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41 タワーム公爵
しおりを挟む次の日私はタワーム公爵家に来ている。目の前で怖い顔をしているのはタワーム公爵。
「公爵、世間話をしても仕方がないわ。単刀直入に言わせてもらうわね。
謀反はやめなさい」
「妃殿下、どうしてそれを、」
「私も独自に情報くらい掴むわ」
「それは出来ません」
「フォスター公爵へ復讐する為?」
「それもあります」
「アルバート陛下を排除する為?」
「それもあります」
「ジェイデン殿下を隣国へ行かせた私への復讐も入っているのかしら」
公爵の膝の上に置かれている握り拳に力が入った。
「そう、分かったわ」
「どうしてジェイデン殿下を隣国へ行かせたのです。あの無能のアルバート殿下を行かせれば良かったんだ。貴女も分かっていたはずだ。アルバート殿下は王に相応しくないと。
今のアルバート王を見てみなさい。フォスター公爵の傀儡になったアルバート王に誰がしたとお思いか」
「私ね」
「そうだ。ジェイデン殿下ならこうはならなかった。ジェイデン殿下も貴女のお父上も王に相応しい者は王位に興味がなく、王になるのは無能ばかり。
貴女も貴女だ。王妃の座に収まり影から手を回す。善はアルバート王の手柄に、悪は全て自分に向けさせる。
……………本当に、貴女はお父上に良く似ている……」
公爵は私を真っ直ぐ見つめる。
「リリーアンヌ王妃殿下、私は貴女を王にしたい。この命掛けて貴女を王に私がする」
私も公爵を真っ直ぐ見つめる。
「アルバートは死ぬわ。私が止めなければ直に帝国がこの国へ攻めてくる。幼い頃交わした約束を守る為に…」
「それは、」
「だから謀反を起こす必要はないの。アルバートは殺される。第二夫人のナーシャもフォスター公爵も、ね。そしてこの国は滅びる」
「妃殿下」
「アルバートやフォスター公爵がどうなろうと私にはどうでもいい。それでも関係ない民は違うわ。
だから公爵、
私とアルバートが離縁出来るようにフォスター公爵へ助言してほしいの」
「離縁してどうするおつもりですか」
「帝国へ行き止める。それしか今は方法がないの。皇帝は既に準備をしているわ。声明文を出したら一気に攻めてくる。もう時間がないの」
「ですがそれはもう戦です」
「ええ、戦よ。だから戦になる前に止めるしかないの。帝国に戦いを挑んで勝てる訳がない」
「はい。武力も人数も帝国は桁違いだ。皇帝の守護神と呼ばれる赤の鬼神、青の鬼神、黄色の鬼神、白の鬼神、その者達が道を開け最後に黒い悪魔が出て来たら国は滅ぶと言われています」
「ええ、だから止めないといけないの。今回は黒い悪魔が先陣きって出てくるから…。
止める方法は離縁しかないの。私は王妃には相応しくないと廃妃にするように声をあげてほしいの。元々悪女だの言われているんだから大丈夫だと思うけど、王の権限を勝手に使ったとか、男を誑かしたとか、そうね、子爵の領民を帝国に奴隷として売った、そう噂を流してほしいの」
「妃殿下、それは出来ません」
「大丈夫、そのように私は動いてきた。実際王の権限も使ったわ。それに私付きのローレン隊長には私の情夫のように振る舞ってもらった。それに子爵領の領民を帝国へ行かせたのは本当なの。その時奴隷商人を雇ったわ。だから大丈夫」
「分かりました。そこまで言うのなら悪名を広めましょう」
「ありがとう。廃妃されれば離縁と同じ。私は直ぐに帝国へ向かい止める。
だから貴方はできるだけ噂を大きくしてほしいの」
「分かりました。ですがそこまでして護る価値はアルバート王にありますか?」
「今のアルバートにはないわ。それでも以前のアルバートなら…。
それにジェイデンの王の器、それに伴う脅威を遠ざけたのは私だもの。アルバートを王に、幼い頃からアルバートと共に目指した夢だったから……。
だからアルバートの王位を確実にし王として皆に慕われ敬われる存在に、その為なら私は悪にもなれる。私の悪名が広がり私が廃妃されてもアルバートが王ならそれでいいの。アルバートの側で支え護る者は私でなくても、いいのよ…。私の死でアルバートが変わってくれれば」
「妃殿下?」
「ん?なあに?」
「妃殿下は何を考えているんですか?」
「ふふっ、私は貴方を止めたいだけよ。
それに、私はこの国をこの国の民を護りたいだけ。それに私的ないざこざで関係ない民が巻き込まれるのは違うもの」
私はタワーム公爵家を後にした。
幼い頃の約束を守る為にお兄様は攻めてくる。でもそれは私的な事。
アルバートが王として誓った約束。王になった今、例え忘れてもいても、例え口約束だったとしても、お兄様はアルバートを容赦しないと思う。それだけあの約束は重要な事だった。
お兄様の善悪ははっきりしているから。悪になったアルバートに死以外の選択はない。
ジェイデンがグレイソンがもしアルバートの敵討ちをしようものなら返り討ちにあうだけ。
皇帝の守護神の力を私は知ってる。力では勝てない。もし可能性があるなら、コナーだけ。
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