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マカロンは添えるだけ
2.知ってるかい?大理石って滑るんだぜ?
しおりを挟む持つという護衛?騎士?っぽい人の申し出を断り、私はキャリーバッグをゴロゴロさせながら廊下を進む。
「見ず知らずの者に荷物を預けるほど、世間知らずではなくてよ?」と言えば騎士サマ達はしゅんとしながらも下がってくれた。
犬がしょぼくれた様なソレにこちらの罪悪感の方がヒドイ。
ガタイのいい大人の男が犬耳の幻覚を装備しないでいただきたい。
ちなみにこの言葉遣いはもちろん、カレン・ミラード風である。
恥ずかしくないのかって?
フフフ…
どうせここは異世界。
私が帰った後に彼らと遭遇する確率は0である!
この世界で黒歴史をいくら量産しようがバレることは絶対にないのだ!わはは!!
そう開き直って私は思う存分『悪役令嬢カレン』風でいくことに決めた。
黒と紫レースのドレスだからこそできる暴挙である。
1人では開けられないであろう重そうな扉。
キンキラした部屋の中央奥、3段上がった所にデデンと鎮座する玉座。
そしてふんぞりかえるおっさん。
その周囲には10人程の人が控えていた。
たぶん国の偉い人たちだろう。
よく見ればオタクで培った知識で彼らの正体、というか、役職くらいは想像がついたのだろうけど、なんせ私は疲れていた。
大理石、マジ歩きにくい。
キャリーバッグ持つの断るんじゃなかった。
腕も痛い。
着替えの他、詐欺メイク道具一式、撮影機材にお茶会用ティーセットも超豪華プチフールも入ってるんだ!
それは決して彼らのせいではないんだけど、10分近く滑りやすい床を歩かされた私はとにかく疲れていた。
そこにきて謁見である。
ふんぞりかえるおっさんである。
おっさんに跪く周囲に対し、疲れで不機嫌MAXの私は当然、玉座の正面に仁王立ちして差し上げた。
というか、今膝なんか付いたらガクガクして立ち上がれる気がしない。
誰か私にも椅子をくれ。
頭を下げられるのが当たり前なおっさん、おそらく王様はいつまでも立ったままの私に対してちょっとムッとした様だ。
横にいた人をチラッと見ると顎をしゃくった。
「聖女様、よくぞ参られた。その力、このイーベン王国の為に尽くされよ」
顎で指図された割に偉そうなおっさんは、話しながら全身をジットリとチェックしてくる。
なんだこのおっさん2号。
レイヤーに向ける、興奮と熱量、羨望や憧憬の視線とは違う、イヤな目線だ。
疲れに加えて不快な視線に晒され、私の機嫌はさらに悪くなった。
フン、と顔を逸らし扇子を広げる。
シャッと軽快な音を立てる扇子はホームセンターのDIYコーナーを使った手作りだ。
ドレスと同じ黒と紫のレースで飾り立てたゴージャスバージョンである。
威圧感はハンパない。
それを口元に当てながら腕を組む。
見下す様に目を細めれば脳内スチルと同じポーズができあがった。
「無礼者が」
低ーい声が出た。
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