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4 18歳 ②
しおりを挟む数日後ジェイデンが隣国の王女と婚約した。
王宮で学んでいる王子妃教育が終わりアルバートの私室へ向かう途中、
「リリーアンヌ」
怒った顔をしたジェイデンが私の前に立った。
「どうしましたジェイデン王子」
「リリーアンヌ」
私を睨むジェイデン。
「分かったわジェイデン。どうしたの?」
「俺が怒ってる理由、リリーアンヌなら分かってるよね?」
「ええ」
「どうして俺なの?そんなに俺が側に居るのが嫌?」
真っ直ぐ私を見るジェイデン。
(ええ、ジェイデン、貴方はこの先アルバートの脅威になる。貴方の王の素質、それは私も認めてるの。貴方が王位を継ぐつもりも王位争いをするつもりがないのも知ってる。それでも貴方は担がれる。貴方の意思とは関係なくね。それが私は怖い。だから貴方を排除した。王位争いの火種になる貴方をこの国から排除したの。ごめんなさい。貴方は私の可愛い弟。幼い頃から一緒に過ごした貴方が可愛くない訳がない。大事な弟だと本当に思っているの。でも分かって。私が叶えたい夢はアルバートとタイラー、二人の夢を側で見守る事なの)
「俺がそんなに邪魔?」
「違うわ。アルバートではこの国を隣国から護れない。私とジェイデンは言わば運命共同体なの。ジェイデンは隣国から、私はこの国で、この国を護る為に、この国の民を護る為に、そしてアルバートを支える為に、私とジェイデンで手を取り合って護り支えたい。私はそう思ったからよ?
ねぇジェイデン、私と一緒にアルバートを支えてくれるわよね?私を助けてくれるわよね?ジェイデンが私を裏切らないって私は信じてる」
「俺はリリーアンヌにとって弟?」
「ええ」
「俺はいつかリリーアンヌを兄上から奪うつもりだった」
(それも分かっていたわ。そしてジェイデンならそれが出来るとも。優しさも非情さも持ち合わせている貴方だもの。アルバートの王位が揺るがない為に他国の王女を伴侶に、そう仕向けるつもりだったんでしょ?だから私は先手を打ったの)
ジェイデンと見つめ合う。
「俺は一人の女性として幼い頃からリリーアンヌが好きだった」
(それも知ってる。貴方が姉として慕っていたのではない事くらい知っていたわ。何年一緒に居たと思ってるの?)
「ジェイデン、貴方の私への思い、それはアルバートの真似をしているだけよ?」
「違う」
「違わないわ。アルバートが剣の稽古を真剣に取り組みだしたら貴方も真剣に取り組みだした。アルバートが僕から俺と言うようになったら貴方も俺と言うようになった。勉強だってそうよ?貴方はアルバートの真似をしたいだけなの。だから私への思いもアルバートの真似をしているだけ。それを貴方は本気で好きだと勘違いしてるだけよ?」
「俺の気持ちは俺にしか分からない。リリーアンヌには分からないだろ。何年も思い続けてきたこの気持ちは俺のものだ」
「ジェイデン、私は幼い頃から貴方を見てきた。だって私の可愛い弟なんだもの」
「リリーアンヌの気持ちは分かったよ。それでも俺はリリーアンヌが好きだ。その気持ちに嘘はない。今更捨てろと言われて捨てれる訳がないだろ」
「私もジェイデンが好きよ?」
「俺の気持ちと一緒にしないでほしい」
「そう、残念だわ」
「いつか、いつか、後悔する時がきっとくる。その時リリーアンヌがどう決断するのか俺は隣国から見守るよ」
踵を返してジェイデンは去って行った。私はジェイデンの背中を見つめる。
(ジェイデンごめんなさい。貴方を好きなのは本当よ?弟としてだけど、それでも貴方を大事に大切に思っているの。でもね、同時に貴方が怖い。アルバートの脅威だから、それも一つの理由。だから貴方の私に対する気持ちを利用するわ。
あと一つ、貴方の真っ直ぐな気持ち、それが私は怖い。なぜ怖いのか今の私には分からない。それでも貴方が私を見つめる瞳、貴方が私を真っ直ぐに思う気持ち、それが恐怖なの。だからアルバートから、私から、貴方を遠ざけた。
いつかきっと後悔するかもしれない。それでも貴方の幸せを私はこの国から祈ってる)
見えなくなったジェイデンの姿。
この時、私の未来が決まった瞬間だった。
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