27 / 33
宵の紺碧色
明晰の痕跡論
しおりを挟む
「あれ……私はさっきまで……」
私の目の前が、だんだんくっきりと見えてくる。チヒロが笑いながら言った。
「アヤナ、立ったまま居眠りするのやめてくれる?」
信じるに信じられないようなことをチヒロが言う。
「私そんなことしてたの?」
私が聞くと、チヒロはうなずいて答えた。
「そうだよ」
「じゃあ今回の大会の反省会でもしようか」
私がそう言うと、チヒロとコウくんは
「そうだね」
「賛成」
と言ってうなずいた。チヒロが「賛成」に反応したのか、思い出話を始める。
「そういえばこの前コウくんは『リトマス紙の赤と青の覚え方、知ってる?
歩行者信号だよ』って言ってたよね」
私もはっきりとは覚えていない、記憶の片隅にあった話。私はチヒロに「詳しく教えて」と言うような目を向けた。
「なんだっけ、それ」
チヒロはすらすらとコウくんの口調を真似して言う。
「青は歩けるからアルカリだねって言ってた」
コウくんは少し困惑したような目で反応する。
「僕、そんなに寒いギャグ言ったかな」
チヒロが「言ったじゃん」と言って、コウくんがしょんぼりしながら「そっか……」とつぶやく。その場にさらに脱線しそうな雰囲気が漂い始める。このままでは反省会ができない、そう思って私は手を叩いた。
「脱線はそこまでにして、本題に入ろうか」
チヒロとコウくんは黙ってこちらを向き直る。
「そうだね……『夏色の宵闇』の評価は……」
「違う違う、宵闇の夏色」
チヒロの言葉を、私が訂正する。この息の合ったやりとりも、練習中何度もやったものだ。
「あ、そうだった」
定型文を終えて、私は講評用紙をめくった。
「『宵闇の夏色』は、内容としてはすごく良いって言われてる。で、改善点は照明の青色が暗すぎたところと、夕暮れのシーンが赤すぎたところ」
そう言うと、チヒロは首をかしげて唸った。
「うーん」
コウくんは照明の難点を聞いて「改善の余地ありか……」と言ったあと
「他は特になかった?リアルって言ってもらえた?」
と言った。私はコウくんに講評用紙を見せ、
「大体そうだね」
と言った。コウくんは講評用紙の束を一枚一枚めくっては、「おっ、エモかったんだ」とか「小道具頑張った甲斐があったよ」と言っていたが、1枚の講評用紙を見て手を止めた。
「すごいな……リアルな感じがあってよかった……か」
それは、審査員の先生が書いた講評用紙だった。
「あとは……そうだ、コウくんの滑舌がやっぱり駄目だった」
講評用紙の中で一番記憶に残ったところを言うと、コウくんは軽い感じで頭を下げた。
「ごめんごめんって」
チヒロは私の方を見て、
「まあ、勝てたからいいじゃん」
と言う。コウくんも援護して私に言った。
「そうそう、同好会でここまでやれたんだから万々歳だよ」
「まあね」
私はそう言って、良いとも悪いとも言われていないところを話すためにコウくんの手から講評用紙を取った。
私の目の前が、だんだんくっきりと見えてくる。チヒロが笑いながら言った。
「アヤナ、立ったまま居眠りするのやめてくれる?」
信じるに信じられないようなことをチヒロが言う。
「私そんなことしてたの?」
私が聞くと、チヒロはうなずいて答えた。
「そうだよ」
「じゃあ今回の大会の反省会でもしようか」
私がそう言うと、チヒロとコウくんは
「そうだね」
「賛成」
と言ってうなずいた。チヒロが「賛成」に反応したのか、思い出話を始める。
「そういえばこの前コウくんは『リトマス紙の赤と青の覚え方、知ってる?
歩行者信号だよ』って言ってたよね」
私もはっきりとは覚えていない、記憶の片隅にあった話。私はチヒロに「詳しく教えて」と言うような目を向けた。
「なんだっけ、それ」
チヒロはすらすらとコウくんの口調を真似して言う。
「青は歩けるからアルカリだねって言ってた」
コウくんは少し困惑したような目で反応する。
「僕、そんなに寒いギャグ言ったかな」
チヒロが「言ったじゃん」と言って、コウくんがしょんぼりしながら「そっか……」とつぶやく。その場にさらに脱線しそうな雰囲気が漂い始める。このままでは反省会ができない、そう思って私は手を叩いた。
「脱線はそこまでにして、本題に入ろうか」
チヒロとコウくんは黙ってこちらを向き直る。
「そうだね……『夏色の宵闇』の評価は……」
「違う違う、宵闇の夏色」
チヒロの言葉を、私が訂正する。この息の合ったやりとりも、練習中何度もやったものだ。
「あ、そうだった」
定型文を終えて、私は講評用紙をめくった。
「『宵闇の夏色』は、内容としてはすごく良いって言われてる。で、改善点は照明の青色が暗すぎたところと、夕暮れのシーンが赤すぎたところ」
そう言うと、チヒロは首をかしげて唸った。
「うーん」
コウくんは照明の難点を聞いて「改善の余地ありか……」と言ったあと
「他は特になかった?リアルって言ってもらえた?」
と言った。私はコウくんに講評用紙を見せ、
「大体そうだね」
と言った。コウくんは講評用紙の束を一枚一枚めくっては、「おっ、エモかったんだ」とか「小道具頑張った甲斐があったよ」と言っていたが、1枚の講評用紙を見て手を止めた。
「すごいな……リアルな感じがあってよかった……か」
それは、審査員の先生が書いた講評用紙だった。
「あとは……そうだ、コウくんの滑舌がやっぱり駄目だった」
講評用紙の中で一番記憶に残ったところを言うと、コウくんは軽い感じで頭を下げた。
「ごめんごめんって」
チヒロは私の方を見て、
「まあ、勝てたからいいじゃん」
と言う。コウくんも援護して私に言った。
「そうそう、同好会でここまでやれたんだから万々歳だよ」
「まあね」
私はそう言って、良いとも悪いとも言われていないところを話すためにコウくんの手から講評用紙を取った。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる