悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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閑話 フォスター公爵視点

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イーサンがメイドを襲って謹慎処分になった。


「イーサン!お前は何をしでかしたのか分かっているのか!」

「私は潔白です」

「潔白かどうかは関係ない!目で見たものが全てだ!

お前がベッドの上でメイドの上に乗っていた、それが事実だ」

「ですが、」

「あの小娘の口車にまんまと引っ掛かりやがって、この愚息が!」

「すみません父上…」

「お前はアルバートから外れろ」

「ッ」


あの小娘、やってくれたな。



俺は小娘に面談を申し込んだ。返答はこうだ。


「メイドは寝ている所をいきなり子息に襲われ心を痛めていて、フォスターと言う名を聞くだけで恐怖で震えています。私付きのメイドは二人しかいないので、今はメイドの心を優先したいと思います。

体調が悪く倒れたメイドを私のベッドで寝かせましたが、まさか私付きの騎士ではない公爵の子息が私の私室に勝手に入ってくるとは思いませんでした。陛下の私室ともナーシャ様の私室とも離れた私の私室にですよ?

公爵と子息は別だと私は理解していますが、メイドにはフォスター公爵もフォスター公爵子息も同じフォスター家。

今はまだお会いする時期ではないと私は思います。メイドの心が癒えた時に必ずお会いしましょう」


律儀に手紙をよこして来た。

メイドと言っても若いメイドじゃないのに何が心を痛めただ。

それでもこちらが強引にする事はできない。イーサンがベッドの上でメイドの上に乗っていたのは事実。それは他の近衛隊の騎士達も見ている。

状況だけみれば女性を襲っている、確かにそう見える。それに立場の弱いメイドだ。メイドくらいと俺は思うが、騎士達の中には立場の弱いメイドだから護らないといけないと思う奴もいる。

父親というよりは公爵の立場が邪魔をする。

公爵はメイドを軽視している

そう思っていてもそう思われてはいけない。


イーサンを排除したか、あの小娘め!


俺は小娘に付けている影を呼んだ。


「お前はどうして止めなかった」

「部屋が暗く分かりませんでした」

「あの小娘に張り付いて何か変わった事はあるか」

「朝王宮を出たら夜まで帰って来ません。その間はご実家のルヴェンド公爵家から動きません」

「中で何をしてる」

「ルヴェンド公爵家の中に入るのは不可能です。あそこは警備にすきがない。それに決まった業者としか取引をしていないので業者になりすます事も出来ません」

「チッ」

「ですが一歩も邸の外には出ていません」

「小娘め、逃げ込みやがったな。王宮に居れば王妃の仕事をしないといけない。放棄しているように思えるが、前王妃は何もしなかった。ただ優雅に茶を飲んでるだけだった。前王妃がしなかった仕事をあの小娘だけに放棄したなどと言える訳がない。この国の阿呆共は王妃は政務はおろか何もしないものだと思っている。前王妃は口も手も出さなかったが、今の小娘も口も手も出していない。そんな小娘に何が言える!

前王妃はよくて自分では駄目な理由を言えと小娘が言ってくるのが手に取るように分かる。

優雅に茶を飲む場所を王宮の私室か実家か、その違いだが、実家を責めれば王妃の私室の話になる。歴代王妃の私室は陛下との続き部屋。

クソ!ナーシャをあんな部屋に入れるべきではなかった。第二夫人が王妃の私室を使っているならアルバートは王妃より第二夫人のナーシャを王妃だと認めた事になる。なら王妃の仕事はナーシャがするべきとなるだろう」

「私は妃殿下の監視に戻ってもいいですか?」

「ああ、何か探れたら探ってくれ」

「承知しました」


影が去り、

あの小娘、食えないやつだとは知っていたが、ここまでとはな。


アルバートを操るのは簡単だった。褒め称え少し助言すれば良い。無能は無能なりにこれからも私の手のひらで転がせばいい。上手く操るのは容易い事だ。王座などあの無能にくれてやる。私は実権さえ握れればそれで良いからな。


だが何一つ上手くいかない!

息子といい娘といい、

何の為に小娘が留守にする時を見計らってアルバートに近付きナーシャを近付けたと思っている。

アルバートとの間に子も出来ない

アルバートは未だにナーシャの腹に子がいると思っているが、それも時期にいないと分かる。腹が大きくならない妊婦はいない。

ナーシャに別の奴と子を作らせるか

それも駄目だ。王族は銀色の髪の碧眼、この国で王族の血を引くものしか、

グレイソン!

そうだ、グレイソンがいる。ナーシャとも年は近い。グレイソンと子を作らせアルバートの子とすれば良い。

閨教育で年上のナーシャが相手をすれば良いじゃないか!


後日グレイソンに打診をしたが断られた。


「騎士になる俺に閨教育は必要ない」


こうだ。

頑なに拒否をするグレイソンに無理矢理する訳にもいかない。

俺の信用も信頼も全てが水の泡になる。


なら、隣国へ行ったジェイデンなら、

それも駄目だ

ジェイデンほど食えないやつはいない。ジェイデンが王位を継いだのなら俺は近寄る事も出来なかった。公爵として側には行けるが懐には入らせなかっただろう。

気質がルヴェンド公爵にそっくりだ。


ナーシャが身籠るのを待つしかないのか…。


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