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薄暮の紅色
再会の突発論
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「そう、秘密」
私はそう言って、口をつぐんだ。チヒロは首をかしげていたが、少しして何かに気づいたような顔をした。
「っていうかさぁアヤナ、さっきから言ってること変わってない?コウくんはもういないとか言ったのに、次はコウくんが私たちの探偵だ、鍵だって言ったりするし。LINEが来たときにも、何も教えてくれなかったじゃん。それに、その理由だとかいう約束の内容も言わないし。ずっと一緒に頑張ってきたのに、私のこと信用してないの?」
チヒロの辛そうな顔を見て、私は思わず言った。
「信用してる。けど……それはまだ伏せておきたいかな」
チヒロは私を少し睨む。
「アヤナ」
「コウくんと私がした約束も、メッセージの内容も、まだ言うべきときじゃない」
私ははっきりそう言った。しかし、チヒロはまだ食い下がる。当然だ、私がチヒロの立場ならもっときつい言葉を浴びせているに違いない。
「言うべきときじゃないって……?ってか、コウくんは何を望んでるの?言ってよ、お願いだからさ」
と、LINEの着信音が響いた。私はスマホを見る。そこにはコウくんからの着信があった。
「それは……コウくんから直接説明してもらおうかな」
チヒロが不思議そうな顔をする。
「え?」
私は廊下に繋がるドアの方を見て、言った。
「コウくん、おかえり」
「何言ってるの?」
チヒロがいよいよ困惑したといった顔で言ったとき、廊下の曲がり角の向こうからコウくんが走ってくる音がした。コウくんのスリッパの音はだんだん大きくなり、コウくんは少し息を切らせてドアを開けた。
「コウくん……?」
困惑しきったチヒロをよそに、コウくんは私の顔を見て言った。
「こんにちは……いや、こんばんはかな。二人の前に現れるのに、こんな格好悪い出方は他にない気もするけど……まぁ時が来たみたいだからね」
「え?は?」
チヒロはもはやパニックになりかけている。私はコウくんに聞いた。
「LINEの内容って今言っていいんだよね」
「うん。よろしく」
コウくんのその声とともに、私はコウくんからのメッセージを読み上げ始めた。
「僕には二人をハッピーエンドに導く義務があります。二人がいつまで経ってもたどり着けない、本物のハッピーエンドに」
私が言い切ると、チヒロは少し落ち着いたようだった。
「……これでいいんだよね」
コウくんに聞くと、コウくんは大きくうなずいた。
「そう! ということで、僕は今から二人をハッピーエンドに連れて行こうと思う。もちろん、話の終わり……っていうだけで、人生が終わるわけじゃない。全てのものは、終わるときにまた始まるんだから」
数秒の沈黙が流れ、チヒロが「どゆこと?」と言って首をかしげた。
「言ったまんまの意味だよ。いまから僕がチヒロとアヤナをハッピーエンドに連れて行く」
コウくんはいつも通りの口調で言った。もはやその口調が頼もしいとも思える。
「そのハッピーエンドは、私たちが望むものなの?」
チヒロが聞く。私は「そうに決まってるじゃん」と言ってコウくんの方を見た。
「多分大丈夫。望まない結末なんて、ハッピーエンドとは言えないから。じゃあ、行こうか」
コウくんはそう言って、手を前に出し、くるりと肘を反時計回りに一周回して指をパチンと鳴らした。
私はそう言って、口をつぐんだ。チヒロは首をかしげていたが、少しして何かに気づいたような顔をした。
「っていうかさぁアヤナ、さっきから言ってること変わってない?コウくんはもういないとか言ったのに、次はコウくんが私たちの探偵だ、鍵だって言ったりするし。LINEが来たときにも、何も教えてくれなかったじゃん。それに、その理由だとかいう約束の内容も言わないし。ずっと一緒に頑張ってきたのに、私のこと信用してないの?」
チヒロの辛そうな顔を見て、私は思わず言った。
「信用してる。けど……それはまだ伏せておきたいかな」
チヒロは私を少し睨む。
「アヤナ」
「コウくんと私がした約束も、メッセージの内容も、まだ言うべきときじゃない」
私ははっきりそう言った。しかし、チヒロはまだ食い下がる。当然だ、私がチヒロの立場ならもっときつい言葉を浴びせているに違いない。
「言うべきときじゃないって……?ってか、コウくんは何を望んでるの?言ってよ、お願いだからさ」
と、LINEの着信音が響いた。私はスマホを見る。そこにはコウくんからの着信があった。
「それは……コウくんから直接説明してもらおうかな」
チヒロが不思議そうな顔をする。
「え?」
私は廊下に繋がるドアの方を見て、言った。
「コウくん、おかえり」
「何言ってるの?」
チヒロがいよいよ困惑したといった顔で言ったとき、廊下の曲がり角の向こうからコウくんが走ってくる音がした。コウくんのスリッパの音はだんだん大きくなり、コウくんは少し息を切らせてドアを開けた。
「コウくん……?」
困惑しきったチヒロをよそに、コウくんは私の顔を見て言った。
「こんにちは……いや、こんばんはかな。二人の前に現れるのに、こんな格好悪い出方は他にない気もするけど……まぁ時が来たみたいだからね」
「え?は?」
チヒロはもはやパニックになりかけている。私はコウくんに聞いた。
「LINEの内容って今言っていいんだよね」
「うん。よろしく」
コウくんのその声とともに、私はコウくんからのメッセージを読み上げ始めた。
「僕には二人をハッピーエンドに導く義務があります。二人がいつまで経ってもたどり着けない、本物のハッピーエンドに」
私が言い切ると、チヒロは少し落ち着いたようだった。
「……これでいいんだよね」
コウくんに聞くと、コウくんは大きくうなずいた。
「そう! ということで、僕は今から二人をハッピーエンドに連れて行こうと思う。もちろん、話の終わり……っていうだけで、人生が終わるわけじゃない。全てのものは、終わるときにまた始まるんだから」
数秒の沈黙が流れ、チヒロが「どゆこと?」と言って首をかしげた。
「言ったまんまの意味だよ。いまから僕がチヒロとアヤナをハッピーエンドに連れて行く」
コウくんはいつも通りの口調で言った。もはやその口調が頼もしいとも思える。
「そのハッピーエンドは、私たちが望むものなの?」
チヒロが聞く。私は「そうに決まってるじゃん」と言ってコウくんの方を見た。
「多分大丈夫。望まない結末なんて、ハッピーエンドとは言えないから。じゃあ、行こうか」
コウくんはそう言って、手を前に出し、くるりと肘を反時計回りに一周回して指をパチンと鳴らした。
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