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21 24歳 ⑥
しおりを挟む次の日私は公爵家へ向かった。
馬車を降りると執事が慌てて走って来た。
「急にどうされました」
「お父様に相談したい事があって」
「分かりました。直ぐに呼んで参ります。書斎でお待ち下さい」
私は書斎へ向かいお父様を待った。
暫くしてお父様が書斎に入って来て、
「何かあったのか」
「はい。フォスター公爵が側室をと考えているみたいです」
「それだけは絶対に認められない。何の為にお前を幼い頃からアルバートに付けていたと思う」
「はい。ですがこちらも手を打たないといけません。あの公爵は何が何でも通すでしょう。だから通した後の事です。今度は私を排除するでしょう。
お父様、お母様とライアンと使用人を連れて帝国へ逃げれる準備を。出来れば伯父様達も」
「俺は残る。だがライアンだけは帝国へ留学させる。ライアンに付いてアリーナも行かせる。アリーナとライアンの世話係として使用人も連れて行かせる」
「お母様が一緒ならライアンも安心できます。それと、タイラーとカーターも一緒に留学させて下さい」
「義兄上に聞いてみないといけないが、おそらく二人を留学させる事になると思う。
お前がそこまで言うのには何か理由があるのだろう」
「私にはまだ子がいません。ジェイデンが隣国へ行って、陛下の不調、アルバートを王にと子を作る時期ではありませんでした。その間に飲んでいた避妊薬の影響もあるかもしれませんが、もうそろそろと思っていてもなかなか授かりません。公爵はそこを押し通すと思います」
「だろうな。だが側室は持たない、それがこの国の法だ。もしお前達に子が出来なければグレイソンの子を、ライアンの子を、そう決められている。法を変える事は出来ない」
「それでも私は貴族達から恨みを買っています。それに今は諸事情で私を監視してほしくなくて遠ざけましたから」
私は以前からイーサン隊長に監視されている。今は塔に子爵が居る。だからイーサン隊長を私から遠ざけた。
イーサン隊長の指示で私を見張る騎士達はローレン隊の騎士達が見つけ追い払っている。ローレン隊の騎士達には隠密の訓練も受けさせているから。
「俺は義兄上に連絡する。お前はどうする」
「一週間後にまた寄ります」
「分かった。それまでに俺も手を打とう」
私は公爵家を出て孤児院に寄った。
「リリーアンヌ様~」
「みんな元気にしてた?お勉強はもう終わったの?」
「うん。だから一緒に遊べる?」
「遊べるわよ。さあ今日は何をするの?」
「追いかけっこ」
「絵本読んで」
「お花の冠」
「なら先ずは追いかけっこから始めましょう。さあみんな逃げて~」
キャ~と言う声が響き私と騎士達で子供達を追いかける。一人一人追いかけて捕まえる。
「アンネ捕まえた」
「つかまっちゃった。おねえちゃん、」
幼いアンネは泥だらけの手で私のドレスを引っ張った。
「こら、アンネ!泥だらけの手で妃殿下のドレスを引っ張っては駄目です。アンネ、謝りなさい。すみません妃殿下、どうお詫びすれば…」
「シスター、泥は洗えば取れます。子供は子供らしく遊ぶ、それが一番ですよ。
シスターも毎日大変だと思いますが、ここに居る子供達にとってシスターはかけがえのない存在です。シスター達の負担が増えるばかりでいつも申し訳なく思っています。
シスター、シスターは私にとってもかけがえのない人です。これからもこの子達の幸せを一緒に祈りましょう」
「はい、妃殿下」
「ねぇねぇ、おねえちゃん」
「なあに」
「くびにかかってるきれいなのみせて」
「これ?」
私はネックレスを外しアンネに見せた。
「きれい」
「そうね。これは宝石と言うの。きらきら輝いて綺麗よね」
「うん。わたしきめた!おねえちゃんににあうおようふくをつくる。それからこういうのもつくりたい」
「ならお針子さんかしら」
「おはりこさん?」
「お洋服を作る人よ。アクセサリーを作る人はアクセサリー職人ね」
「どうすればなれる?」
「まだアンネは幼いから針を持つ事は危ないの。針が刺さるとチクンって痛いのよ?だから今はどんなお洋服が作りたいか絵を描いてみたら?アンネが着たいと思った服や私に似合うと思った服の絵を描くの。どう?出来そう?」
「うん!できそう」
「なら今度また遊びに来る時は紙と色鉛筆をプレゼントするわ」
「ほんと?」
「今日はぬいぐるみにしちゃったから」
「ぬいぐるみもうれしい。まいにちだっこするね」
「ええ、可愛がってね」
追いかけっこが終わり、男の子達は騎士達に剣を習い、女の子は絵本を読む私の周りに集まり花の冠を作り、私の頭に乗せてくれた。
「王妃様…、」
「どうしたの?マリー」
「私も騎士になりたい。でも女の子はなれないって皆が言うの」
「そうね、女の子には厳しい世界かもしれない。それでもなりたいと思う気持ちが強ければなれると私は思うわ。それに女性騎士は他国には居るのよ。体力や体格は男性には負けても戦う事が出来ない訳じゃないわ。自分に合った戦い方を見つけるのは簡単じゃないけど、不可能ではないの。マリーに合った戦い方を見つければ女だからと馬鹿にする人はいないわ。
ただ、女性だから厳しい世界ではないの。男性だって騎士は厳しい世界なのよ?女だから駄目ではなくて、努力をしないのが駄目なの。それを忘れないで、良い?」
「はい」
お菓子を配りプレゼントを配り私は孤児院を後にした。
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