伯爵令嬢の恋

アズやっこ

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 私は今、畑の野菜の収穫をしている。


「俺も手伝います」

「クロード、悪いわね」


 今日はじゃがいもを一本一本引っ張って抜いている。クロがスコップで土を掘り起こし引っ張り、私は土の中に残ったじゃがいもを取り、根に付いてるじゃがいもを取る。


「今回は大量に出来たわね」

「はい」


 私達は畑に座りじゃがいもを取っている。


「お嬢様、」

「何かしら?」

「土が顔に、」

「気にしないわ。気にしてたら土いじりなんて出来ないもの」


 クロは汚れてない服の裾で私の頬の土を拭いた。その時、服の下、お腹が見えて…、


「クロ!」

「何?」

「急にビックリするでしょ!」

「俺が気になったんだ」

「それでも……」

「何」

「肌が見え、た、わ…」

「肌?」

「お腹が、」

「お腹ぐらい」


 私は真っ赤になった顔を俯けた。男性の肌なんて見た事ないもの。それに鍛えられたお腹が何か大人の男性に思えた。勿論クロは大人の男性って分かってるわよ?それでもどこか子供の頃のままって勝手に思ってたの…。


「見るか?」

「ばか!」

「何顔を赤くしてるんだよ」

「そんなの、そんなの…男性の肌なんて、見た、事、ないもの…」

「ローラ」

「何?」

「顔上げて」


 私は俯いてた顔を上げた。


「照れてるローラ、可愛いな」

「もう!ばかにしないでよ!」

「ばかにしてないだろ?」

「子供扱いして!」

「実際子供だろ?」

「成人してるもの」


 この国は16歳が成人で、私は先月16歳になった。


「そういう意味じゃないんだけどな」

「何?」

「何でもない」

「そう?」

「それより早く取るぞ」

「え?うん」


 私達は黙々と土の付いたじゃがいもを収穫し、軽く土を落とし、籠に入れる。


「クロード、お客様~」


 クロードが顔を上げて声のする方へ顔を向けた。メイドのアニーが呼んでいた。


「誰だろ?ちょっと行ってくる」

「分かった」


 クロードの代わりにアニーが籠にじゃがいもを入れてくれ、


「お嬢様、クロードのお客様気になりません?」

「アニーが言いたいだけでしょ?」

「分かります?」

「で、誰だったの?」

「女性でした」

「女性?」

「クロードもすみに置けませんね」

「そう、」

「お嬢様、見に行きません?」

「アニー、流石にクロードも見られたら怒るわよ?」

「大丈夫ですって。このじゃがいも置きに行くフリして見に行きましょうよ~」

「アニー」

「お嬢様~行きましょうよ~。立って立って!」

「もう。こっそりよ?」

「分かってます」


 私とアニーは一応じゃがいもの入った籠を持って使用人出入口へ向かった。物陰からこっそりのぞき、


「ここへは来るなって言っただろ!」

「だってこの頃来てくれないから」

「俺は雇われてる使用人なんだ。この家に迷惑をかけるだろ!」

「なら会いに来てよ」

「何度も邸を留守に出来るわけないだろ!」

「ねえ、クロード、」


 女性はクロードの耳に何か言ってるみたい。クロードの顔が冷めてる?


「ね?早く会いに来てくれるでしょ?」

「都合がついたらな。早く帰ってくれ」


 女性はクロードの唇に口付けして帰って行った。

 クロードは口付けされた口を服で拭いて、顔を上げた。

 クロードと目が合い…、


「どうして、お前、」


 クロードが怒った顔?何で?

 クロードが私の持ってる籠を持ち小屋へ運んでいる。私はもう一つ籠を取り、


「お嬢様、何か揉め事でしょうか?」

「そう、みたいね」


 私とアニーは小声で話し、


「私は戻りますね?」

「アニー、私一人残して行くつもり?」

「だってクロード怒ってますもん。正直近寄りたくないです」

「そんなの私もよ」

「お嬢様、頑張って」


 アニーはそそくさと邸の中に入って行った。

 残された私は、クロードを待つべきか、先に行くべきか…。 私だって怒ってるクロードは怖いわよ!背中から怒気が…。


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