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10 23歳 ④
しおりを挟む私は後日元侯爵、プロパン伯爵へ国が所有する土地の面積を書類で送った。雑木林の部分、領民が住んでいない土地を国が所有する。立ち入れないように杭で印を付けるように指示を出した。
私は今アルバートの執務室へ来ている。
「アルバート、男爵家の領地は被害が少ないからすぐに領民を帰せるわ。だけど子爵家の領地は被害が大きい。それに領地を元の状態に戻すには数年かかると思うの。だから子爵家には国が所有する領地に移ってもらい、あの土地は国が所有して少しづつ元に戻していきましょ?」
「そうだな、それしかないか」
「隣の伯爵家の領地に何年も住む事は出来ないし、領民には落ち着く場所が必要だと思うの」
「ああ、そうしよう」
「それと侯爵領だけど、侯爵領の半分は被害はないわ。それに残された領民がまだ領地に居るのは知ってる?」
「それも報告を受けているよ。領民は避難したくないと言って残っているらしい」
「そんな馬鹿な。それでも避難させるのが領主でしょ?」
「頑なだったらしい。それでも残った領民には充分な物資を届けていて皆健康らしい」
「そう、それならいいけど…」
「男爵領は辺境の騎士が手を貸してくれるから男爵家は今年、来年と税は半分にしようと思う」
「そうね」
「子爵家は国が所有する領地に領民が移動し生活が落ち着く来年から税を納めてもらう」
「来年なら大丈夫だと思うわ」
「侯爵領は侯爵家が責任を持って立て直すと言っている。今年は税を無くそうと思っている。来年は様子を見てから決めるのが妥当だ」
「そう、分かったわ」
アルバートは侯爵、子爵、男爵に書簡を送った。
一週間後、薬が届き穀物が届いた。
タイラーの意見を聞くために私室へ来てもらった。
「タイラー、薬と穀物は準備出来たわ。それでも誰が届けるか、それに医師の同行をどうするか、それを今は迷っているの」
「もし流行り病が流行しているなら命懸けになる。行きたい者はいないだろうね」
「そうよね」
「俺が行くよ」
「駄目よ。タイラーが流行り病になったらどうするの」
「領民に使う分とは別に自分の分を確保してある。医師は家の医師を連れて行くよ。医師にとっても勉強になるしね」
「それは危険だわ。それなら私が行くわ」
「リリーアンヌ、それは駄目だ。君は王妃だ、国の母だ。民を護る、それを君は放棄するのか?」
「民を護る、侯爵領の領民を護るのも私の役目だわ」
「だから薬を用意し穀物を用意しただろ。国の民は侯爵領の領民だけなのか?違うだろ?この国の民全員じゃないのか?」
「そうよ」
「これからも迫害にあってる民を救うのが王妃である君の役目だ」
「分かったわ。でも気をつけて。必ず帰って来て。良い?タイラー、約束して」
「分かってる、約束する」
タイラーが帰ってから私は近衛隊長を呼んだ。
「ローレン隊長、貴方は私の側にいつもいるから分かってると思うけど薬と穀物が届いたでしょ?それをタイラーが届けてくれるんだけど荷馬車が5台あるわ。そこに服と清潔なタオルも入るから7台くらいになるかもしれない。誰か荷馬車を御者してくれてタイラーと医師の護衛を頼める人を探してほしいの。杞憂に終わってほしいけど流行り病が流行しているかもしれない。命懸けになるわ。無理にとは言わない。私もお父様に頼んでみるけど貴方も早急に誰か探してほしいの」
「分かりました」
お父様に相談したら公爵家の騎士を使って良いと言われた。行って帰ってくるだけじゃない。その間公爵家が手薄になるのも困る。
私は近衛隊長を呼んだ。
「ローレン隊長、貴方の隊にお願いしたいの」
私はローレン隊長を見た。ローレン隊長は少し笑った。
「初めからそのつもりでしたよ。ただその間、妃殿下の護衛をどうするかを考えると違う者を探した方が良いかと」
「隊長、」
「私は貴女の護衛です。王太子妃になってからずっと側で護衛してきました。貴女がしようとしている事を少しは理解しているつもりです。ですがその間の護衛をどうするか」
「私を護る護衛はここには大勢いるわ。それでも私が信頼出来る者はローレン隊長をはじめ貴方の隊の騎士だけなの。
杞憂ならいい。物資を置いて帰って来て。それでももし流行り病が流行していたら気をつけて。医師の指示を聞いて動いて。自分達で出来るからと指示を聞かず病人に近付かないで。貴方達全員の帰還を信じている。そして元気な姿を私に見せて、お願い」
「分かりました」
「こんな事を頼む事になってしまってごめんなさい。貴方達の薬と食料は領民とは別に確保するから、その分は領民に分け与えなくても良いわ。きちんと貴方達も食べて。直ぐに薬を飲んで、良い?」
「分かりました」
私は直ぐにお父様に手紙を書き、騎士達の分の薬と食料の確保をお願いした。そして公爵家の騎士達には次から次へと送る物資の運搬を頼んだ。
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