29 / 33
黎明の空色
星空の告白論
しおりを挟む
星空の下で、私は目を覚ます。1時間程度で夜になるはずはない。それどころか、教室にいたはずなのに、私はいつか玉虫を見た丘の上かもしれない草原にいる。
「あれ?今何時?」
ぼんやりとした頭でチヒロに問うと、チヒロは言った。
「四時……ぐらいかな」
「そっか、四時……」
私は何かがおかしいことに気づいた。
「四時?」
「そうですね、そろそろ朝の四時半です」
起き上がった私に、コウくんはどこかでそうだろうと思っていた答えを告げた。
「なんでこんな時間なの?」
私が聞いても、コウくんは何も言わない。コウくんは東の空を背にして西の方、夜の底にぼんやりと見える山並みを仰いだ。
「さぁ、もうそろそろ訣別のときです。朝ですよ、もうすぐ日が昇ります」
私は困惑した。というか、狼狽した。
「え……?」
コウくんは私を見て言う。
「あなたはこの世界の住人じゃない。元いた世界に帰らないといけません」
チヒロの方を向くと、チヒロは私から離れていた。
「またいつか会おうね」
そういったチヒロに、何かが消えたことを感じる。
「二人とも……どうしたの?」
私に、コウくんが答える。
「私たちは、その気になればいつまでもこの宵闇の下で待っていられます。さぁ、アヤナさん。あなたにはまだ、やるべきことがあるのでしょう?今しか出会えない、未来があるはずです」
ある単語が脳内に浮かぶ。でも、それは……。
「……ここは」
「大丈夫です。そのうち現実に戻り、自己認識が戻るでしょう。私たちはあなたがログインしたRPG、『宵闇の夏色』のキャラクターです。あなたは最後のミッション以外のすべてのミッションをクリアしたんです」
「こんなリアルなゲームがあるわけ……」
私はそう言った。言うほかなかった。
「それはそうでしょう。あなたの意識を改変しているのですから」
チヒロは私の前を通り過ぎてから振り向いて「じゃあね、アヤナ」と言い、コウくんと一緒に西側、夜の帳の中へと退場しようとする。
「待って」
私は思わず呼び止めていた。
「どうしたの」
チヒロが振り向いて私に問う。
「まだ、私はここにいたい」
私の言葉に、チヒロは「理解できない」とでも言いたげな顔をした。
「どうして?ここは現実じゃないんだよ?」
「だって、ここは……」
そこで私は言葉につまる。
「でも……嫌だ、わかんないよ」
頭を抱えてうつむいた私に、コウくんが言う。
「アヤナさん……ここはあなたが作った世界でしょう」
私の頭の中に、色々な知りたくなかったことが流れ込んでくる。私は絶句し、コウくんはさらに話を進めた。
「ここは、平たく言えばあなたの夢の中。あなたが作り出した空想上の舞台です」
「どういうこと?」
私はコウくんに問う。まだピンとこないが、何か嘘ではない雰囲気を感じた。
「今までの出来事は、全てシナリオの内容通りなんです。そして、あなたは今からこう言います」
私の口から『そんなのあり得ない、私はシナリオの登場人物じゃない』と言う言葉が発せられるのと同時に、コウくんも同じことを言った。
「……え?」
私は混乱していたが、コウくんは無表情なまま出会ったときのような敬語で話を続けた。
「あれ?今何時?」
ぼんやりとした頭でチヒロに問うと、チヒロは言った。
「四時……ぐらいかな」
「そっか、四時……」
私は何かがおかしいことに気づいた。
「四時?」
「そうですね、そろそろ朝の四時半です」
起き上がった私に、コウくんはどこかでそうだろうと思っていた答えを告げた。
「なんでこんな時間なの?」
私が聞いても、コウくんは何も言わない。コウくんは東の空を背にして西の方、夜の底にぼんやりと見える山並みを仰いだ。
「さぁ、もうそろそろ訣別のときです。朝ですよ、もうすぐ日が昇ります」
私は困惑した。というか、狼狽した。
「え……?」
コウくんは私を見て言う。
「あなたはこの世界の住人じゃない。元いた世界に帰らないといけません」
チヒロの方を向くと、チヒロは私から離れていた。
「またいつか会おうね」
そういったチヒロに、何かが消えたことを感じる。
「二人とも……どうしたの?」
私に、コウくんが答える。
「私たちは、その気になればいつまでもこの宵闇の下で待っていられます。さぁ、アヤナさん。あなたにはまだ、やるべきことがあるのでしょう?今しか出会えない、未来があるはずです」
ある単語が脳内に浮かぶ。でも、それは……。
「……ここは」
「大丈夫です。そのうち現実に戻り、自己認識が戻るでしょう。私たちはあなたがログインしたRPG、『宵闇の夏色』のキャラクターです。あなたは最後のミッション以外のすべてのミッションをクリアしたんです」
「こんなリアルなゲームがあるわけ……」
私はそう言った。言うほかなかった。
「それはそうでしょう。あなたの意識を改変しているのですから」
チヒロは私の前を通り過ぎてから振り向いて「じゃあね、アヤナ」と言い、コウくんと一緒に西側、夜の帳の中へと退場しようとする。
「待って」
私は思わず呼び止めていた。
「どうしたの」
チヒロが振り向いて私に問う。
「まだ、私はここにいたい」
私の言葉に、チヒロは「理解できない」とでも言いたげな顔をした。
「どうして?ここは現実じゃないんだよ?」
「だって、ここは……」
そこで私は言葉につまる。
「でも……嫌だ、わかんないよ」
頭を抱えてうつむいた私に、コウくんが言う。
「アヤナさん……ここはあなたが作った世界でしょう」
私の頭の中に、色々な知りたくなかったことが流れ込んでくる。私は絶句し、コウくんはさらに話を進めた。
「ここは、平たく言えばあなたの夢の中。あなたが作り出した空想上の舞台です」
「どういうこと?」
私はコウくんに問う。まだピンとこないが、何か嘘ではない雰囲気を感じた。
「今までの出来事は、全てシナリオの内容通りなんです。そして、あなたは今からこう言います」
私の口から『そんなのあり得ない、私はシナリオの登場人物じゃない』と言う言葉が発せられるのと同時に、コウくんも同じことを言った。
「……え?」
私は混乱していたが、コウくんは無表情なまま出会ったときのような敬語で話を続けた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
一人用声劇台本
ふゎ
恋愛
一人用声劇台本です。
男性向け女性用シチュエーションです。
私自身声の仕事をしており、
自分の好きな台本を書いてみようという気持ちで書いたものなので自己満のものになります。
ご使用したい方がいましたらお気軽にどうぞ
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
男性向けフリー台本集
氷元一
恋愛
思いついたときに書いた男性向けのフリー台本です。ご自由にどうぞ。使用報告は自由ですが連絡くださると僕が喜びます。
※言い回しなどアレンジは可。
Twitter:https://twitter.com/mayoi_himoto
YouTube:https://www.youtube.com/c/%E8%BF%B7%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E6%B0%B7%E5%85%83%E4%B8%80/featured?view_as=subscriber
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる