悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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76 久しぶりの再会

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私は床に座り目を瞑っている。

今更悔やんでもやり直す事は出来ない。

キー

牢屋の入口の開いた音。見張りの騎士の交代かしら。交代の時間ではないはずだけど。

人の気配

誰か入って来た?


「リリーアンヌ!」


聞き覚えのある声。私は目を開けた。


「お久しぶりです、ジェイデン殿下」


私はジェイデンに微笑んだ。


「リリーアンヌ、俺と一緒に逃げよう。タイラー達も一緒にだ」

「ふふっ、いきなり来て何を言うかと思えば、逃げる?なぜ?」

「なぜって、このままだと処刑されるんだ、それくらい分かるだろ」

「ええ、私は罪人。処刑される罪人です。貴方様は隣国の王族のお方。罪人のいるこの場は相応しくありません。どうぞこのままお下がり下さい」

「リリーアンヌ」

「ジェイデン殿下、私達に慈悲は結構です。貴方様はお優しいお方ではありますが罪人には必要ないものです」


私はあっちへ行ってと手で追い払った。


「あぁ、そうか…。

なんだ、つまらないな。ここは命乞いをする所だろ?命乞いをしたのなら兄上に直ぐに報告したのに。リリーアンヌが俺に色目を使ったと。リリーアンヌは悪女で間違いないと。早く処刑した方が良いと。

あぁ、残念だな。

マックス、行くぞ、興が醒めた」

「はい」


ジェイデンは牢屋から出て行った。

ガタガタガタ

天井裏から物音がし、またジェイデンが牢屋に入って来た。

地下の牢屋と言っても監視部屋はある。死が迫った者が自分の行いを悔い口に出す。見張りの騎士が席を外し、一人になった時、仲間だけになった時に口に出すのを聞き逃さない為に。他の仲間の事を口に出す事もある。その為の監視部屋。


「よく覚えていたわね」

「当たり前だ。リリーアンヌと俺の合図だ」


ジェイデンは幼い頃、よく部屋を抜け出していた。勉強の時間、お昼寝の時間、いつも抜け出して困ったお父様が影を付けた。ジェイデンが私の所に来た時、影が側にいる時は追い払う。騎士なら手招きする。そう合図を決めた。


「リリーアンヌ、一緒に逃げよう。このままだと兄上はリリーアンヌを処刑する。タイラー達も一緒に隣国へ行こう」


私は顔を横に振った。


「リリーアンヌ、あれは駄目だ。兄上は外道に成り下がった。もうリリーアンヌが救う価値はない」

「それも分かってるわ」

「なら!」

「ジェイデン、私達を逃がせば今度はジェイデンが罪人になってしまう。誰もそんな事を願ってないわ」

「俺にはリリーアンヌもタイラーも大事なんだ。それにコナーにだって遊んでもらった。ボビーには色々教わった。皆を見殺しになんて俺には出来ない…」

「ジェイデン、貴方が私達を救いたいように、私達も貴方を救いたいの。それに隣国へジェイデンを行かせたのは私だわ」

「そんな事知ってる。それでもリリーアンヌが死ぬのは、嫌だ……」

「それに、アルバートの夢を叶える為に王にしたのも私」

「それも分かってる」

「私を罰する事を王になったアルバートが決めた事なら私は従うわ」

「リリーアンヌ」

「ジェイデン、僕にとってジェイデンは可愛い弟だ。弟を罪人になんてしたくない」


タイラーもジェイデンを可愛がっていた。懐いてくるジェイデンに色々教えたのもタイラー。


「そうだぞ。俺にとっても弟だ」


コナーは度々お父様と一緒に王宮へ来ていた。王宮の騎士達に混ざり剣の稽古をしていた。ジェイデンが剣を真剣に習い始めたのはコナーが影響している。


「そうですよ、ジェイデン殿下。こんな所で何をしているのです。貴方には隣国との大事な役目があるのを忘れたんですか」


ボビーはジェイデンの教育係もしていた。ボビーの時だけは逃げ出さないから。というよりも逃げ出した後の方が怖いからなんだけど。


「ジェイデン、皆、貴方の先の未来に夢を託したいの。弟のように可愛がってきた貴方だから、私達は護りたいのよ?」

「それを言ったら俺もだ。俺も皆を護りたい」

「ジェイデン、私達はこの処遇に覚悟をしているの。でも一つだけお願いがあるわ」

「なに」

「グレイソンを護って。グレイソンを連れて隣国へ行ってほしいの」

「グレイソンも護る、だから!」


私は顔を横に振った。


「タイラー」


ジェイデンはタイラーの牢屋の前に行った。


「ジェイデン、僕は大丈夫。だからジェイデンは僕達に関わったら駄目だ」

「コナー」


タイラーの横の牢屋にいるコナーの前。


「俺はお嬢の騎士だからな。お嬢居るとこに俺もありだ」

「ボビー」


コナーの横の牢屋。


「ジェイデン殿下、私はもう老いぼれです。どこで命を落とすか、その違いです。ですが貴方は違う。王配として貴方は発揮出来る。私はそのように教えてきました。

昔教えた事を覚えていますか?

上に立つ者は時として情を捨てないといけない時があると。情だけで動かず物事を考えて動きなさいと」

「教わった。だが、」

「情で動けば兄弟で戦です」

「兄弟?あんなのもう兄じゃない」

「ジェイデン殿下、物事を先ず考えなさい。貴方が今一番考える事は何です」

「グレイソンよ、ジェイデン」


私はジェイデンが話す前に声を出した。ジェイデンが私達と言うのが分かっているから、だから私はジェイデンの言葉を遮ったの。

ジェイデンが違うと、嫌だと、顔を横に振っている。



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