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18 24歳 ③
しおりを挟む貴族達が全員会場を出て、給仕達も全員出ていった。この会場に残ったのは私達だけ。
私はローレン隊長と目配せし剣を首元から下ろす。それと同時にローレン隊長は子爵を後ろから拘束する。
扉の前にいたルークが私の側に来て私の手から剣を受け取りローレン隊長の鞘に戻し、自分の剣を持ち私の斜め前に立った。
「ルーク、剣をしまいなさい」
「ですが、」
「大丈夫よ」
ルークが剣を鞘にしまい、私は子爵と向かい合う。
「子爵、貴方は何て馬鹿な事をしたのです!
貴方は何をしたか分かっていますか?王に刃を向けたのです。貴方は王に反乱を起こしたのですよ。それを分かっていますか!」
「王妃、分からずやったとでもお思いか」
「貴方は王に忠実な臣下ではありませんか。前陛下の時もアルバート陛下の事も貴方だけは絶対に悪く言わない。王は敬い称える存在だとあれだけ言っていたでしょう。貴方ほど王に忠実な臣下はいないわ。それが何故」
「何故?分かりませんか?」
「分かっているわ。通行料ね」
「ええ、そのおかげで子爵家は没落します。もうお金も底をついた。明日食べる物もありません」
「子爵家は帝国から粘土を仕入れ陶器にしているものね。その粘土が無ければ何もうみだせない。お金も物も。
高額の通行料を支払い帝国から粘土を仕入れても陶器が売れなければ粘土は買えない。粘土は重く馬や荷車は壊れやすい。だから何度かに分けて運ぶしかない。その度に通行料を支払えばそれが負担になる。
それくらい私でも分かるわ。
それでもこんな事を起こす前にどうして私に相談しなかったの!相談していたら私が力になったのよ」
「あんたのような小娘に何が出来るんだ!」
「貴方からすれば小娘よ。それでも私は帝国とも隣国とも繋がっているの。方法はいくらでもあったのよ」
「それはお前じゃなくて父親だろ!」
「確かにお父様よ。それでも私個人にも手を貸してくれる人なの」
「俺はもうどうなろうと構わない」
「貴方は!貴方は何も分かってないわ!貴族が集まる夜会で、それも即位1年目の祝いのパーティーで、王に刃を向け反乱をした者の身内が何のお咎めもないと思うの!当主が反乱を起こした領民が何も背負わないと!」
「身内は全て俺が連れて行く」
「貴方はいつも奥様と子息、令嬢と必ず参加していたわ。今日、一人だったのが気になった。何かするかもと私は気づいていた。杞憂に終わると信じたかった」
「誤算はあんたが剣を扱えた事か」
「誤算は私を信じなかった貴方自身よ」
「どうしてお前が信じられる!悪女のお前をどうしたら信じられる!」
「貴方も見える部分しか見てないのね。王がいつも正しいと、間違わないと、目を曇らせていたのは貴方の方。
貴方の領民は全て私が引き受けます」
「手荒な真似はするな」
「私はそんな真似はしません。弱い立場の平民を護るのが私の役目です。
子爵、私はとても残念でなりません。貴方がこういう方法を取った事が、こういう方法しか取れなかった事が、
そして王に絶対的な信頼を持ち忠誠を誓う一人の臣下を失う事が…、
アルバート陛下はまだまだ足りないものだらけです。だからこそ貴方のような臣下が必要だったのです。私はそれがとても残念です」
「ッ!」
「子爵、貴方には王に刃を向けた責任を取ってもらいます」
「覚悟の上だ。処刑でも毒でも好きにしてくれ」
「毒杯か自害か、貴方が選びなさい。そして身内と共に旅立ちなさい。見届人は私が行います。
ローレン、子爵を塔の牢屋へ」
「塔の牢屋…、はい、承知しました」
「ルーク、貴方はこのまま子爵を監視。塔の監視はローレン隊が行います。配置はローレンに任せます」
「承知しました」
戻って来たテオ副隊長に子爵を託し、ルークと数人の騎士に囲まれて子爵は連れて行かれた。
夜会会場に残ったのは私とローレン隊長、そしてローレン隊の騎士達。
「妃殿下、裏口はどうしますか」
「監視は表だけで」
「はい」
「明日内密に子爵家へ行きます。馬の用意を。ローレン隊長と数人の騎士だけで目立たないように行くからそのつもりで。後、荷馬車を1台用意しておいて」
「承知しました」
「はぁぁ」
「お疲れのようなので私室へ戻られますか?」
「いいえ、先ずは報告を聞いてから。それから…、アルバートの所に行かないと…。こんな日は行きたくないわね…」
「妃殿下」
「この場には貴方達しか居ないんだから弱音くらい言わせて」
「はい」
「グレイソンは私室に戻ったの?」
「戻られたと思いますが確認します」
「お願い。後、報告はここで受けると伝えて」
私は椅子に座り誰も居ない会場を見渡した。即位1年目の祝賀パーティで王が臣下に刃を向けられた。このことは周辺諸国にあっという間に広がるわ。
私は報告を受ける。
グレイソンは私室に戻り今日はネイソン隊長が側に付いている。
貴族達は順に王宮を後にしているとマックス隊長から報告を受けた。騎士団が率先して行っていると。
私はアルバートが居る執務室へこれから向かう。
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