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46 反対派 ②
しおりを挟む私は毎日第二夫人を反対した当主と一人一人会っている。
「妃殿下急にどうされました」
「エンナリー侯爵、貴方が第二夫人反対?貴方は私を排除したいと思っていたわ」
「まさか、王妃は妃殿下だけです」
「そう?私はナーシャ様でも王妃になれるとそう思っているわ」
「ナーシャ妃でも王妃にはなれるでしょう。ですがナーシャ妃は第二夫人にしかなれませんよ」
「それでもナーシャ様にはフォスター公爵が付いているわ」
「フォスター公爵は立派な方ですが王妃の代わりにはなれません」
「ふふっ、そうね彼は男性だもの」
私は笑顔でエンナリー侯爵と話をする。
「フォスター公爵は陛下の相談役として実力はあると思いますが第二夫人は違う」
「ええ私もそう思うわ。フォスター公爵の腕は私も買ってるの。でも第二夫人は違うわ。第二夫人ではなくナーシャ様を王妃にするべきだった、とね。
やっぱり私では駄目ね。王妃は荷が重いわ」
「よく言いますね」
「あら、これでも私頑張っていたのよ?」
「頑張りは認めますよ。だから私は第二夫人を反対したんですから」
「あら、賛成してくれても良かったのよ?」
「妃殿下!貴女は王妃としての自覚をお持ちですか!」
「自覚は持っているわ。それでも実力はまた別のものでしょう?」
「妃殿下、貴女がそんなだから第二夫人と声があがるんですよ」
「そうね…、でも私は貴方が言うように小娘だもの。そうでしょ?」
「何を、」
私は侯爵ににこっと笑った。
「小娘ができる事はたかが知れてるわ。頑張って虚勢を張るくらい。第二夫人は認めない、第二夫人を娶ったなら離縁してくれ、それくらいよ?」
「妃殿下は悔しくないんですか?」
「王妃の実力がないのも事実だし、陛下の寵愛を受けているのはナーシャ様だもの。私にどうしろと言うの?
王妃の椅子にしがみついてただ座っていろ、そう言うの?」
「それくらいは護って下さい。何の為に反対派になったとお思いですか」
「何の為に、ね……。ふふっ、私の為、かしら?」
「そうです」
侯爵、貴方はまだまだね。人は嘘をつく時、いつもとは違う雰囲気を出すわ。笑ってる頬が少しぴくっと動いたり、眉が動いたり、完全に隠す事は出来ないわ。
貴方が反対派の動向を調べる為に反対派になったのは分かっているわ。フォスター公爵の腰巾着、昔はそう呼ばれていたんでしょ?
お互い当主になり表向きは関わりがないように接しているけど、裏ではがっちり手を組んでいる。
私が調べないと思った?
私は真っ直ぐ侯爵を見つめる。
「今日は反対派かどうかの確認ですか?」
「まさか!たまたま近くを通ったから寄っただけよ?侯爵家のワイン、私も好きなの。だからたまたま近くを通ったから侯爵の事を思い出したの。
私が寄ったら迷惑だったかしら…」
私は少し寂しそうな伺うような顔をして侯爵を見た。
「そうでしたか。別に迷惑ではありませんよ。私も妃殿下と話が出来て良かった」
「侯爵も?私もよ。一度ゆっくり話がしたいと思っていたの。第二夫人の事は娶った以上もう過ぎた話だもの。今更何を言っても仕方がないでしょ。
それでも侯爵が私の味方になってくれた、その事実が私は嬉しかったの。私はまだまだ小娘だから、これからも侯爵には力を借りるかもしれないわ。
また頼っても良いかしら」
私はすがるような顔をして侯爵を見た。
「勿論です。私で良ければ妃殿下の力になりましょう」
「侯爵がいたら百人力ね」
私は笑顔で侯爵を見た。
「ならまずは王妃の仕事をしなさい。少しづつ周りに認められていきましょう」
「王妃の仕事ね…。それも私がしないといけないの?」
「当たり前です。王妃は貴女だと周りに知らしめるのです」
「私にできるかしら」
「できるできないではなくやるんです」
「そう…、私なりに頑張ってみるわ」
「私も力になりますから」
私が王妃の仕事をしていない、それを知っている。そして私に今までみたいに王妃の仕事をさせたい。
アルバートが今切羽詰まっているのは知っている。フォスター公爵が手を貸すと言っても手を貸すのは自分の理に敵うものだけ。それ以外には手を貸さない。
私が今までさばいていた書類は半分。ボビーも手伝いアルバートを支えていた。
アルバートは今、私も失いボビーも失った。タイラーの助言、それも失った。
机の上に山積みになった書類
アルバートの印を待つ書類は数ヶ月分事務官の所で止まっている。寝ずに書類をさばいても到底追いつくような量じゃない。
第二夫人のナーシャ様が手伝っている様子はない。ボビーの代わりに付いた執事もフォスター公爵の息がかかった者。ボビーほど優秀ではない。
それでもそれを選んだのはアルバート自身。私にはもう側で支える事も手伝う事も出来ない。
アルバートが一人で頑張るしかないの。
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