悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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33 ルシーとの別れ

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毎日帝国へ行きたいという家族が邸に訪れた。コークスを待って1家族づつ帝国へ向かう。


「俺は家族とは行かない」

「彼女の領地へ行くのね」

「ああ」

「ご両親や兄妹にもこの先一生会えないわよ、それでもいいの?」

「ああ」

「ご両親は納得しているの?」

「お前の人生だ、好きに生きろって言われた」

「そう、分かったわ。今後もし彼女と別れても、領地で迫害を受けても、耐えなさい。それが貴方の選んだ道よ」

「分かってる。自分の出した答えには責任を持つ」

「もし耐えれないと感じた時は私に手紙を出しなさい。力にはなれると思うから。貴方の幸せを願っているわ。彼女と幸せに暮らすのよ?」

「ああ」


笑顔で領地を去って行った。

違う日、一人の女性が邸にやって来た。


「あの、帝国でも針子として働けるでしょうか」

「貴女はお針子さん?」

「はい。隣の領地の洋服店で働いています」

「帝国にも洋服店はあるわ。お針子さんなら帝国でも働ける場所はある。それでも今の店とは違って厳しいかもしれないし、やりにくいかもしれない。それはどこで働いても同じだけど、仕事の内容、人間関係、全く同じの所はないわ」

「はい、それは分かっています」

「ご両親と離れるのが嫌?」

「はい。…会えなくなるのは嫌です」

「そうよね。さっきも言ったように帝国でも洋服店はあるわ。ただ、貴女達が行く領地には洋服店はないの。隣の領地にはあるかもしれないけど、それも、ごめんなさい分からないわ」

「そうですか…。それでも帝国のどこかにはありますよね?」

「それは勿論」

「それなら良いです。家族と帝国へ行きます」

「分かったわ。働いている所を辞めさせて帝国へ行かせてごめんなさい。新しい土地で慣れないだろうけど、いつか帝国へ来て良かったと思ってくれると私は嬉しい。初めは大変だと思うけど、それでも諦めないで。諦めなければいつか貴女の糧になる。私はそう信じてる」

「はい、ありがとうございます」


彼女はご両親と一緒に帝国へ旅立って行った。

若者の中でこの国に残る者は領地を後にした。


残す家族はルシーの家族だけになった。きっと最後まで残ってくれていた、私の為に…。その気持ちがとても嬉しい。


「おねえちゃん」

「ルシー」


走ってくるルシーを抱き上げた。


「ちょ、ちょっとルシー、駄目よ、おりなさい」

「おねえちゃんだめだった?」

「どうして?私がルシーを抱き上げたのよ?駄目だったら抱き上げないわ」

「うん」


嬉しそうに笑うルシー。ルシーの笑顔も今日で見れないかと思うと寂しい。

ルシーは毎日邸に来て私とお喋りをする。丘まで手を繋いで歩いて行った事もある。領地に咲いてる花を摘んで花冠を作ったり、絵本を読んだりして一緒に過ごす事が多かった。

一家族一家族見送り、申し訳ない気持ちになった。最後まで「許さない」「当主様を返せ」そう言われ辛い思いもした。それでもルシーの笑顔で救われた。


「おねえちゃんさみしくないよ。だってさよならじゃないもん」

「そうね、さよならじゃないわ。またいつか会いましょうね」

「うん」

「お姉ちゃんいつか帝国まで会いに行くから」

「うんまってる」

「帝国でも元気に過ごしてね。それにルシーの笑顔は皆を幸せにするわ。だからルシーはいつも楽しんで過ごしてね。走り回って、そうね、馬に乗るのも良いかもしれない。お勉強だって大人になったルシーには必要になるかもしれない。

でもね、どんなルシーでもルシーはルシーなの。そのままで良いのよ」

「うん。おねえちゃん」

「なあに?」

「わらえなくてもわらっていてね」


ルシーはぎゅっと私に抱きついた。


「おねえちゃんがつらいとわたしもつらい。おねえちゃんがかなしいとわたしもかなしい。おねえちゃんがわらっているとわたしもわらえる。だからおねえちゃん」


ルシーは顔をあげ涙をためた目を私に向けた。


「しんじゃいや~」


声を出して泣いてるルシーを私も抱きしめ返した。


「大丈夫よ、死んだりしない。大丈夫」

「だめよ?」

「うん、いつかまたルシーに会いたいから」

「わたしもおねえちゃんとあいたい」

「お姉ちゃんこのままルシーと帝国に行こうかな?帝国へ行ってルシーと暮らすの」

「そうしよ。そのほうがいい。ね?だからそうしよ?」

「そうね。お姉ちゃんが旦那様と離縁したらルシー一緒に暮らしてくれる?」

「うん」


涙を流しながら笑顔を見せるルシー。

ルシーとお別れし、ルシー達家族は帝国へ向けて旅立って行った。私は馬車が見えなくなるまで見送った。


アルバートと離縁、それも良いかもしれない。私が離縁すれば何もかも丸く収まる。お母様やライアン達もこの国に帰ってこれる。家族でまた一緒に暮らす事ができる。

アルバートの事は愛してる。それにアルバートを支えたい、側にいたい、その気持ちは嘘じゃない。それでもそれはアルバートがアルバートのままなら。

フォスター公爵が今の王宮を何処まで自分の物にしているか分からない。アルバートもきっと変わった。

変わったアルバートを支えるのは私なの?


それに、




私ももう疲れた…



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