83 / 107
73 拘束 ②
しおりを挟む「貴方の何を信じろと言うの?卑怯な真似をする貴方のどこを信じろと?」
「私もこんな卑怯な真似はしたくなかった」
「でも貴方はしたわ」
「はい。ですが、妃殿下も話し合いを拒否しました。違いますか?」
「そうね、その通りよ。捕まれば最後だから、だから私は貴方との話し合いを拒否した」
「妃殿下、ジェイデン殿下が既にこちらに向かっています。貴女を人質にし救う為にです。隣国はこの国に戦を仕掛けると、そして止めたいのなら妃殿下を人質として渡せと。
ジェイデン殿下に後は任せましょう。陛下の事も全て任せましょう」
ジェイデンにどこまで出来るかは分からない。それでも皆の解放、それが今は先。
「分かったわ。だから直ぐに皆を離しなさい!」
私はマックスを睨んだ。
「分かりました」
マックスは手を上げた。解放される皆。
「コナー」
私はコナーの元に走った。傷だらけで腕からもお腹からも血が出ている。
「コナー、ごめんね…。最後まで守れなくて、ごめんね…」
「お嬢、お嬢が決めた事ならそれで良い」
私はコナーに抱きついた。
「汚れるぞ」
「そんなのどうでも良い」
「痛た…」
私は離れ、
「大丈夫?どこを斬られたの?見せて」
「こんな所でか?」
騎士団の騎士達が取り囲む中心に私達はいた。
「それも、そうね…。
マックス、私は貴女の言うことを聞いて拘束されるわ。でも皆は関係ないでしょ」
「妃殿下を手助けした者達が関係ないと、本当に妃殿下は思っているんですか?」
「そう。なら、」
私は剣を抜いた。
「お願いします。このまま剣を置いて下さい。お互い本気を出せばこの場は悲惨な現場になります」
「剣を置いたら私は敗北を認めた事になるわ。私は皆を助ける為だけに拘束されるのであって敗北はまた違うわ。
だから私は剣を置かない。最後まで戦う事でしか皆が護れないなら私は最後まで戦う。それで死んだとしてもそれも本望よ」
「それも良いか」
「でしょ?」
コナーも剣を拾い立ち上がった。私達は背中を合わせた。遠くで騎士達の悲鳴が聞こえる。きっとボビーがタイラーやミーナ、マイラを拘束している騎士を斬りつけた。
「さあ、始めましょ?マックス。どちらかが全滅するまでとことんやりあいましょ?」
マックスと目を合わせる。
「分かりました。拘束ではなく事情を聞く為に王宮へお連れします。それがこちらの譲歩です」
「王宮までで良いわ。王宮へ着いたらそのまま私は地下牢行きだから。だから、それまでの間は、皆と過ごしたいの。きっと最後だから…。だから、最後くらい、皆と、過ごしたいのよ……」
「妃殿下…、そんな事はさせません」
「良いのよ。それよりコナーを医師に見せたいんだけど」
「分かりました。街へ行き診察してもらいます」
「ちょっとだけ待って」
私は馬に駆け寄った。
「ごめんね、ここまでありがとう。後でご褒美をあげるからもう少しだけ私に付き合ってくれる?」
ブルル
私は馬の手綱を引いてコナーの側に戻った。
「お兄さんは?」
コナーが指笛を吹くとお兄さんが走ってきた。
「貴方もここまでありがとう。助かったわ」
ヒヒーン
「マックス、この子達を休ませたいの。随分無理をさせちゃったから」
「今日は街で宿泊します。明日王都へ向けて出発します」
「それで良いわ」
馬車が用意され、私達は乗り込んだ。
「お嬢様」
「リリーアンヌ様」
「ミーナ、マイラ…ごめんなさい。ボビーも、ごめんなさい。
タイラー、ごめんね…」
「リリーアンヌ、皆、リリーアンヌが決めた事を責めたりしないよ」
「でも、でも…、王都に、行けば……」
「皆、死は覚悟してる。それでもリリーアンヌの側を選んだ。リリーアンヌと共に、僕達は自分で選んだんだ。だから謝らなくて良いよ」
「ありがとう。ありがとう、みんな、ありがとう……」
馬車が宿屋に止まり、部屋が用意された。一人ずつ医師の診察を受ける。
傷の手当が終わったコナー。浅い傷から深い傷まで体中にあった。一人で何十人を相手したんだから当たり前だけど、体中包帯だらけの体は痛々しく見える。
「そんなに心配するな」
「うん」
馬の兄弟にも褒美をあげた。
次の日、馬車に揺られ王都まで向かう。
離宮の門から手を離した瞬間、私の生死は決まった。自ら離した手。誰かに決められた死ではなく己で選んだ死。
お祖父様もお父様も誰かを護る為に死を選んだ。それが血なら、私はナーシャ様の嘘を護る為に命をかける?
それは嫌。
だから、私は私の為に手を貸してくれた人達を護る為に死を選ぶ。
私だけで良い。
私だけ処刑すれば良い。
アルバートが憎み恨むのは私なんだから…。
馬車の隣を並走するようにコナーの背中が見える。全身痛くてもお兄さんが選んだのはコナーだった。
さっきは凄かった。怪我人のコナーを馬車に乗せようとしたらお兄さんが暴れだした。他の騎士が近寄ろうとしただけで前足をあげ後ろ足で蹴り、結局コナーがなだめた。
「こいつも俺と一緒で己の主は一人なんだよ、一生な」
そんなお兄さんの後を付いて行くのはボビーが乗った弟。
こっちは従順なのに…。
「リリーアンヌ様、少し眠って下さい。ずっと寝ていませんよね。昨日もずっと起きていらしたではありませんか」
「そうね…。少し眠ろうかしら」
「はい、そうして下さい」
私は馬の兄弟を見ながら目を瞑った。
2
お気に入りに追加
800
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
恋した殿下、あなたに捨てられることにします〜魔力を失ったのに、なかなか婚約解消にいきません〜
百門一新
恋愛
魔力量、国内第二位で王子様の婚約者になった私。けれど、恋をしたその人は、魔法を使う才能もなく幼い頃に大怪我をした私を認めておらず、――そして結婚できる年齢になった私を、運命はあざ笑うかのように、彼に相応しい可愛い伯爵令嬢を寄こした。想うことにも疲れ果てた私は、彼への想いを捨て、彼のいない国に嫁ぐべく。だから、この魔力を捨てます――。
※「小説家になろう」、「カクヨム」でも掲載
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる