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宵の紺碧色
明晰の痕跡論
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「あれ……私はさっきまで……」
私の目の前が、だんだんくっきりと見えてくる。チヒロが笑いながら言った。
「アヤナ、立ったまま居眠りするのやめてくれる?」
信じるに信じられないようなことをチヒロが言う。
「私そんなことしてたの?」
私が聞くと、チヒロはうなずいて答えた。
「そうだよ」
「じゃあ今回の大会の反省会でもしようか」
私がそう言うと、チヒロとコウくんは
「そうだね」
「賛成」
と言ってうなずいた。チヒロが「賛成」に反応したのか、思い出話を始める。
「そういえばこの前コウくんは『リトマス紙の赤と青の覚え方、知ってる?
歩行者信号だよ』って言ってたよね」
私もはっきりとは覚えていない、記憶の片隅にあった話。私はチヒロに「詳しく教えて」と言うような目を向けた。
「なんだっけ、それ」
チヒロはすらすらとコウくんの口調を真似して言う。
「青は歩けるからアルカリだねって言ってた」
コウくんは少し困惑したような目で反応する。
「僕、そんなに寒いギャグ言ったかな」
チヒロが「言ったじゃん」と言って、コウくんがしょんぼりしながら「そっか……」とつぶやく。その場にさらに脱線しそうな雰囲気が漂い始める。このままでは反省会ができない、そう思って私は手を叩いた。
「脱線はそこまでにして、本題に入ろうか」
チヒロとコウくんは黙ってこちらを向き直る。
「そうだね……『夏色の宵闇』の評価は……」
「違う違う、宵闇の夏色」
チヒロの言葉を、私が訂正する。この息の合ったやりとりも、練習中何度もやったものだ。
「あ、そうだった」
定型文を終えて、私は講評用紙をめくった。
「『宵闇の夏色』は、内容としてはすごく良いって言われてる。で、改善点は照明の青色が暗すぎたところと、夕暮れのシーンが赤すぎたところ」
そう言うと、チヒロは首をかしげて唸った。
「うーん」
コウくんは照明の難点を聞いて「改善の余地ありか……」と言ったあと
「他は特になかった?リアルって言ってもらえた?」
と言った。私はコウくんに講評用紙を見せ、
「大体そうだね」
と言った。コウくんは講評用紙の束を一枚一枚めくっては、「おっ、エモかったんだ」とか「小道具頑張った甲斐があったよ」と言っていたが、1枚の講評用紙を見て手を止めた。
「すごいな……リアルな感じがあってよかった……か」
それは、審査員の先生が書いた講評用紙だった。
「あとは……そうだ、コウくんの滑舌がやっぱり駄目だった」
講評用紙の中で一番記憶に残ったところを言うと、コウくんは軽い感じで頭を下げた。
「ごめんごめんって」
チヒロは私の方を見て、
「まあ、勝てたからいいじゃん」
と言う。コウくんも援護して私に言った。
「そうそう、同好会でここまでやれたんだから万々歳だよ」
「まあね」
私はそう言って、良いとも悪いとも言われていないところを話すためにコウくんの手から講評用紙を取った。
私の目の前が、だんだんくっきりと見えてくる。チヒロが笑いながら言った。
「アヤナ、立ったまま居眠りするのやめてくれる?」
信じるに信じられないようなことをチヒロが言う。
「私そんなことしてたの?」
私が聞くと、チヒロはうなずいて答えた。
「そうだよ」
「じゃあ今回の大会の反省会でもしようか」
私がそう言うと、チヒロとコウくんは
「そうだね」
「賛成」
と言ってうなずいた。チヒロが「賛成」に反応したのか、思い出話を始める。
「そういえばこの前コウくんは『リトマス紙の赤と青の覚え方、知ってる?
歩行者信号だよ』って言ってたよね」
私もはっきりとは覚えていない、記憶の片隅にあった話。私はチヒロに「詳しく教えて」と言うような目を向けた。
「なんだっけ、それ」
チヒロはすらすらとコウくんの口調を真似して言う。
「青は歩けるからアルカリだねって言ってた」
コウくんは少し困惑したような目で反応する。
「僕、そんなに寒いギャグ言ったかな」
チヒロが「言ったじゃん」と言って、コウくんがしょんぼりしながら「そっか……」とつぶやく。その場にさらに脱線しそうな雰囲気が漂い始める。このままでは反省会ができない、そう思って私は手を叩いた。
「脱線はそこまでにして、本題に入ろうか」
チヒロとコウくんは黙ってこちらを向き直る。
「そうだね……『夏色の宵闇』の評価は……」
「違う違う、宵闇の夏色」
チヒロの言葉を、私が訂正する。この息の合ったやりとりも、練習中何度もやったものだ。
「あ、そうだった」
定型文を終えて、私は講評用紙をめくった。
「『宵闇の夏色』は、内容としてはすごく良いって言われてる。で、改善点は照明の青色が暗すぎたところと、夕暮れのシーンが赤すぎたところ」
そう言うと、チヒロは首をかしげて唸った。
「うーん」
コウくんは照明の難点を聞いて「改善の余地ありか……」と言ったあと
「他は特になかった?リアルって言ってもらえた?」
と言った。私はコウくんに講評用紙を見せ、
「大体そうだね」
と言った。コウくんは講評用紙の束を一枚一枚めくっては、「おっ、エモかったんだ」とか「小道具頑張った甲斐があったよ」と言っていたが、1枚の講評用紙を見て手を止めた。
「すごいな……リアルな感じがあってよかった……か」
それは、審査員の先生が書いた講評用紙だった。
「あとは……そうだ、コウくんの滑舌がやっぱり駄目だった」
講評用紙の中で一番記憶に残ったところを言うと、コウくんは軽い感じで頭を下げた。
「ごめんごめんって」
チヒロは私の方を見て、
「まあ、勝てたからいいじゃん」
と言う。コウくんも援護して私に言った。
「そうそう、同好会でここまでやれたんだから万々歳だよ」
「まあね」
私はそう言って、良いとも悪いとも言われていないところを話すためにコウくんの手から講評用紙を取った。
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