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第二章
第二章第51話 覚悟の全ツッパ五百連(2)
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「どうして、じゃないよっ! ディーノこそどうしてこんな森の中でガチャ引いてるんだーっ!」
「どうしてって……それよりも、フラウはどうしてここに戻ってきたんだ? エレナはどうなったんだ!?」
「エレナは、迷宮のすっごく奥に一人でいるよっ! ディーノのことを待ってるよっ! 早く助けに行かなきゃ!」
「やっぱりか……。って、そうじゃなくてどうしてエレナを一人にして戻ってきたんだ?」
「ディーノのMPが切れたら、あたしがエレナのところに居たって何もできないじゃないよっ!」
「あ……」
「もしかして忘れてたの!?」
「あ、ああ。ごめん」
「もー。仕方ないなぁ、ディーノは。それよりも! ディーノたちはなんで助けに行かないのっ? エレナは助けを待ってるんだよっ?」
「どうやら、俺一人で行くしかないみたいだからな」
「えっ? カリストたちはっ?」
「どこにいるかもわからないのに、他の冒険者たちを死なせるような判断はできないって」
「ええっ!?」
「だから救出作戦はしないって」
「ひっどーいっ! たしかにすっごい遠かったけど! 急げばきっと間に合うんだよっ!」
「あのベヒーモス戦で、カリストさんたちは無理だってなったのかもしれない」
「あ……」
ぷりぷりと怒っていたフラウだが、しょんぼりとした様子になってしまった。
「だから、俺が有り金を全部はたいてガチャを引いてるんだ。ここで神引きして、たとえ一人だったとしてもエレナを助けに行こうと思ってさ」
「……ディーノっ。うん! うん! そうだねっ! 神引きしちゃおう!」
「ああ。任せておけ」
「うん。ディーノ! 頑張れっ!」
「ああ。ありがとう!」
ああ、やはりフラウの応援は背中を押してくれる。この応援がもらえるだけでガチャを引くときの安定感というか何というか。そう、うまく言えないがともかく何もかもが違うのだ。
フラウのおかげで落ち着いた俺は気持ちを新たにガチャを引くボタンをタップした。
妖精たちが運んできたのは……木箱、木箱、銀箱、銀箱、木箱、木箱、銅箱、木箱、木箱、銅箱だ。
「お! 銀箱二つ!」
やはりフラウの応援があると引きが違う。
俺はガチャと一体化したかのような感覚を覚え、このあと神引きする未来がありありと想像できる。
そう。まるで未来に起こることは先んじて体験しているだけだと言われたら信じてしまうほどにリアルなイメージが浮かぶのだ。
そう。この感覚こそガチャで、これこそが神引きの予兆に違いない。
もはや、俺がガチャだ!
そう思って最初の銀箱へと進む。
「来い! 変われっ!」
しかし銀箱は銀箱のままで蓋が開く。
『☆4 HP強化』
「お!? よし。景気づけの一発目としては順調だ」
『おめでとうっ! ディーノっ!』
「ああ。ありがとう。だが、次の銀箱で神引きしてやる」
「うんっ!」
しかし銀箱は銀箱のままで、出てきたのは『☆4 魔術師のローブ』だった。
「……くそっ」
『大丈夫だよっ! 次こそきっと、神引きだよっ!』
「ああ。そうだな。ありがとう」
残りの箱を開けて次の十連を引いていく。妖精たちが運んできたのは、木箱、銀箱、木箱、銅箱、銅箱、木箱、木箱、木箱、銀箱、銅箱だ。
よし! 今回も銀箱が二つある。
「よし! 変われ!」
最初の銀箱に気合を入れるが、残念ながら銀箱のままで中からは『☆4 鉄の盾』が出てきた。
「あぁ。ハズレか」
『ディーノっ!』
「大丈夫だって。まだもうひと箱銀箱があるからな。今日初の☆5を引いてやるよ」
『うんっ! がんばれっ!』
「ああ」
俺は画面をタップして箱を開いていくと、二つ目の銅箱がキラリと光って銀箱へと変化する!
「おおっ!?」
予想外の出来事に驚いて何かのリアクションを取る間もなく画面をタップして箱を開いた。
『☆4 MP強化』
「あ? え? おおっ!? よーし!」
『おめでとう! やったね!』
「ああ。だがまだまだだ。この勢いで神引きしていやる」
『うんっ! がんばれっ!』
「ああ」
フラウの応援に俺はしっかりと応えなければならない。気合を入れつつも心を落ち着かせて続く木箱を開けていく。
そしてこの十連最後の銀箱の順番が回ってきた。
「変われ! そろそろ金!」
俺のその言葉が通じたのか、銀箱はキラリと光って金箱へと変化する。
「よーし! よし! 来い! MP! MP強化!」
そして箱から出てきたのは……。
『召喚術(フラウ)』
「お? おおっ!? あれ? 被った!?」
『おめでとうっ! ディーノっ! ☆5だねっ!』
「あ、ああ。ありがとう。でも、召喚術が被るとどうなるんだ?」
『レベルが上がるんだよっ!』
「じゃなくて、上がるとどうなるんだ?」
『えっとね。召喚してもらったときにできることが増えるよっ!』
「そういえば聞きそびれてたけど、フラウを召喚すると何ができるんだ?」
『えっとね。応援してあげられるようになるんだよ!』
「お、おう」
それって他の人と話せるようになったからでは? あれ? そういう問題ではないのか?
そもそもフラウを戦いの場で召喚したのはベヒーモスと戦った時だけだ。だがその時フラウはエレナと一緒にいたので、近くにいなかった俺からは何をしていたのかがまったくわからなかった。
『ちょっとーっ! なんか今疑ってるでしょっ?』
「え? あ、ああ。あまり変わらないかなって」
『もうっ! あたしたち妖精の応援はねっ! 応援された人がもともと使える力を引き出してあげられるんだよっ!』
「もともと使える力を?」
「うん! エレナがベヒーモスを聖なる力で倒せたのは、あたしの応援のおかげなのだっ!」
フラウはそう言ってえっへん、と胸を張った。
「そうなのか……。すごいな」
「でしょっ? あたしはすごいのだーっ」
明るい様子のフラウを見ているとやはり穏やかな気持ちになれる。
「よし! 次を引くか!」
『うんっ! 早くエレナを助けに行ってあげないとっ!』
「ああ!」
==============
次回更新は通常通り、2021/05/16 (日) 21:00 を予定しております。
「どうしてって……それよりも、フラウはどうしてここに戻ってきたんだ? エレナはどうなったんだ!?」
「エレナは、迷宮のすっごく奥に一人でいるよっ! ディーノのことを待ってるよっ! 早く助けに行かなきゃ!」
「やっぱりか……。って、そうじゃなくてどうしてエレナを一人にして戻ってきたんだ?」
「ディーノのMPが切れたら、あたしがエレナのところに居たって何もできないじゃないよっ!」
「あ……」
「もしかして忘れてたの!?」
「あ、ああ。ごめん」
「もー。仕方ないなぁ、ディーノは。それよりも! ディーノたちはなんで助けに行かないのっ? エレナは助けを待ってるんだよっ?」
「どうやら、俺一人で行くしかないみたいだからな」
「えっ? カリストたちはっ?」
「どこにいるかもわからないのに、他の冒険者たちを死なせるような判断はできないって」
「ええっ!?」
「だから救出作戦はしないって」
「ひっどーいっ! たしかにすっごい遠かったけど! 急げばきっと間に合うんだよっ!」
「あのベヒーモス戦で、カリストさんたちは無理だってなったのかもしれない」
「あ……」
ぷりぷりと怒っていたフラウだが、しょんぼりとした様子になってしまった。
「だから、俺が有り金を全部はたいてガチャを引いてるんだ。ここで神引きして、たとえ一人だったとしてもエレナを助けに行こうと思ってさ」
「……ディーノっ。うん! うん! そうだねっ! 神引きしちゃおう!」
「ああ。任せておけ」
「うん。ディーノ! 頑張れっ!」
「ああ。ありがとう!」
ああ、やはりフラウの応援は背中を押してくれる。この応援がもらえるだけでガチャを引くときの安定感というか何というか。そう、うまく言えないがともかく何もかもが違うのだ。
フラウのおかげで落ち着いた俺は気持ちを新たにガチャを引くボタンをタップした。
妖精たちが運んできたのは……木箱、木箱、銀箱、銀箱、木箱、木箱、銅箱、木箱、木箱、銅箱だ。
「お! 銀箱二つ!」
やはりフラウの応援があると引きが違う。
俺はガチャと一体化したかのような感覚を覚え、このあと神引きする未来がありありと想像できる。
そう。まるで未来に起こることは先んじて体験しているだけだと言われたら信じてしまうほどにリアルなイメージが浮かぶのだ。
そう。この感覚こそガチャで、これこそが神引きの予兆に違いない。
もはや、俺がガチャだ!
そう思って最初の銀箱へと進む。
「来い! 変われっ!」
しかし銀箱は銀箱のままで蓋が開く。
『☆4 HP強化』
「お!? よし。景気づけの一発目としては順調だ」
『おめでとうっ! ディーノっ!』
「ああ。ありがとう。だが、次の銀箱で神引きしてやる」
「うんっ!」
しかし銀箱は銀箱のままで、出てきたのは『☆4 魔術師のローブ』だった。
「……くそっ」
『大丈夫だよっ! 次こそきっと、神引きだよっ!』
「ああ。そうだな。ありがとう」
残りの箱を開けて次の十連を引いていく。妖精たちが運んできたのは、木箱、銀箱、木箱、銅箱、銅箱、木箱、木箱、木箱、銀箱、銅箱だ。
よし! 今回も銀箱が二つある。
「よし! 変われ!」
最初の銀箱に気合を入れるが、残念ながら銀箱のままで中からは『☆4 鉄の盾』が出てきた。
「あぁ。ハズレか」
『ディーノっ!』
「大丈夫だって。まだもうひと箱銀箱があるからな。今日初の☆5を引いてやるよ」
『うんっ! がんばれっ!』
「ああ」
俺は画面をタップして箱を開いていくと、二つ目の銅箱がキラリと光って銀箱へと変化する!
「おおっ!?」
予想外の出来事に驚いて何かのリアクションを取る間もなく画面をタップして箱を開いた。
『☆4 MP強化』
「あ? え? おおっ!? よーし!」
『おめでとう! やったね!』
「ああ。だがまだまだだ。この勢いで神引きしていやる」
『うんっ! がんばれっ!』
「ああ」
フラウの応援に俺はしっかりと応えなければならない。気合を入れつつも心を落ち着かせて続く木箱を開けていく。
そしてこの十連最後の銀箱の順番が回ってきた。
「変われ! そろそろ金!」
俺のその言葉が通じたのか、銀箱はキラリと光って金箱へと変化する。
「よーし! よし! 来い! MP! MP強化!」
そして箱から出てきたのは……。
『召喚術(フラウ)』
「お? おおっ!? あれ? 被った!?」
『おめでとうっ! ディーノっ! ☆5だねっ!』
「あ、ああ。ありがとう。でも、召喚術が被るとどうなるんだ?」
『レベルが上がるんだよっ!』
「じゃなくて、上がるとどうなるんだ?」
『えっとね。召喚してもらったときにできることが増えるよっ!』
「そういえば聞きそびれてたけど、フラウを召喚すると何ができるんだ?」
『えっとね。応援してあげられるようになるんだよ!』
「お、おう」
それって他の人と話せるようになったからでは? あれ? そういう問題ではないのか?
そもそもフラウを戦いの場で召喚したのはベヒーモスと戦った時だけだ。だがその時フラウはエレナと一緒にいたので、近くにいなかった俺からは何をしていたのかがまったくわからなかった。
『ちょっとーっ! なんか今疑ってるでしょっ?』
「え? あ、ああ。あまり変わらないかなって」
『もうっ! あたしたち妖精の応援はねっ! 応援された人がもともと使える力を引き出してあげられるんだよっ!』
「もともと使える力を?」
「うん! エレナがベヒーモスを聖なる力で倒せたのは、あたしの応援のおかげなのだっ!」
フラウはそう言ってえっへん、と胸を張った。
「そうなのか……。すごいな」
「でしょっ? あたしはすごいのだーっ」
明るい様子のフラウを見ているとやはり穏やかな気持ちになれる。
「よし! 次を引くか!」
『うんっ! 早くエレナを助けに行ってあげないとっ!』
「ああ!」
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次回更新は通常通り、2021/05/16 (日) 21:00 を予定しております。
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