悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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閑話 ジェイデン視点 ①

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マックスから急ぎの書簡が届いた。


【ルヴェンド公爵、シャドネー公爵毒死。王妃、離縁し北の離宮へ】


離縁?有り得ない。兄上は何をしているんだ!

祖国の情報は入っていた。兄上があのフォスター公爵を側に置いた事。第二夫人を娶った事。

それでもリリーアンヌとは離縁しないと思っていた。

公爵達の死はフォスター公爵が一枚噛んでるだろうと推測出来た。あのフォスター公爵の事だ、兄上を扱うのは容易いだろう。

俺もいつでも動けるように準備をした。

王配と言っても人質のようなもの。そこに愛はお互いない。その分俺は好きなように動けるのは助かるが。


またマックスから急ぎの書簡が届いた。


【王妃、罪人として手配。緊急に王妃の救出求む】


緊急に、切羽詰まっているという事だ。

俺は急いで祖国へ帰る事にした。辺境には俺の剣の師匠が辺境伯として跡を継いだ。

辺境へ着き事情を聞く。

辺境に身を寄せるローレンの奥方から、リリーアンヌの話も聞いた。皇帝の話も、兄上と皇帝の約束も全て聞いた。

そして第二夫人を娶った理由も聞いた。

リリーアンヌ以外を愛しただと?

兄上は俺の気持ちを知っていた。それでも兄上はリリーアンヌを愛する婚約者にし妻にした。

辺境伯の影からの情報も入った。

出来てもいない子を殺した?

なぜ別の医師に見せない。フォスター公爵の息のかかった者ではない別の医師になぜ見せなかった!

ボビーを辞めさせたのは痛手だ。ボビーなら違う医師に診察させただろう。

俺は急いで辺境伯の影を使いマックスに文を送った。


必ず俺が助けてみせる


影からの情報では北の離宮から王宮へ向けてリリーアンヌが向かったと。

俺も急いで王宮へ向かいたい。

隣国の次期王配として王宮へ向かうにも、使者として向かうにも、兄上に連絡していない以上目立つ行為は避けないといけない。

祖国とはいえもう俺は隣国の人間。勝手にこの国を通る事は出来ない。許可が必要だ。

兄上に書簡を送り、俺は辺境で返事を待った。


【グレイソンに会いたい】


それに対し


【グレイソンも会いたいと言っている。王宮で待っている】


許可がおり、俺は急いで王宮へ向かった。

王宮へ着き、俺は兄上に会いに行った。


「国王陛下、この度は心遣い感謝します」

「そう固くなるな、ジェイデン。今は俺とお前しかいない」

「なら、

兄上、リリーアンヌにも会わせて下さい。久しぶりに顔が見たい」

「あの女か」

「あの女?兄上らしくもない」

「ジェイデンは知らないだろうが、あの女は悪魔だ。俺の子を殺した」

「兄上の子を?本当に兄上の子が出来たんですか?」

「あぁ、医師にも確認した。もうすぐ産まれる予定だったんだ。それを」

「出来たばかりではなく産まれる間近だったと」

「あぁ」

「なら、グレイソンの主治医に診察してもらいましょう。また子が望めるか、きちんと診断してもらいましょう」

「必要ない。また望めると言われた」

「兄上の医師達の診断では心許ない。産むのは王の子ですよ?」

「だが、医師は男性だ。何度も診察させるのは可哀想だ」

「ハハハッ、兄上、何を言っているんですか?王の妻ならそれくらい普通です。それだけ王の子を身籠ると言う事は大事な事なんです」

「俺が必要ないと言っている。王の俺が必要ないと言っているんだ」

「兄上は以前の兄上とは違うようだ。俺の知ってる兄上とは違うみたいだ。

ならこちらも、

隣国として、国王陛下、我が国はこの国を攻める」

「何?」

「戦ですよ」

「何を言ってる」

「この国の領土、とても捨てがたい。私は常々この国の領土が欲しいと思っていた。この国の王にはなれないが、それならこの国を奪えば良い。

これより我が国はこの国に宣戦布告をする。

では失礼」


俺は席を立ち上がった。


「ま、待て。それは困る」

「なら、王妃を人質に。それで手を打ちましょう」

「ナーシャをか?それは、駄目だ」

「なら元王妃でもこちらは構いませんよ」

「駄目だ!人質にはさせない」

「国王陛下、なら国を諦めなさい」

「それは出来ない」

「人質も駄目、国も諦めたくない、そんな駄々をこねる子供ではないでしょう、お互い。どちらにせよ我が国は宣戦布告をした。戦にするか人質にするか、こちらはどちらでも良いですよ。

但し、期限は明日。明日また伺いましょう」



グレイソンの主治医は俺の元主治医。王族には一人につき主治医が付く。父上には3人、兄上には2人。グレイソンの主治医は高齢だった。俺が隣国へ行く時、俺の主治医はグレイソンの主治医になった。

フォスター公爵の息はかかっていない。それに彼は権力には屈しない。

それでも担当する王族以外を診察はしない。それが決まりなのは分かっているが、彼なら妊娠していたのが嘘だと証明してくれただろう。

主治医だけに委ねるのは危険だな。捏造しても分からない。主治医が嘘をつくとは、医師が嘘をつくとは誰も思わないからな。



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