5 / 8
マカロンは添えるだけ
5.レイヤーは火炎放射器を持っている
しおりを挟む
キラキラと降り注ぐ光と金色の鎖。
が、しかし。
ほどなくして消えた。
その間およそ20秒。
効果短くないか?神官長のクセに!
「バ、バカな!?」
うろたえる神官長に、やっぱりなぁと思わず溜息が出た。
「せ、せ、聖女様!お、お名前は間違いなくご本名で!?」
媚びへつらう様に顔をヒクつかせるおっさん3号に呆れてしまう。
「あなた、バカなの?」
「…は?」
おっさんを放置して私は騎士くんが持っているキャリーのファスナーを少しだけ開けて中身を漁る。
たしかギリギリまで使っていたから、と思うとすぐに見つかったそれを手に、改めて神官長に向き直った。
「私が召喚されたとき、周りには大勢の神官さんたちが居たわ。そうね、15人くらいかしら?でもあなたはその中には居なかった。ここでふんぞり返っていたんでしょう?」
コツコツとヒールを鳴らしながら神官長に近付いていく。
その間、右手でパコンと蓋を外してシャカシャカ。
「15人の神官さんが頑張ってようやく成功した召喚の儀式。なのにあなたは帰還の儀式を、たった一人でこの場でやろうとした。・・・ねぇ、おかしくない?」
コツン、と足音を鳴らして目の前で止まる。
下から、神官長の顔を覗き込む。
無表情で。
「あなた、私を縛ろうとしたわね?」
「…ヒッ!!」
後ずさろうとしたおっさんの胸倉をガッと掴む。
逃がすわけないだろう!!
一人分の魔力で即発動できる術。
必要なのは名前。
降り注ぐ鎖の模様。
そして神官さんや騎士くんの態度。
ゲームや漫画、アニメに映画。
現在の地球に魔法はなくとも『魔法の知識』はどこよりもあるのだ!
「名前って、大事よね?…髭よりも!!」
軽く勢いをつけて胸倉から手を放し、すかさず彼の前に両手を突き出す。
ブボオゥ!と私たちの間に火炎が噴き出たのを見て周囲は驚愕のまま後ずさった。
「ぎゃあっ!あ、熱い!!なんだこれはっ!やめろ、やめてくれっ!」
よろけた体勢のまま至近距離で私の攻撃を喰らった神官長は、後ずさりながら必死に髭についた火を払っている。
そう。私が持っているのは現代文明の武器「ヘアスプレー」と「ライター」だ。
私のスーパーロングヘアを悪役令嬢縦ロールに仕上げる必需品。
さらに夜のお茶会用キャンドルのために持参したライターを組み合わせた、ありあわせ「火炎放射器」である(※良い子はマネしてはいけません)
周りの人たちがバタバタとおっさん3号の顔を叩きまくって火は消えたが、ご自慢だったであろう整えられていた髭はボロボロ。
いい気味だ(※良い子はマネしてはいけません、絶対に)
両手に武器を装備したまま、腰に手を当てて今や這い蹲っている神官長を見下ろす。
「この国に来てから誰一人として名を名乗ろうとはしなかったわ。国王の名を紹介もされない。あなたも。私に名乗れと言うくせに、自分の名前は口にしない。…ねぇ、それで私が怪しまないと思ったの?」
「詠唱もなしに魔法を…」
「あんな一瞬で発動なさるとは…」
「縛鎖の術を跳ね返されるだなんて…!」
おっさんの周りの神官さんたちが蒼い顔でブツクサ言って震えている。
魔法じゃなくてヘアスプレーだけどね!って思うけど、きっとそんな物ないだろうと暴挙に出たのは功を奏したらしい。
ガタブルしている人たちの前に仁王立ちして今度こそ、はっきりさせてもらう。
「さあっ!今すぐ!私を!帰しなさいっ!!!」
ヒィィィィッ!!と悲鳴とともにイモムシになる神官たち。
どこかの蛇の国の女帝張りなポーズでふんぞり返る。
「「「「お、お許しくださいっ聖女様!!!!!!」」」」
結果、謁見の間に居た全員が土下座状態になってしまった。
いや、なんでやねんっ!
が、しかし。
ほどなくして消えた。
その間およそ20秒。
効果短くないか?神官長のクセに!
「バ、バカな!?」
うろたえる神官長に、やっぱりなぁと思わず溜息が出た。
「せ、せ、聖女様!お、お名前は間違いなくご本名で!?」
媚びへつらう様に顔をヒクつかせるおっさん3号に呆れてしまう。
「あなた、バカなの?」
「…は?」
おっさんを放置して私は騎士くんが持っているキャリーのファスナーを少しだけ開けて中身を漁る。
たしかギリギリまで使っていたから、と思うとすぐに見つかったそれを手に、改めて神官長に向き直った。
「私が召喚されたとき、周りには大勢の神官さんたちが居たわ。そうね、15人くらいかしら?でもあなたはその中には居なかった。ここでふんぞり返っていたんでしょう?」
コツコツとヒールを鳴らしながら神官長に近付いていく。
その間、右手でパコンと蓋を外してシャカシャカ。
「15人の神官さんが頑張ってようやく成功した召喚の儀式。なのにあなたは帰還の儀式を、たった一人でこの場でやろうとした。・・・ねぇ、おかしくない?」
コツン、と足音を鳴らして目の前で止まる。
下から、神官長の顔を覗き込む。
無表情で。
「あなた、私を縛ろうとしたわね?」
「…ヒッ!!」
後ずさろうとしたおっさんの胸倉をガッと掴む。
逃がすわけないだろう!!
一人分の魔力で即発動できる術。
必要なのは名前。
降り注ぐ鎖の模様。
そして神官さんや騎士くんの態度。
ゲームや漫画、アニメに映画。
現在の地球に魔法はなくとも『魔法の知識』はどこよりもあるのだ!
「名前って、大事よね?…髭よりも!!」
軽く勢いをつけて胸倉から手を放し、すかさず彼の前に両手を突き出す。
ブボオゥ!と私たちの間に火炎が噴き出たのを見て周囲は驚愕のまま後ずさった。
「ぎゃあっ!あ、熱い!!なんだこれはっ!やめろ、やめてくれっ!」
よろけた体勢のまま至近距離で私の攻撃を喰らった神官長は、後ずさりながら必死に髭についた火を払っている。
そう。私が持っているのは現代文明の武器「ヘアスプレー」と「ライター」だ。
私のスーパーロングヘアを悪役令嬢縦ロールに仕上げる必需品。
さらに夜のお茶会用キャンドルのために持参したライターを組み合わせた、ありあわせ「火炎放射器」である(※良い子はマネしてはいけません)
周りの人たちがバタバタとおっさん3号の顔を叩きまくって火は消えたが、ご自慢だったであろう整えられていた髭はボロボロ。
いい気味だ(※良い子はマネしてはいけません、絶対に)
両手に武器を装備したまま、腰に手を当てて今や這い蹲っている神官長を見下ろす。
「この国に来てから誰一人として名を名乗ろうとはしなかったわ。国王の名を紹介もされない。あなたも。私に名乗れと言うくせに、自分の名前は口にしない。…ねぇ、それで私が怪しまないと思ったの?」
「詠唱もなしに魔法を…」
「あんな一瞬で発動なさるとは…」
「縛鎖の術を跳ね返されるだなんて…!」
おっさんの周りの神官さんたちが蒼い顔でブツクサ言って震えている。
魔法じゃなくてヘアスプレーだけどね!って思うけど、きっとそんな物ないだろうと暴挙に出たのは功を奏したらしい。
ガタブルしている人たちの前に仁王立ちして今度こそ、はっきりさせてもらう。
「さあっ!今すぐ!私を!帰しなさいっ!!!」
ヒィィィィッ!!と悲鳴とともにイモムシになる神官たち。
どこかの蛇の国の女帝張りなポーズでふんぞり返る。
「「「「お、お許しくださいっ聖女様!!!!!!」」」」
結果、謁見の間に居た全員が土下座状態になってしまった。
いや、なんでやねんっ!
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?
真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。
婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。
藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」
婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで←
うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。
婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです
珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。
※全4話。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる