26 / 107
25 24歳 ⑩
しおりを挟む王宮から数分で公爵家へ着き、お父様が待つ書斎へ向かった。
書斎の中には私の家族、伯父様家族が集まっていた。
「お父様お待たせしてすみません」
「本題に入ろう。義兄上とも話し合ったが、俺と義兄上は残る。使用人にも聞いたが俺達と共に、と言う者達は邸に残る」
「分かりました」
「ライアンとカーターは帝国の学院に留学させる手続きは済んだ。帝国での暮らしは伯爵家があるから問題はない。アリーナもライアンに付いて行かせる。勿論数人の使用人もだ。使用人の家族には領地へ行って貰う事になるが、それも了承済みだ。
ただ、」
「僕は残る」
「タイラー、貴方には学びたい事があるでしょ?留学して勉強して。この国に残ったら最悪の場合があるの。だから言ってるのよ?」
「そんな事くらい分かってる。弟のカーターはライアンと一緒に留学させるけど僕は残る。リリーアンヌに何を言われてもそこは譲れない」
「タイラー、あのね、」
「ねぇリリーアンヌ、僕はリリーアンヌがいたから、僕を認めてくれたから今もここに居る。なら最後まで一緒にいたいよ」
今のタイラーに何を言っても無駄ね。タイラーにはこれから説得するしかないわ。
「それでだ、アリーナ達は数日後に帝国へ向けて出発させる」
「分かりました。伯父様、伯母様、面倒事に巻き込む形になりすみません。伯父様にはご迷惑がかからないようにしますので。伯母様もカーターと一緒に帝国へ行ってもらう形になりすみません」
「私は残るわ。アリーナにカーターの事はお願いしたの」
「伯母様」
「カーターとも話し合った。カーターも納得し帝国へ留学するわ。私は最悪の場合、離縁すれば良いもの。私は最後まで見届ける。公爵夫人が二人も居なくなるのはこちらのすきを見せる事になるしね。
リリーアンヌ、本当はアリーナも残りたいのよ?それでもライアンとカーターには帝国に爵位がある伯爵夫人が必要なの。それにライアンはこの国の王位継承権を持ってる。だからこそライアンを護る為にアリーナは帝国に付いて行くの。アリーナのためにも私は狸公爵と戦うわ」
「はい」
お母様は私の隣に座り私を抱きしめた。
「母様は愛しい娘の力になりたい。それは本心よ?出来れば残りたい。でもね、最悪の場合を考えてライアンを生かす事が貴女の力になれると思ったの。
あの公爵は一筋縄では行かない。だから気をつけて。
愛してるわリリーアンヌ、私の可愛い娘」
「お母様、私もお母様の娘に産まれて良かったです。くれぐれもお体には気をつけてお過ごし下さい」
私はお母様に抱きついた。
公爵家を出る前に庭で花を摘んだ。その花を荷馬車で眠る子爵の上に置いた。
お父様達に見送られ馬車に乗り込もうとした時、
「リリーアンヌ様、私をリリーアンヌ様のメイドにして頂きたいんです」
「マイラそれは駄目よ。マークが居るでしょ」
「息子も了承しています。それに奥様がマークをライアン様の従者にと帝国へ一緒に連れて行って下さると。帝国で従者になる学校にも通わせて頂けるんです。今は皆様に文字を教わり頑張っています。
それにこの国にはいたくないと…」
「そう、ね……。それなら尚更貴女も帝国へ行きなさい」
「いえ、私はこの国に残りたいんです。それにリリーアンヌ様のお力になりたいんです。どうか、どうかお願いします」
私はマイラの側にいるマークと向き合い、
「マーク、お母さんと離れるのは嫌よね?一緒に帝国に付いて来てほしいわよね?」
「リリーアンヌ様、俺はこの国が嫌いだ。こんな国なくなればいい」
「そうね」
「でも母さんはこの国が好きだ。それにリリーアンヌ様が好きだ。それに俺もリリーアンヌ様とここの人達は信用できる。俺はライアン様の為にこの命をかけて側に居る事を選んだ。母さんは自分の命をかけてリリーアンヌ様の側に居る事を選んだ。それが俺と母さんが自ら選んだ選択なんだ。
リリーアンヌ様、母さんをお願いします」
「最悪の場合、もう会えなくなるかもしれないのよ?帝国からこの国へ帰って来れないかもしれない。それでも良いの?」
「俺と母さんは平民だ。なら自分が仕える主人は自分で選びたい。自分の命をかけたいと思える主人が見つかった。ならお互いに後悔のしないように生きたい」
真っ直ぐ私を見つめ話すマークの顔はとても生き生きしていた。その姿に私は涙が出そうになった。
「分かったわ。マイラを私のメイドとして雇います。お母様達と帝国へ行く途中に子爵領があるからそこに来て。それまで親子の時間を大切にしてね」
「分かりました」
私はマイラに向き直し、
「後悔する事になるかもしれないわ、それでも良いのね?」
「後悔はリリーアンヌ様のお側に居ない事です」
「そう、分かったわ。
マイラ、私のメイドになってくれる?」
「はい喜んでお世話させて下さい」
ルークも合流し私達は子爵領へ向けて旅立った。
❈ 「悪女と呼ばれた王妃」短編から長編に変更します。
思いの外話が長くなりそうです。変更をしてすみません。
アズやっこ
0
お気に入りに追加
800
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
恋した殿下、あなたに捨てられることにします〜魔力を失ったのに、なかなか婚約解消にいきません〜
百門一新
恋愛
魔力量、国内第二位で王子様の婚約者になった私。けれど、恋をしたその人は、魔法を使う才能もなく幼い頃に大怪我をした私を認めておらず、――そして結婚できる年齢になった私を、運命はあざ笑うかのように、彼に相応しい可愛い伯爵令嬢を寄こした。想うことにも疲れ果てた私は、彼への想いを捨て、彼のいない国に嫁ぐべく。だから、この魔力を捨てます――。
※「小説家になろう」、「カクヨム」でも掲載
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる