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速攻錬成のチャーハン
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優莉姉さんがキッチンについてきた僕を振り返って言う。
「なんでついてくるの」
「心配だからね」
「何が」
「僕だってまだ焼け死にたくない」
優莉姉さんは嘲るような顔を浮かべる。僕も負けじと優莉姉さんに冷たい目を向けた。
「……まあいいや、作っていきましょう」
優莉姉さんは冷蔵庫からラップでくるんだご飯を出すと、それを電子レンジで温めてからマヨネーズを思いっきりかけた。
「!?」
「こうすればチャーハンがパラパラになるんだけど……知らない?」
「テフロンのコーティングがバラバラかつボロボロになるんでしょ?」
「落ち着いて。この程度でバラバラのボロボロになるならもうなってる」
「……たしかに」
優莉姉さんは平然とシャカシャカ音を立てながらピーマンと玉ねぎを炒め、溶き卵を熱したテフロンフライパンに放り込み、続いてご飯を放り込んだ。この間、わずか一分。
「さて、そろそろ出来上がりよ」
優莉姉さんはチャーハンを大皿に盛り付けながら言った。美味しそうな香りが漂うキッチンの空気に、僕のお腹は大音響を立てた。
「ほら、美味しそうでしょ?最後にこしょうで風味付けをすれば完璧だよ」
優莉姉さんは誇らしげに言って、こしょうをチャーハンにかけた。
「さて、これで玉ねぎたっぷりチャーハンの出来上がり!たっぷり召し上がれ」
テーブルにチャーハンを置いて、優莉姉さんが椅子に座った。
「……なにかおかしい」
僕はかなり違和感を覚えた。優莉姉さんはズボラで変人で不器用なはず。何があったのだろうか。
「どうしたの?」
優莉姉さんは不思議がるのが異常とでも言うかのようにチャーハンを取り分けている。
「優莉姉さん、これ夢じゃないよね?」
「指でも噛んでみれば?なんなら足踏んづけるけど?」
「やめて」
僕は指を噛んでみた。じんわりと痛みが走る。
「優莉姉さん、本物?」
「本物……とは?」
「今ここにいる優莉姉さんは宇宙人の変身だったりしない?」
「どうしたの?幼稚なこと言ってても何も解決しないぞ?」
「……怪しすぎるんだよ」
「どこが?玄関にある読破済みの本の内容でも見りゃわかるでしょ」
僕は階段を駆け下り、玄関に向かった。積み上げられている本は、どれも料理の専門書だ。
「……優莉姉さん、彼氏でもできた?」
「いや、小説書いてた」
「どういうこと……?」
「私、小説書いてるよね」
優莉姉さんは当たり前のことを言うかのように話を続けようとする。
「いや、初耳なんだけど」
「まあ書いてるの。それで料理人の話が書きたくて、資料にするために料理本をいっぱい買ってもらったんだ」
「それを覚えた、と……」
「小説を書くためには最低でも出来上がる小説の10倍は資料を読まないといけないからね」
「そんな決まりが……」
「決まりじゃないけど、専門的な分野を書くなら資料は必要だね。知らずに書くのは失礼じゃん?」
そうか、優莉姉さんならやりかねない。僕はそう確信した。優莉姉さんは趣味の人だ。趣味のためなら何でもするだろう。
「たぶん考えてるとおりだと思うよ。あと……チャーハン冷めるよ?」
僕は椅子に座って、スプーンでチャーハンを口に運んだ。チャーハンは香ばしい香りと旨味を放ちながら、口の中でパラパラとほぐれた。
「なんでついてくるの」
「心配だからね」
「何が」
「僕だってまだ焼け死にたくない」
優莉姉さんは嘲るような顔を浮かべる。僕も負けじと優莉姉さんに冷たい目を向けた。
「……まあいいや、作っていきましょう」
優莉姉さんは冷蔵庫からラップでくるんだご飯を出すと、それを電子レンジで温めてからマヨネーズを思いっきりかけた。
「!?」
「こうすればチャーハンがパラパラになるんだけど……知らない?」
「テフロンのコーティングがバラバラかつボロボロになるんでしょ?」
「落ち着いて。この程度でバラバラのボロボロになるならもうなってる」
「……たしかに」
優莉姉さんは平然とシャカシャカ音を立てながらピーマンと玉ねぎを炒め、溶き卵を熱したテフロンフライパンに放り込み、続いてご飯を放り込んだ。この間、わずか一分。
「さて、そろそろ出来上がりよ」
優莉姉さんはチャーハンを大皿に盛り付けながら言った。美味しそうな香りが漂うキッチンの空気に、僕のお腹は大音響を立てた。
「ほら、美味しそうでしょ?最後にこしょうで風味付けをすれば完璧だよ」
優莉姉さんは誇らしげに言って、こしょうをチャーハンにかけた。
「さて、これで玉ねぎたっぷりチャーハンの出来上がり!たっぷり召し上がれ」
テーブルにチャーハンを置いて、優莉姉さんが椅子に座った。
「……なにかおかしい」
僕はかなり違和感を覚えた。優莉姉さんはズボラで変人で不器用なはず。何があったのだろうか。
「どうしたの?」
優莉姉さんは不思議がるのが異常とでも言うかのようにチャーハンを取り分けている。
「優莉姉さん、これ夢じゃないよね?」
「指でも噛んでみれば?なんなら足踏んづけるけど?」
「やめて」
僕は指を噛んでみた。じんわりと痛みが走る。
「優莉姉さん、本物?」
「本物……とは?」
「今ここにいる優莉姉さんは宇宙人の変身だったりしない?」
「どうしたの?幼稚なこと言ってても何も解決しないぞ?」
「……怪しすぎるんだよ」
「どこが?玄関にある読破済みの本の内容でも見りゃわかるでしょ」
僕は階段を駆け下り、玄関に向かった。積み上げられている本は、どれも料理の専門書だ。
「……優莉姉さん、彼氏でもできた?」
「いや、小説書いてた」
「どういうこと……?」
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「いや、初耳なんだけど」
「まあ書いてるの。それで料理人の話が書きたくて、資料にするために料理本をいっぱい買ってもらったんだ」
「それを覚えた、と……」
「小説を書くためには最低でも出来上がる小説の10倍は資料を読まないといけないからね」
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「たぶん考えてるとおりだと思うよ。あと……チャーハン冷めるよ?」
僕は椅子に座って、スプーンでチャーハンを口に運んだ。チャーハンは香ばしい香りと旨味を放ちながら、口の中でパラパラとほぐれた。
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