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マカロンは添えるだけ

5.レイヤーは火炎放射器を持っている

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キラキラと降り注ぐ光と金色の鎖。

が、しかし。
ほどなくして消えた。
その間およそ20秒。
効果短くないか?神官長のクセに!

「バ、バカな!?」

うろたえる神官長に、やっぱりなぁと思わず溜息が出た。

「せ、せ、聖女様!お、お名前は間違いなくご本名で!?」

媚びへつらう様に顔をヒクつかせるおっさん3号に呆れてしまう。

「あなた、バカなの?」
「…は?」

おっさんを放置して私は騎士くんが持っているキャリーのファスナーを少しだけ開けて中身を漁る。
たしかギリギリまで使っていたから、と思うとすぐに見つかったそれを手に、改めて神官長に向き直った。

「私が召喚されたとき、周りには大勢の神官さんたちが居たわ。そうね、15人くらいかしら?でもあなたはその中には居なかった。ここでふんぞり返っていたんでしょう?」

コツコツとヒールを鳴らしながら神官長に近付いていく。
その間、右手でパコンと蓋を外してシャカシャカ。

「15人の神官さんが頑張ってようやく成功した召喚の儀式。なのにあなたは帰還の儀式を、たった一人でこの場でやろうとした。・・・ねぇ、おかしくない?」

コツン、と足音を鳴らして目の前で止まる。
下から、神官長の顔を覗き込む。
無表情で。

「あなた、私をしたわね?」
「…ヒッ!!」

後ずさろうとしたおっさんの胸倉をガッと掴む。
逃がすわけないだろう!!

一人分の魔力で即発動できる術。
必要なのは名前。
降り注ぐ鎖の模様。
そして神官さんや騎士くんの態度。

ゲームや漫画、アニメに映画。
現在の地球に魔法はなくとも『魔法の知識』はどこよりもあるのだ!

「名前って、大事よね?…コレよりも!!」

軽く勢いをつけて胸倉から手を放し、すかさず彼の前に両手を突き出す。

ブボオゥ!と私たちの間に火炎が噴き出たのを見て周囲は驚愕のまま後ずさった。

「ぎゃあっ!あ、熱い!!なんだこれはっ!やめろ、やめてくれっ!」

よろけた体勢のまま至近距離で私の攻撃を喰らった神官長は、後ずさりながら必死に髭についた火を払っている。

そう。私が持っているのは現代文明の武器「ヘアスプレー」と「ライター」だ。
私のスーパーロングヘアを悪役令嬢縦ロールに仕上げる必需品。
さらに夜のお茶会用キャンドルのために持参したライターを組み合わせた、ありあわせ「火炎放射器」である(※良い子はマネしてはいけません)

周りの人たちがバタバタとおっさん3号の顔を叩きまくって火は消えたが、ご自慢だったであろう整えられていた髭はボロボロ。
いい気味だ(※良い子はマネしてはいけません、絶対に)

両手に武器を装備したまま、腰に手を当てて今や這い蹲っている神官長を見下ろす。

「この国に来てから誰一人として名を名乗ろうとはしなかったわ。国王の名を紹介もされない。あなたも。私に名乗れと言うくせに、自分の名前は口にしない。…ねぇ、それで私が怪しまないと思ったの?」

「詠唱もなしに魔法を…」
「あんな一瞬で発動なさるとは…」
縛鎖ばくさの術を跳ね返されるだなんて…!」

おっさんの周りの神官さんたちが蒼い顔でブツクサ言って震えている。

魔法じゃなくてヘアスプレーだけどね!って思うけど、きっとそんな物ないだろうと暴挙に出たのは功を奏したらしい。
ガタブルしている人たちの前に仁王立ちして今度こそ、はっきりさせてもらう。

「さあっ!今すぐ!私を!帰しなさいっ!!!」

ヒィィィィッ!!と悲鳴とともにイモムシになる神官たち。
どこかの蛇の国の女帝張りなポーズでふんぞり返る。

「「「「お、お許しくださいっ聖女様!!!!!!」」」」

結果、謁見の間に居た全員が土下座状態になってしまった。

いや、なんでやねんっ!

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