悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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20 24歳 ⑤

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闇夜に紛れ子爵家一族が街へ着いた。私はローレン隊長とローレン隊と一緒に街まで行き合流した。


「隠し通路を通って塔の牢屋へ行きます。暗いので気をつけて」


ローレン隊長や騎士達が松明を持ち道を照らす。私の前を歩くローレン隊長に付いて進み塔の牢屋の裏口へ着いた。裏口から中に入り、階段を登り牢屋に入っている子爵の元へ着いた。


「お前達…」

「あなた……うぅ…」


ローレン隊長が牢屋の鍵を開け、


「子爵、牢屋越しではなく外で対面したらどう?」

「妃殿下」

「ここには私達以外来ないし塔の中だけは好きに過ごしたらいいわ」

「ありがとうございます」

「明日また様子を見に来るけど私の事は気にしないでゆっくり過ごして」


私はローレン隊長と騎士達と階段を下りた。泣き声が響き、胸が締め付けられる思いがした。


「妃殿下どうするおつもりですか」

「逃げ出したら逃げ出したで良いし、処分を受けるなら受けるで良い。牢屋に入れ毒を飲ませたと思わせれば良いだけだもの。

ローレン隊長、貴方には私の情夫役になってほしいの。奥様にもその事は伝えて。噂に惑わされないでって」

「分かりました。妻は俺が妃殿下に忠誠を誓っているのを知っているので大丈夫です」

「貴方私に忠誠を誓って良いの?」

「妃殿下付きになった日から騎士達も妃殿下に忠誠を誓いました。俺達だけは妃殿下の味方になろうと」

「そう、ありがとう」

「陛下を一番思っているのは妃殿下です。民を思い、手を差し伸べる。その姿を幾度となく見てきました。我々は妃殿下と共にどこまでも付いていきます」

「心強い味方ね」



私はそれから一週間牢屋に通った。


「ローレン隊長、あの人達はお人好し過ぎない?牢屋では自由なのよ?それに抜け方も教えたわ。抜け道だってよ?それなのにどうして抜け出さないのかしら」

「貴族の矜持でしょうか。王に刃を向けたのは事実ですから」

「貴族をやめ平民として暮らす事だって出来るのよ?この国を出るのは簡単よ?命があればやり直せるの。それなのに…」

「妃殿下、どちらに行かれるんですか」


その声に振り返る。


「イーサン隊長、何かご用?」

「手に持っているのはなんですか」

「手?ああ、これ?ちょっと幻覚が見える薬よ?」

「幻覚?」

「ちょっと苦しむけど死にはしないわ」

「それをどうすると?」

「ほら、子爵は陛下に刃を向けたじゃない?だからその報いをね」

「貴女は!貴女は王妃という事をお忘れか!」

「忘れる訳ないじゃない。それに子爵の件は私に任された事よ?どうしようと私の自由だわ。子爵の命は私が握ってるの。

ふふっ、生かそうが殺そうが、ね?」

「人の命は玩具ではない」

「玩具、貴方いい事言うわね。苦しんで踊り狂う所は玩具そのものよ?操り人形みたいにね。操る人の動きで足や手をバタバタさせる所は、ふふっ、まるで人形ね。

ハハハッ、楽しいわぁ~。今日はどうやって踊ってくれるかしら。

ねぇ、貴方はどうやって踊ってほしい?」

「やはり父上の言うように妹を側室にするべきだ。こんな王妃ではこの国の未来はない!」

「あら、私、側室なんて認めないわよ?どうして認めるの?もし貴方の妹が側室になったら、私、何するか分からないわ。それこそ踊り狂ってもらおうかしら。

だってそうでしょ?アルバートの寵愛は私だけで良いもの」

「いくら王妃でも妹には手出しさせません」

「あら、じゃあどうしましょ。

ああ!いい事考えたわ。妹さんを側室に迎えるのを認める代わりに、」


私はイーサン隊長の耳元で、


「貴方が私の愛玩具の一つになってくれる?」


イーサン隊長は私をはね飛ばし、


「妃殿下!大丈夫ですか。お怪我はありませんか!

おい!イーサン!妃殿下に何をする!」

「ローレンお前…、まさか……」

「そのまさかだが、何か問題があるか?」

「ローレン、駄目よ」

「すみません」

「イーサン、貴方が陛下の代わりに私を抱いてくれるなら貴方の妹さんを側室として認めてあげる。だって陛下は貴方の妹さんを抱くんでしょ?その時私は一人だわ。一人なんて寂しいもの。その間貴方は私の相手をする。どう?良い考えだと思わない?」

「馬鹿な事を」

「あら、残念。なら認めないわ。貴方のお父様にも伝えて?

もし娘を側室にしたら、その時は私が貴方の家族を地獄に送ってあげる。

ハハッ、楽しみねぇ~。今から何が良いか考えないと!

毒だとつまらないわ。貴方、見目は良いから騎士達の慰めものに良いかも。妹さんの方が需要は多そうだけど!

ふふっ、貴方の家族の命運は貴方の返事次第よ?じっくり良く考えて、ね?」


イーサン隊長は私を射殺そさんとする目で睨みつけている。


「ローレン、行くわよ」

「はい、妃殿下」


踵を返し私は塔へ向かった。


「妃殿下」

「ローレン隊長、明日公爵家へ行くわ」

「分かりました」

「あの狸公爵、本当、やってくれるわ」

「側室ですか?」

「ええ、幼い頃から狸公爵は自分の娘をアルバートの婚約者に、ってずっと言っていたの。それでも陛下は認めなかった。

ずる賢くて口が上手い。人を信じやすいアルバートが狸公爵の傀儡になるのは目に見えていたから」



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