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40 謀反の企て
しおりを挟むイーサンとイーサン隊の騎士達の監視が無くなり、これでようやく私は第二夫人を反対した当主と会う事が出来た。
「急にごめんなさいね、ダースト侯爵」
「妃殿下」
「貴方と話すのはあの夜会以来ね」
「はい」
「私の悪いの噂を流した貴方が第二夫人反対とは思わなかったわ」
「その節は申し訳ありませんでした」
「いいのよ、別に間違ってないわ」
「妃殿下、悪女のふりをするのはおやめ下さい」
「何を言ってるのか分からないわ」
「私は陶器収集が趣味です。私も子息達を秘密裏に助け出そうと伝手を使い調べました」
「そう、それで?何か分かったのかしら」
「この国では死んだ事になっていますが、子息達の亡骸は見つかっていない」
「野に放ったから、野犬にでも食べられたんじゃないの?」
「私は見ました」
私は微笑んで侯爵を見る。
「何を見たの?」
「子息達が街を歩いている所を」
「あら、人違いではないの?」
「妃殿下、私は子息の家庭教師をしていた時期がありました。見間違える訳がありません」
「そう」
私は目を一度瞑り目を開けた。
「それを誰かに言った?」
「言いません。当たり前です、言えません。言ったら今度こそ子息達は殺される」
「なら良かった」
「逃したんですね」
「少し違うわ。彼等は別人になったの。それだけよ」
「どこで暮らそうが生きていてくれれば、それだけで良い」
「それが第二夫人を反対した理由?」
「それもありますが、通行料、あれも調べれば直ぐに分かります。あれは陛下が行ったもの、妃殿下は関係ない」
「それは分からないわよ」
「いえ、議会で通った議案です。そして議会に王妃とはいえ女性は入れません」
「そうね。そんなの調べなくても直ぐに分かるはずなのよ。それでも誰も調べない。なぜ?それは通行料を賛成したからよ」
「はい、その通りです」
「賛成してどうなった?一人の尊い命が犠牲になったわ」
「ッ、はい……」
「目に見えるものに頼りたいのは分かる。それでも目に見えないものを護らないといけないの。
ダースト侯爵、教えてほしいの。
誰が謀反を企てているの?」
私は侯爵から目を反らさず見つめる。
侯爵は一度息を吐いた。
「首謀者はタワーム公爵です。それに賛同する者達はブランカ侯爵とラミート伯爵です」
「でもタワーム公爵は賛成派よね」
「はい」
「賛成派の彼がどうして?」
「妃殿下はまだお生まれになっていない昔の事ですが、フォスター公爵の奥方は元々タワーム公爵の婚約者。フォスター公爵は無理矢理婚約者を奪いました」
「奪った?」
「強姦に襲わせ傷ものにし娶りました。実際襲われたのは馬車に同乗していたタワーム公爵の妹君、そして妹君は殺されました。それに同じく同乗していた執事見習いも殺されました。執事見習いはタワーム公爵の幼馴染みでした。タワーム公爵は全てフォスター公爵に奪われました。婚約者も妹も幼馴染みも」
「それでも私から見てもあの二人は仲が良いと思っていたんだけど」
「表向きは、です。タワーム公爵はフォスター公爵に今でも憎悪を抱いています。仲良くしているのはいつか復讐する機会を狙っているからです」
「それでも謀反は関係ないじゃない。直接公爵本人に復讐すれば良いだけの話でしょう」
「初めはそのつもりだったと思います。彼に失くすものはありません」
「そうね、彼は独り身で跡継ぎはいない」
「ええ。ですが、アルバート王が王太子になった時点でこの国は終わりました」
私は目を瞑った。
「フォスター公爵がアルバート王の相談役になってもならなくても、です。タワーム公爵はジェイデン殿下に王太子になってほしかった。ですがジェイデン殿下は隣国へ行かれた。
タワーム公爵は妃殿下のお父上、ルヴェンド公爵を王にするつもりです」
私は目を開けた。
「そう…」
「そしていずれ貴女を女王に、それが彼の望みです。貴女は妃殿下で収まる器ではないと。
今の王宮はフォスター公爵の手の内。第二夫人もまた公爵の娘。
タワーム公爵はずっと機会を待っていた。第二夫人が引き金になったのは事実です。フォスター公爵の傀儡になったアルバート王ごと排除しようと。そして今回がその機会。フォスター公爵を葬り去り復讐する絶好の機会なんです」
「そう、ありがとう」
「妃殿下、どうするおつもりですか」
「謀反を止めるわ」
「どうして。妃殿下の扱いを貴族が知らないとでも思っておいでですか」
「そうね。それでも謀反を起こしてどうなるの。成功する確率は少ないわ。それに関係ない民が巻き込まれる。それだけは避けないといけないの。
侯爵、これから何が起こっても私を信じてほしい」
「分かりました」
「貴方の手を借りる事もあるわ」
「私で力になるのであればなんなりと」
「ありがとう。
それより貴方は困った事はないの?フォスター公爵に色々されたんでしょ?」
「ルヴェンド公爵にもう助けて頂きました」
「なら良かったわ」
「妃殿下、無茶だけはどうか、どうかおやめ下さい」
「大丈夫よ、無茶はしないわ」
私はダースト侯爵家を後にした。
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