宵闇の夏色

古井論理

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夕陽の茜色

3人分の紹介文

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アヤナ
朝日を避けて目を閉じた、私は走って逃げていく。逃げた先には宵の明星、宵闇巡りて日向越え。日向の光に溺れた私に、まぶしい西日が照りつける。駅で語れば救済論、電車の中では論拠なし。傷を癒やすは宵闇、夏色、結果にもしもを持ち込んで、世界は再び動き出す。虚しく埋もれた虚構の中で、君が語るは未来論。歩き出したる私の前に朝焼け空が広がって、世界は瑠璃色、青薔薇の色、希望の下に今洗われる。

チヒロ
メビウスの輪に閉ざされて、心は全てを解かれる。広い世界を舞台の上で眺めるだけの常日頃、別れと出会いが貯まりゆく。日傘と木陰は此処にあり、心を持つのは苦しき定命さだめ。寂しい終わりは幾星霜、忘れてくれるな大団円、希望を見られぬ日々は続けど幸か不幸かまた会える。Re:Re:Re:が続いてエトセトラ、もう会えぬ日を楽しみに、君と会えなくなる前に。

コウ
メビウスの輪を切り裂いて、心は世界に閉ざされる。広い世界を駆けて抜けても定め通りの感情論理。出会いと別れは幾星霜、大事な言葉はいつ言えそう、皆目見当つかず終い。大団円を招きに動けば、人の心に乱されて、まだ会える日は不仕合わせ。冷えた両手を冷たい光で温めて、明けない宵の索を切る。温まるのはない心、何が邪魔する言葉たち。素直な言葉は此処にある、別にいいのさ君のため。


「……此処は、何処?」
 私は頭の中に響いた言葉に問うた。宵闇の碧の中に、私の声は消えていく。
「……ココハドコ、ココハドコ」
 反響する言葉はまるでガラスのコップを叩いたような無機質な音に変わっていく。
「あなたの名前は?」
「アヤナ」
「アヤナ、アヤナ、アヤナ……」
 反響する言葉は一瞬消えて、山彦のように重なった言葉が返ってきた。
「チヒロ」
「コウ」
「ダレカ」
「チヒロ」
「コウ」
「ダレカ」
 私は……ダレ?
「アヤナ、起きなさい」
 お母さん……ではなく、お母さんのようなチヒロの声が聞こえる。私は返事をして伏せていた顔を上げた。
「アヤナ、夜ちゃんと寝てる?最近居眠りばっかしてるじゃん」
 チヒロの心配げな顔が、私の正面20センチに近づいている。
「ふぇえ!?」
 私の素っ頓狂な声がチヒロにぶつかる。
「もう少し静かに驚いてほしいんだけどな」
「……ごめん」
「まあいいや、練習始めようよ」
 光に目が慣れたとき、私の目の前には「宵闇の夏色」の脚本が置かれていた。
「3番、夏色の宵闇」
 チヒロが上演前のナレーションを真似る。
「宵闇の夏色、ね」
「はいはい」
 チヒロがツッコミに応じた次の瞬間、私たちは真面目な顔で台本に視線を落とした。台本は手の中で、陽光に照らされて熱くなった表紙を冷ました。
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