悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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11 23歳 ⑤

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数日後ローレン隊長と騎士達、荷馬車を見送った。途中でタイラー達と合流する。

医師は合計3人。他の医師にも声をかけたけど集まったのは引退した2人。腕は確かだけど年配。それでも同行してくれるだけでありがたい。


私の護衛にはジェイデン付きだった騎士達が付いた。


「妃殿下、こちらをご覧下さい」


ボビーに見せられた書類。


「今年は不作。いつも取り寄せてるワイン園よね?でも確か報告書にはそんな記載はなかったはずよ」

「はい」

「困ったわね。今年は他のワイン園のワインにしましょう。手配をお願い」

「陛下にはどうお伝えしましょう」

「陛下には私から伝えるわ。それとボビー、まだ私の使えるお金はある?」

「妃殿下は普段あまりお使いになりませんから」

「それなら毎年買い取る分だけ買い取って」

「買い取ってどうするおつもりですか?」

「騎士達に渡すのよ?味が落ちるとはいえ安価なお酒よりは美味しいでしょ?それにコナー、公爵家の騎士なんだけど、お酒はお水なんですって。コナーはいつもお水のように飲んでたわ」

「妃殿下、お酒はお酒です」

「ほら私はグラス一杯飲むと顔が真っ赤になるからその感覚は分からないけど、公爵家の騎士達は皆そうだから近衛隊の騎士も騎士隊の騎士もそうなんじゃないの?」

「確かに騎士にはお酒に強い者が多いですね」

「買い取ったら陛下から日々の労いだと伝えて騎士達に渡してくれる?」

「承知しました」


私はアルバートが居る執務室へ向かった。


「アルバート、3ヶ月後の夜会のワインだけど今年は他のワイン園のワインにしない?」

「どうしてだ?」

「アルバートが国王になって初めての夜会よ?アルバートは皆を平等に見ていると皆に知ってもらう為にもよ。ワイン園は他にもあるのにいつも同じ所ばかりだと贔屓していると思われてもいけないじゃない?毎度ワイン園を変えれば均等になるわ。アルバート新国王は贔屓しない、皆平等に接する国王だ、と思われた方が良いと思うの。

それに今までは前陛下の好きなワインだったでしょ?」

「そうだな、なら今年から順にワイン園を変えよう」

「ええ、それが良いと思うわ」


ワインはひとまず終わったわね。

問題は侯爵領。

2週間後タイラーから手紙が届いた。


『餓死は免れた。流行り病はやっぱり流行していた。薬が足りなくなる。早急に送ってほしい』


私はボビーを呼んだ。


「ボビー、薬を早急に調達出来る?」

「そう思い既に手配してあります。本日隣国から侯爵領に届いているはずです」

「そう、ジェイデンにお礼の手紙を送るわ」


侯爵領はジェイデンのいる隣国から近い。王宮に送るよりも直接侯爵領に送った方が早い。

流石ジェイデンだわ。


「ボビー、穀物は次から次へと送るから届いた穀物はそのまま公爵家へ送るように手配して。後、薬もまだ必要になるわ。帝国にも協力を頼むわ。そこは私が手紙を書くから、ボビーは出来るだけ多くの薬を手配して。他国で少し値が張っても良いわ」

「承知しました」



3ヶ月後の夜会

アルバートが国王になり初めての夜会。私は王妃としてアルバートの隣に座り貴族達から挨拶を受ける。

アルバートとダンスを踊り、貴族達と話をしていた。


「おい!」


少し離れた所から聞こえたその声に私は給仕の元へ急いで向かった。私は給仕の前に立った。


「エンナリー侯爵、どうしました?この者が何か粗相を?」

「妃殿下、どうして我が侯爵家のワインではないのか聞いていただけです」

「この者に聞いても分からないと思いますよ。給仕に怒鳴るなど侯爵がすることでしょうか」

「ですが今年も我が侯爵家からワインを…」

「ええ、確かに買い取りました。

エンナリー侯爵、今までは侯爵家のワインでしたが他にもワイン園があるのに毎度侯爵家のワインでは他のワイン園の貴族から贔屓していると見られてもいけません。エンナリー侯爵はご自分だけ贔屓にしてほしい、そう思っていると?」

「いや、」

「貴族の手本になる高位貴族の、それも侯爵、である貴方がそんな事思う訳ありませんわね。心が広い、貴方ですもの、他のワイン園にも機会を、そうお思いなのでしょう?」

「あ、ああ」

「まあ良かった。アルバート新国王は皆平等に接する国王です。夜会で扱うワインはこれから順に変える事になりました。それを承知して下さいね」

「……分かった」

「エンナリー侯爵家のワインは前陛下が好まれたワインです。夜会に使用するワインは他のワイン園ですが、陛下は『父上が好んだワインを騎士達にも振るまいたい』とおっしゃりました。私は不作で不出来なのにとお伝えしましたが『そのような報告は受けていないがもし不作が本当なら手違いがあったのだろう。侯爵にかぎって虚偽を申告するはずがない。我々王族をいつも助けてくれている。父上はワインの出来だけではなく侯爵の人柄も含め好んだんだ』とおっしゃりました。

私は手違いではない、と思いますが、ねぇ侯爵?」


去って行く時「チッ、小娘が」と言っていたけど今回は聞こえてないふりをしてあげるわ。私は貴方からしたら小娘だけど不敬にあたるのを分かっているのかしら。



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