伯爵令嬢の恋

アズやっこ

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「では父上に選択して貰います」

「何だ」

「一つ 当主を俺に譲り母上と領地で細々と隠居する。
一つ 」

「ま、待て」

「何です」

「社交はどうする」

「社交?そんなのここ数年誘われる事などありませんよね?誰が父上と社交したいと思うのです。

一つ 母上と離縁する。
一つ 」

「ま、待て」

「何です」

「ファニーと離縁はしない。する気もない」

「離縁して侯爵家に帰すのが一番だと思いますが。まあ当主の伯父上が認めるかは別ですが。

一つ 親子の縁を切る。

父上どれにしますか?」

「親子の縁を切ってフレッドはどうするつもりだ」

「俺は伯父上から男爵の爵位を譲り受けましたのでご心配なく。ああそれと、フローラも俺が連れて行くのでご心配なく」

「フローラは認めん」

「何故です」

「フローラには婚姻して貰う」

「お金のある人にですか?」

「令嬢として産まれ育ててきたんだ。家の為に役に立つ、それくらい当たり前だ」

「あんたは人でなしか!!」


 お兄様の大きな声に驚き、


「穀潰しの妻の為に娘を金で売るのか!!」

「それくらいして当然だ!」

「それくらいして当然?ふざけるな!! それくらいって言うならな、自分の嫁ぐらい管理しろよ!!」

「何だと!!」

「自分の嫁が阿呆みたいにお金を使うから家は貧乏のままなんだよ!!」

「何だと!言わせておけば!!」

「なら自分でお金を作ってみろよ!!」

「お前等はな、俺の駒なんだ!!駒は駒らしく親の言う事を聞いていれば良いんだ!!」

「そもそもなあんたが投資で失敗したのがこうなった原因だろうが!!」

「煩い!!」

「使用人も辞めさせやがって!」

「煩い!黙れ!」


 お兄様とお父様の怒鳴り合いに耳を塞いだ。クロは私の顔を自分の胸に隠し抱きしめてくれた。


「フレッド!止めろ!」

「はぁぁ!」


 クロの大きな声…。

 お兄様の大きな溜息…。


「父上、俺とフローラは親子の縁を切らせて貰います」

「勝手にしろ!」

「ではここにサインをお願いします」

「貸せ!」


 お父様がサインをして乱暴にお兄様に渡した。


「フローラ行くぞ」

「…はい」


 私はクロに手を引かれお兄様の後を付いて行った。


 伯爵家から出た所に馬車が用意してあり、乗り込もうとしたら、中には、


「お嬢様、私も出てきちゃいました」

「アニー」

「アニーも来たか」

「はい!フレッド様」

「なら行くか」

「お兄様、何処に行くのです?」

「俺達の邸だけど?」

「はい?」


 馬車が動き出し、今迄育ってきた邸がどんどん遠くなり、


「フローラ、すまないな」

「お兄様」

「本当なら父上と母上には領地で隠居して貰うつもりだったんだ」

「はい」

「まあ念の為伯父上に爵位と領地を貰っといて良かったよ」

「よく伯父様がくれましたね」

「まあ元々渡すつもりだったらしい」

「どうして?」

「伯爵家は没落する」

「まあそうよね」

「伯父上も父上に援助するつもりはないらしい」

「そりゃそうよ」

「母上がもし離縁して帰って来ても平民に落とすつもりだったみたいだ」

「まあそれも仕方ないわよね、出戻りだもの」

「そうなると俺とフローラに皺寄せが来るだろ?」

「そうなるわね」

「伯父上もそれが心配だったらしいんだ。俺はまあ働かせるだけ働かせてお金だけ巻き上げる、で、フローラは金持ちの後妻にさせられるだろうって」

「でもそれが令嬢として産まれた定めみたいなものよね」

「確かにそうなんだけど、伯父上は親の尻ぬぐいの為に子が犠牲になる必要はないって言ってたよ。それに母上の散財も知っててな、えらくご立腹だった」

「そうなんだ」

「あいつの頭は虫が湧いてるのかだって」

「お母様は侯爵令嬢だったのが抜けないだけよ。結局お嬢様育ちだからお金に困るって感覚がないんじゃない?」

「そうだと思うけど、父上も拍車をかけてた」

「まあそうね」

「だから見切りをつけろってずっと言われててさ」

「それで男爵の爵位と領地?」

「そう言う事だ」

「今から行く家も伯父上が持ってた家らしい」

「伯父様別邸なんか持ってたの?」

「爺さんの愛人宅だったらしい」

「お祖父様の…」

「もうそろそろ着くぞ」


 伯爵家から馬車で15分ぐらい離れた所に建つこじんまりした家に着いた。


「庭もある」

「まあ爺さんの愛人宅だからな」

「それもそうね」


 中に入り、


「メイドを雇うつもりだったけどアニーいるし何とかなるか」

「メイドなんて勿体ない。私とアニーがいれば大丈夫よ」

「護衛もクロードがいるしな」

「ご飯は?私、下準備しか出来ないけど」

「それは大丈夫。前見習いで雇ってた子を雇った」

「そう、なら大丈夫ね」

「部屋を案内する」


 2階に上がり、お兄様の部屋、その横の部屋はどうやら夫人の部屋になるみたい。まだ使う予定はないみたいだけど。そしてその横の部屋が私の部屋らしい。

 中に入り最低限生活に必要な物は置いてあった。ベッドとソファーと机、それだけあれば十分。扉があり開けるとワンピースが数枚かけてあった。その奥にまだ扉があって開けたら、大きなベッド?部屋の中の引き戸を引いたらお風呂があり、一人で入っても余裕な広さね。

 また扉?

 開けたら、


「え?」

「ローラ?」

「え?何でクロがいるの?」

「俺の部屋だから」

「え?」

「ローラこそどうやって入って来たんだ?」

「どうやってって自分の部屋から入って来たけど」

「は?」

「だから自分の部屋から入って来たの」

「それは聞いた。って事は繋がってるんだ」

「は?」

「だから俺の部屋とローラの部屋が繋がってるって事だろ?」

「そ、そうね、そうなるわね」

「へえ~」

「おい!クロード!」

「何だよ」

「結婚するまでは駄目だからな!」

「分かってるよ」

「まあ一応夫婦の部屋にしておいたんだよ」

「お兄様、何で!」

「何でってフローラも連れて出るつもりだったからだ」

「そうだけど」

「まあこの部屋を使う相手がクロードと思って作った訳じゃないけどな」

「そう」

「でも結果としてクロードが使う事になったけどな」

「そうだけど」

「まあクロードは当分騎士団の宿舎だな」

「何でだよ。俺も今日からここに住むからな」

「住むのは良いけど分かってるよな?」

「ああ」


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