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第37話 他人の金で引くガチャは蜜の味?(後編)
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「なるほど。何と言ったら良いかわからん結果だな」
「神話に出てくるような防具が買えたんだから、十分にお金を払った価値はあったんじゃないのかしらン?」
やはりトーニャちゃんはガチャの価値をよく分かっている。さすがだ。
だが本当に大変なのはここから先、ピックアップ一点狙いの状況になってからが本番なのだ。
さっさと聖剣を引き当てて楽になりたい気持ちと他人の金でガチャを引けているこの状況を続けたい気持ちとがせめぎ合う。
そんな気持ちの中俺はまた百枚チケットを買うとガチャを引いていく。
そしてそんな気持ちで引いていたせいか、俺はガチャに集中できていなかったようだ。
なんと俺はその後の九十連で☆4の『魔術師の帽子』一つだけというとんでもない爆死をしてしまった。
「ひでぇ有様だな」
「大赤字よねン」
「ディーノさん。あまりこのギフトは使わない方が……」
これだけ爆死を続けていればセリアさんがそう思うのも無理はないだろう。だが、大切なことはガチャとの付き合い方なのだ。
前世での俺のように借金を重ねて見境なしに引けば破滅が待っているが、自分の収入の範囲内で正しく付き合えばガチャは確実に俺の人生を助けてくれることだろう。
俺は大きく一息つくと再び集中する。そしてタイミングを見計らってスクリーンをタップした。
妖精たちが箱を一生懸命運んでくる。銀箱が一つだ。
さあ、何が出る?
期待と共に見守ると、何と銀箱は金箱へと変化した!
そして中から出てきたのはなんと! 『断魔の聖剣』だった。
「あ、出た。出た!」
『出たねー! おめでとー!』
俺は目の前に現れた聖剣を手に取る。
それはまるで手に吸い付くかのようなぴったりとした握り心地だ。
「おお、それが!」
「あらン?」
「それが、聖剣なんですか?」
支部長は獲物を見るかのような目で、トーニャちゃんは心底興味深いといった表情で、そしてセリアさんはどこか疑っているような目で俺の握る剣を見ている。
「よし。じゃあアントニオ、持ってみろ」
「んー、ダメな気しかしないわよン?」
俺が机の上に剣を置き、それを握ろうとトーニャちゃんは手を伸ばす。すると先ほどのリプレイを見ているかのようにパチンという音と共にその手が弾かれてしまった。
「チッ。ダメか。じゃあ、そいつはウチで回収して使える奴が現れるまで保管させてもらうぞ」
「え? 最初から取り上げるつもりだったんですか?」
「何だ? 経費なんだから当然だろう?」
「装備できる者がいたら売るって話だったじゃないですか」
「お前のようなひよっこに持たせておくのははっきり言って無駄だ。お前が戦えるのなら別だが、アントニオはおろかカリスト達とやっても瞬殺されるレベルじゃねぇか」
「ぐ……」
それを言われると俺としても苦しいわけだが……。
ぐうの音も出ない指摘に俺は言葉に詰まってしまったが、なんとセリアさんが支部長に抗議してくれた。
「支部長。それはいくらなんでもあんまりではありませんか?」
「何だ? セリア、お前は今の状況をわかって言っているのか? フリオの奴は逆恨みして冒険者ギルド全体を狙ってるんだ。それをこのひよっこがどうにかできると思っているのか?」
「それは詭弁です。たとえ状況がそうであったとしてもこのような騙し打ちのような形はいけません。それにディーノさんのギフトでは同じアイテムを複数買う事はできないそうではありませんか。そうすると、私たち冒険者ギルドはディーノさんが手に入れられるはずの剣を騙して奪い取ったことになるではありませんか。信用が第一のギルドがそのような事をするのは許されません」
「だが! 人の命がかかっているんだ。きれいごとだけじゃすまねぇんだよ!」
「そうであればこそ最初に説明すべきです。大体、まだ契約書を作ってすらいないのですよ? ディーノさんにはその聖剣を差し出す理由はどこにもありません。もしディーノさんが領主様に訴え出た時、どう弁解をなさるおつもりですか?」
「む……」
セリアさんのその言葉に支部長がたじろいだ。
「んふふ、セリアちゃんったらディーノちゃんの事気に入っているのね。ハビエル、あなたの負けよン」
「だがこいつはギルドの金を使って買ったんだ」
「最初は前金って言ってたじゃないの。あなたの負けよン。あたしはディーノちゃんの味方をするわ」
俺が口出しする間もなく勝手に話が進んでいく。
「じゃあ、フリオの討伐はどうするんだ?」
「もちろん、やるわよン」
「あの装備なしでか?」
「あら、誰もそんなこと言っていないわよン? フリオちゃんを倒すのはディーノちゃんだもの」
「「はぁっ!?」」
俺と支部長は同時に声を上げた。
「バカ言ってんじゃねぇ。こんな装備に守られているだけのひよっこが勝てるわけがないだろう」
「そうですよ。俺はフリオの一撃に反応すらできなかったんですから」
俺が支部長に続いてそう言うと支部長は哀れみの視線を向けてきた。
いや、自分で言っていて悲しくはあるが事実なんだから仕方がないだろう。
「大丈夫。あたしが鍛えてあげるわン」
「え?」
トーニャちゃんはそう言ってパチンと俺にウィンクをしたのだった。
────
今回のガチャの結果:
☆5:
断魔の聖剣
断魔の宝冠
☆4:
AGI強化
VIT強化
ショートボウ
魔術師の杖
魔術師の帽子
☆3:
テント(小)×3
火打石
干し肉
堅パン×4
石の矢十本×2
鉄のスコップ×3
銅の剣×7
皮のブーツ×4
皮の鎧(下半身)×2
皮の鎧(上半身)
皮の盾×2
皮の水筒×3
皮の袋×6
皮の帽子×2
片刃のナイフ×4
木の食器セット×5
薬草×4
旅人のマント×3
☆2:
ただの石ころ×16
枯れ葉×19
糸×8
小さな布切れ×19
薪×7
動物の骨×8
馬の糞×15
皮の紐×14
腐った肉×14
藁しべ×16
================
思ったよりも早く聖剣が出てしまってステータスが伸びませんでした(汗
大量にお金を使ってもう少しトラブルになりつつ強化を目論んでいたのですが……これも神の思し召しですね。
ちなみにガチャテーブルもバグを疑ったのですが、次に聖剣を出すのに 1,058 連かかったので本当に神引きしていたようです。
「神話に出てくるような防具が買えたんだから、十分にお金を払った価値はあったんじゃないのかしらン?」
やはりトーニャちゃんはガチャの価値をよく分かっている。さすがだ。
だが本当に大変なのはここから先、ピックアップ一点狙いの状況になってからが本番なのだ。
さっさと聖剣を引き当てて楽になりたい気持ちと他人の金でガチャを引けているこの状況を続けたい気持ちとがせめぎ合う。
そんな気持ちの中俺はまた百枚チケットを買うとガチャを引いていく。
そしてそんな気持ちで引いていたせいか、俺はガチャに集中できていなかったようだ。
なんと俺はその後の九十連で☆4の『魔術師の帽子』一つだけというとんでもない爆死をしてしまった。
「ひでぇ有様だな」
「大赤字よねン」
「ディーノさん。あまりこのギフトは使わない方が……」
これだけ爆死を続けていればセリアさんがそう思うのも無理はないだろう。だが、大切なことはガチャとの付き合い方なのだ。
前世での俺のように借金を重ねて見境なしに引けば破滅が待っているが、自分の収入の範囲内で正しく付き合えばガチャは確実に俺の人生を助けてくれることだろう。
俺は大きく一息つくと再び集中する。そしてタイミングを見計らってスクリーンをタップした。
妖精たちが箱を一生懸命運んでくる。銀箱が一つだ。
さあ、何が出る?
期待と共に見守ると、何と銀箱は金箱へと変化した!
そして中から出てきたのはなんと! 『断魔の聖剣』だった。
「あ、出た。出た!」
『出たねー! おめでとー!』
俺は目の前に現れた聖剣を手に取る。
それはまるで手に吸い付くかのようなぴったりとした握り心地だ。
「おお、それが!」
「あらン?」
「それが、聖剣なんですか?」
支部長は獲物を見るかのような目で、トーニャちゃんは心底興味深いといった表情で、そしてセリアさんはどこか疑っているような目で俺の握る剣を見ている。
「よし。じゃあアントニオ、持ってみろ」
「んー、ダメな気しかしないわよン?」
俺が机の上に剣を置き、それを握ろうとトーニャちゃんは手を伸ばす。すると先ほどのリプレイを見ているかのようにパチンという音と共にその手が弾かれてしまった。
「チッ。ダメか。じゃあ、そいつはウチで回収して使える奴が現れるまで保管させてもらうぞ」
「え? 最初から取り上げるつもりだったんですか?」
「何だ? 経費なんだから当然だろう?」
「装備できる者がいたら売るって話だったじゃないですか」
「お前のようなひよっこに持たせておくのははっきり言って無駄だ。お前が戦えるのなら別だが、アントニオはおろかカリスト達とやっても瞬殺されるレベルじゃねぇか」
「ぐ……」
それを言われると俺としても苦しいわけだが……。
ぐうの音も出ない指摘に俺は言葉に詰まってしまったが、なんとセリアさんが支部長に抗議してくれた。
「支部長。それはいくらなんでもあんまりではありませんか?」
「何だ? セリア、お前は今の状況をわかって言っているのか? フリオの奴は逆恨みして冒険者ギルド全体を狙ってるんだ。それをこのひよっこがどうにかできると思っているのか?」
「それは詭弁です。たとえ状況がそうであったとしてもこのような騙し打ちのような形はいけません。それにディーノさんのギフトでは同じアイテムを複数買う事はできないそうではありませんか。そうすると、私たち冒険者ギルドはディーノさんが手に入れられるはずの剣を騙して奪い取ったことになるではありませんか。信用が第一のギルドがそのような事をするのは許されません」
「だが! 人の命がかかっているんだ。きれいごとだけじゃすまねぇんだよ!」
「そうであればこそ最初に説明すべきです。大体、まだ契約書を作ってすらいないのですよ? ディーノさんにはその聖剣を差し出す理由はどこにもありません。もしディーノさんが領主様に訴え出た時、どう弁解をなさるおつもりですか?」
「む……」
セリアさんのその言葉に支部長がたじろいだ。
「んふふ、セリアちゃんったらディーノちゃんの事気に入っているのね。ハビエル、あなたの負けよン」
「だがこいつはギルドの金を使って買ったんだ」
「最初は前金って言ってたじゃないの。あなたの負けよン。あたしはディーノちゃんの味方をするわ」
俺が口出しする間もなく勝手に話が進んでいく。
「じゃあ、フリオの討伐はどうするんだ?」
「もちろん、やるわよン」
「あの装備なしでか?」
「あら、誰もそんなこと言っていないわよン? フリオちゃんを倒すのはディーノちゃんだもの」
「「はぁっ!?」」
俺と支部長は同時に声を上げた。
「バカ言ってんじゃねぇ。こんな装備に守られているだけのひよっこが勝てるわけがないだろう」
「そうですよ。俺はフリオの一撃に反応すらできなかったんですから」
俺が支部長に続いてそう言うと支部長は哀れみの視線を向けてきた。
いや、自分で言っていて悲しくはあるが事実なんだから仕方がないだろう。
「大丈夫。あたしが鍛えてあげるわン」
「え?」
トーニャちゃんはそう言ってパチンと俺にウィンクをしたのだった。
────
今回のガチャの結果:
☆5:
断魔の聖剣
断魔の宝冠
☆4:
AGI強化
VIT強化
ショートボウ
魔術師の杖
魔術師の帽子
☆3:
テント(小)×3
火打石
干し肉
堅パン×4
石の矢十本×2
鉄のスコップ×3
銅の剣×7
皮のブーツ×4
皮の鎧(下半身)×2
皮の鎧(上半身)
皮の盾×2
皮の水筒×3
皮の袋×6
皮の帽子×2
片刃のナイフ×4
木の食器セット×5
薬草×4
旅人のマント×3
☆2:
ただの石ころ×16
枯れ葉×19
糸×8
小さな布切れ×19
薪×7
動物の骨×8
馬の糞×15
皮の紐×14
腐った肉×14
藁しべ×16
================
思ったよりも早く聖剣が出てしまってステータスが伸びませんでした(汗
大量にお金を使ってもう少しトラブルになりつつ強化を目論んでいたのですが……これも神の思し召しですね。
ちなみにガチャテーブルもバグを疑ったのですが、次に聖剣を出すのに 1,058 連かかったので本当に神引きしていたようです。
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