悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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74 一緒に連れて行く者達

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1ヶ月以上かけて私は王宮へ戻って来た。

謁見の間

椅子に座り私を睨むアルバートの姿。


「マックス!どうして罪人を縄で縛っていない!」

「陛下、逃げない者を縛る必要はありません」

「マックス!」


私は両膝を床につけ下からアルバートを見る。


「なんだその目は!鞭を打て!」

「陛下!ここは謁見の間、そのような真似は出来ません!先人の陛下達が見ている前です!」

「そんな事言われなくても分かっている!」


アルバートはまた私を睨んだ。


「お前は私の子を殺した。王の子を殺せば重罪なのは知っているな。お前は公開処刑にする」

「分かりました。ですが、他の者は関係ありません。私だけを処刑して下さい」

「お前に手を貸した、同罪だ」

「手は借りていません。私は離宮へ向かっただけ。そして私の従者として共にいただけ。それだけです」

「ならなぜ逃げた」

「逃げた?私は逃げていません。離宮へ向かうのに私がどの道を通ろうがそれは私の自由。私がマックスと会ったのは離宮の門の前です」

「そうなのかマックス」

「はい、その通りです。私が元王妃様にお声かけしたのは離宮の前です」

「私は罰をお受けします。ですが、従者達は何の関係もありません」

「関係ない?関係ならお前の従者だけで十分だ。お前には苦痛に耐えながら死んでもらわないとな。

私の子もお前の手で殺され苦痛に耐えながら死んだ。お前も同じようにしなければ私は私の子に合わす顔がない。

お前には従者の死を、お前の愚行で巻き添えになり殺される従者の怨念を抱きながら死んでいけ」

「陛下、陛下は何も関係もない民を己の私怨の為だけに見殺しにすると」

「お前の従者であって民ではない。それに言ったはずだ、従者だけで十分だとな」

「陛下!」

「リリーアンヌ、良いんだ」


私の後ろに控えるタイラーの声に振り返った。


「リリーアンヌ、良いんだ。僕達はリリーアンヌと共に、それが僕達の願いだ」

「タイラー…、駄目よ…、そんなの、駄目よ……」


タイラー、コナー、ミーナ、マイラ、ボビー、皆の目が覚悟を決めている目だった。


「連れて行け!」


騎士達に拘束される皆。私を拘束するのはマックス。


「ま、待って!待ってアルバート、お願い、話を、話を聞いて!」

「罪人と話す事はない」

「お願い、アルバート、とても大事な話なの…。罰は受ける。だから、その前に私の話を聞いて、お願い、お願いします」

「命乞いか?見苦しい!」

「違うわ、でもとても大事な話なの、アルバートにとっても」


アルバートは私の話を遮るように大きな声を出した。


「マックス、何をしてる!さっさと連れて行け!」

「陛下、お話を聞くくらい、」

「マックス!お前の主は私か?それともその罪人か?」

「ッ、陛下です」

「ならば私の言うことを聞け!私は何と言った!

ここは謁見の間だぞ?罪人がいつまでも居て良い場所ではない!」

「…分かりました」


私はマックスに連れて行かれるように謁見の間を出された。

バタン

謁見の間の扉が閉まった瞬間、私は一筋の涙を流した。

私の命乞いじゃない。それでも扉が閉まり命運は決まった。

ごめんね、ごめんね…、ごめんね……


地下牢へ向かう道、私は悲しみよりも喪失感の方が大きかった。

アルバートと過ごした約20年よりもナーシャ様と過ごした約1年の方がアルバートにとって大切だと、

私は心のどこかでまだ期待していた。

アルバートは私の話なら聞いてくれると、

それだけ私達は唯一無二の間柄だと私は思っていた。

愛がなくても情はあると、

アルバートは優しい。だから、だから…。


私が一緒に連れて行く。

皆、私が一緒に連れて行く。


私は目を瞑り涙を止めた。そして目を開けた時、私は前を向いて歩き出した。


この世との決別


潔く舞おう。最期は笑って、この世を去ろう。


それが私らしい


死んでも尚離したくない者達を連れて、一緒にこの世を去ろう。皆であの世で暮らすのも悪くない。きっと毎日が楽しいわ。そこにはお父様も伯父様も伯母様も、皆いる。

だから最後に


「マックス、お願いがあるの」

「私で聞ける事なら何なりとお申し付け下さい」

「最後に皆を抱きしめたいの。牢に入ったら温もりは感じられないでしょ?」

「分かりました」


地下牢に着き、私はコナーを抱きしめた。


「コナー、ありがとう。あの世でまた会いましょ」

「ああ、必ず見つけだす」


コナーはギュッと私を抱きしめた。

私はミーナにもマイラにもボビーにも同じ様に抱きしめた。


「タイラー」


私は手を広げた。


「リリーアンヌ、きっと毎日楽しいよ。リリーアンヌは呆れながら僕の話を聞いて、それから手を引いて連れ出してくれるんだ。僕に新しい世界を見せてくれるのはいつもリリーアンヌだった。だから僕はリリーアンヌの側が好きなんだ。

それにコナーの後ろはいつも楽しかった。僕では進まない道をコナーは進む。楽しかったな…」

「うん、そうね、楽しかった。毎日楽しかった」

「うん」


タイラーと抱き合った。


「マックスありがとう」


私は牢に入った。私が入った牢に鍵が掛けられた。



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