現実から目を背けて夢の中で生きてきたつけを今払っただけ。
一度、お兄様を訪ねて家に来たけど「親でも子でも無い」と追い返した。お父様は「薄情者」とか「親不孝が」と怒鳴り散らしていたけど、お兄様は選択肢をお父様に尋ねた。お父様が「親子の縁を切る」と選択した。今更文句を言っても遅いという事が何故分からないのか…。まあ、分からないから来るのよね。
お父様とお母様は伯爵家から逃げる様に出て行った、それも使用人を残して…。今は何処にいるのか何をしているのか私は知らない。別に聞くつもりもない。きっとお兄様か伯父様は知ってると思うけど…。
私はきっとお父様が言う様に薄情者で親不孝なのよ。二人が居ない生活が快適だと思うし、毎日楽しいの!
一年前のあの日、お兄様とクロードと思い出の詰まった邸を出た。思い出の詰まった邸は人手に渡りもう中に入る事は出来ない。それでも皆の心の中で覚えているから思い出は無くならない。
私は隣で歩くお兄様を見て、私達が進む前にいるクロードを見る。
小さな教会でごく僅かな人達に見守られクロードと結婚した。
結婚式が終わり、ささやかな宴も終わり、私は大きなベッドに座っている。部屋にあるお風呂は使っていてもこのベッドで寝た事は一度もない。夫婦になり初めて使うベッドに落ち着かない。
ガチャリ
鍵を開け、扉が開かれガウンを羽織ったクロードが入って来た。
私が座るベッドに乗り、私を抱きしめる。
「はぁぁ、長かった………。ようやくローラを抱ける」
私とクロードの唇が重なり「愛してる」と耳元で囁かれ、そのままベッドに寝かされ初夜を迎えた。
幼い時、お兄様と街へ出掛け倒れてるクロードを見つけ声をかけた。あの日がすべての始まりで、兄妹の様に育ちいつも側にいてくれた。夫婦になりこれからも側にいてくれる。
あの日、倒れてる子供は別の所にもいた。行き交う人達は知らぬ顔でそこに誰もいないかの様に通り過ぎていた。私もその一人。お兄様と手を繋ぎお父様の後を付いて歩いていた。それでも目に止まった一人の少年に向けてお兄様の手を振りほどき走って行った。
「お兄ちゃん大丈夫?ローラの家に一緒に帰りましょ?」
それが私とクロードの始まりの日…。
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