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第20話 ハモラ村の冒険者と妖精の悪戯
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森の中の水場で一泊した俺たちは次の日の夕方にハモラの村へと到着した。野営の時には見張りの心得や野営に適した場所の見つけ方、安心な水場の選び方など様々な事を教えてもらった。
もう俺にとって『蒼銀の牙』の皆さんは師匠も同然だ。ガチャでたまたま手に入った毒消しポーションがこれだけの縁を結んでくれたのだから、ガチャの神様にはもう足を向けて眠ることはできないだろう。
そうしてハモラ村に到着すると村民たちは総出でホアキン商会の商隊を歓迎してくれた。何でも商隊が訪れるのは三か月に一度しかないらしく、この機会を逃せばまた三か月待たなくてはならないそうだ。
もう夕方だというのに村の中心部の広場に着くとホアキン商会の皆さんはすぐに品物を売り始めた。すると村中の人が集まってきているのではないかと思うほどの人数が殺到し、品物が飛ぶように売れていく。
特に塩のように内陸のこの村では産出できないと思われる生活必需品が飛ぶように売れていく。こうした商品が届かなければ命に関わるといっても良いレベルなのだろうと考えると何とも身の引き締まる思いだ。
「すごいですね」
「そうだね。でも、これは彼らの暮らしには欠かせない大切な物資だし、それに買い物をするということ自体もこの村では非日常の娯楽なんだ。僕たち冒険者は、そんな大切なものを守っているんだよ」
「はい。そうですね。この笑顔を見れて、何だかよくわからないですけど、すごい嬉しいです」
「そうか。ディーノ君もそう思ってくれるんだね。やはりセリアちゃんの人を見る目はすごいね」
「え? セリアさんが何か言っていたんですか?」
「あれ? 聞いていないのかい? 君を異例の速さでEランクに上げるように推薦したのは彼女だよ? 人柄が良くて本当に真面目に仕事をしているってさ。彼女がそんなことを言うの初めてのはずだからね。ギルドのある程度上にいる人はみんな知っていることなんだよ」
「そ、そうなんですか……」
ガチャのためにやっていたとはいえ、そんな風に評価されるのは素直にありがたい。
夕日で赤く照らされた買い物客たちで賑わう広場をぼんやりと眺めながらカリストさんとそんな話をしていたのだった。
****
ハモラ村に到着した翌日、俺たちはフリータイムとなったのでカリストさん達と狩りに出掛けることになった。この村で商隊を襲う人間はいないため、村内での護衛は不要なのだそうだ。
ちなみにメラニアさんは村に残るそうなので今日のメンバーはカリストさん、リカルドさん、ルイシーナさん、俺、そしてハモラ村に住む唯一の冒険者らしいリューイさん 17 歳だ。
「おい、ガキ。足を引っ張るんじゃねぇぞ。俺はもう三年以上冒険者としてこの村を守っているベテランだからな」
「はぁ」
「何だその返事は! 俺はハモラ村の狩人リューイ様だぞ!」
「まあまあ、リューイ君。君もディーノ君も同じEランクなんだから、仲良くね」
「カリストさん! うっす!」
リューイさんはそう元気よく返事をすると俺を一睨みしてきた。
やれやれ。何やら先行きが不安だが、大丈夫だろうか?
やや不安を残しつつ、俺たちは森の奥へと分け入っていった。
****
「っしゃあ! 命中! カリストさん! 見てくれました?」
何かの鳥を射落としたリューイさんがカリストさんにこれでもかとアピールをしている。
「ああ、そうだね。見事だったね」
「ったりめぇっすよ。俺はハモラ村の狩人の二つ名持ちですから」
そう言って嬉しそうに胸を張ると、また俺をギロリと睨んできた。
「おい、お前。お前も少しは活躍したらどうだ? その腰の剣は飾りか?」
「はあ。まあ、その機会があればやりますよ」
何故会ったばかりの俺にここまで突っかかってくるのかはわからないが、何か気に入らない事でもあったようだ。
『ねー、あいつ態度悪ーい! ムカつくからあいつが寝てるとき落書きしていい?』
「(やめてくれ。余計な騒ぎを起こすと面倒になりそうだ)」
『ちぇえー』
フラウが何とも恐ろしい提案をしてくるが俺は小声で却下した。
『じゃあさ! しっかり活躍してあいつよりもすごいところを見せてやってよ!』
そうは言うが、弓矢が相手では森での狩りにはさすがに分が悪い。
「(まあ、弓矢じゃどうにもならない状況になったらな)」
『むむー。わかった。ちょっと待っててよねっ!』
フラウはふくれっ面になるとふらりとどこかへと飛んで行った。
今日はじめて知ったがあいつ、俺から離れても大丈夫なんだ。というか、何をするつもりなんだ? フラウに攻撃力は無いはずだが……。
とりあえずそのうち戻ってくるだろうと狩りを再開し、しばらく森の中を歩いていると突然『蒼銀の牙』の三人が警戒態勢を取った。
「え?」
「静かに! 何かが近づいてくる」
俺も銅の剣を抜くとカリストさんを見習って辺りを警戒する。そして数分の静寂の後、ドシン、ドシンと足音が聞こえてきた。
「これは、まさか……」
カリストさんの表情がさっと青ざめる。そして次の瞬間、森の木々の間から巨大なトカゲ、いや恐竜が現れた。その姿はまるでティラノサウルスのようだ。
「馬鹿な! どうしてブラッドレックスがこんなところに!」
『ディーノー! 連れてきたよっ! やっちゃって!』
は? 連れてきた?
もう俺にとって『蒼銀の牙』の皆さんは師匠も同然だ。ガチャでたまたま手に入った毒消しポーションがこれだけの縁を結んでくれたのだから、ガチャの神様にはもう足を向けて眠ることはできないだろう。
そうしてハモラ村に到着すると村民たちは総出でホアキン商会の商隊を歓迎してくれた。何でも商隊が訪れるのは三か月に一度しかないらしく、この機会を逃せばまた三か月待たなくてはならないそうだ。
もう夕方だというのに村の中心部の広場に着くとホアキン商会の皆さんはすぐに品物を売り始めた。すると村中の人が集まってきているのではないかと思うほどの人数が殺到し、品物が飛ぶように売れていく。
特に塩のように内陸のこの村では産出できないと思われる生活必需品が飛ぶように売れていく。こうした商品が届かなければ命に関わるといっても良いレベルなのだろうと考えると何とも身の引き締まる思いだ。
「すごいですね」
「そうだね。でも、これは彼らの暮らしには欠かせない大切な物資だし、それに買い物をするということ自体もこの村では非日常の娯楽なんだ。僕たち冒険者は、そんな大切なものを守っているんだよ」
「はい。そうですね。この笑顔を見れて、何だかよくわからないですけど、すごい嬉しいです」
「そうか。ディーノ君もそう思ってくれるんだね。やはりセリアちゃんの人を見る目はすごいね」
「え? セリアさんが何か言っていたんですか?」
「あれ? 聞いていないのかい? 君を異例の速さでEランクに上げるように推薦したのは彼女だよ? 人柄が良くて本当に真面目に仕事をしているってさ。彼女がそんなことを言うの初めてのはずだからね。ギルドのある程度上にいる人はみんな知っていることなんだよ」
「そ、そうなんですか……」
ガチャのためにやっていたとはいえ、そんな風に評価されるのは素直にありがたい。
夕日で赤く照らされた買い物客たちで賑わう広場をぼんやりと眺めながらカリストさんとそんな話をしていたのだった。
****
ハモラ村に到着した翌日、俺たちはフリータイムとなったのでカリストさん達と狩りに出掛けることになった。この村で商隊を襲う人間はいないため、村内での護衛は不要なのだそうだ。
ちなみにメラニアさんは村に残るそうなので今日のメンバーはカリストさん、リカルドさん、ルイシーナさん、俺、そしてハモラ村に住む唯一の冒険者らしいリューイさん 17 歳だ。
「おい、ガキ。足を引っ張るんじゃねぇぞ。俺はもう三年以上冒険者としてこの村を守っているベテランだからな」
「はぁ」
「何だその返事は! 俺はハモラ村の狩人リューイ様だぞ!」
「まあまあ、リューイ君。君もディーノ君も同じEランクなんだから、仲良くね」
「カリストさん! うっす!」
リューイさんはそう元気よく返事をすると俺を一睨みしてきた。
やれやれ。何やら先行きが不安だが、大丈夫だろうか?
やや不安を残しつつ、俺たちは森の奥へと分け入っていった。
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「っしゃあ! 命中! カリストさん! 見てくれました?」
何かの鳥を射落としたリューイさんがカリストさんにこれでもかとアピールをしている。
「ああ、そうだね。見事だったね」
「ったりめぇっすよ。俺はハモラ村の狩人の二つ名持ちですから」
そう言って嬉しそうに胸を張ると、また俺をギロリと睨んできた。
「おい、お前。お前も少しは活躍したらどうだ? その腰の剣は飾りか?」
「はあ。まあ、その機会があればやりますよ」
何故会ったばかりの俺にここまで突っかかってくるのかはわからないが、何か気に入らない事でもあったようだ。
『ねー、あいつ態度悪ーい! ムカつくからあいつが寝てるとき落書きしていい?』
「(やめてくれ。余計な騒ぎを起こすと面倒になりそうだ)」
『ちぇえー』
フラウが何とも恐ろしい提案をしてくるが俺は小声で却下した。
『じゃあさ! しっかり活躍してあいつよりもすごいところを見せてやってよ!』
そうは言うが、弓矢が相手では森での狩りにはさすがに分が悪い。
「(まあ、弓矢じゃどうにもならない状況になったらな)」
『むむー。わかった。ちょっと待っててよねっ!』
フラウはふくれっ面になるとふらりとどこかへと飛んで行った。
今日はじめて知ったがあいつ、俺から離れても大丈夫なんだ。というか、何をするつもりなんだ? フラウに攻撃力は無いはずだが……。
とりあえずそのうち戻ってくるだろうと狩りを再開し、しばらく森の中を歩いていると突然『蒼銀の牙』の三人が警戒態勢を取った。
「え?」
「静かに! 何かが近づいてくる」
俺も銅の剣を抜くとカリストさんを見習って辺りを警戒する。そして数分の静寂の後、ドシン、ドシンと足音が聞こえてきた。
「これは、まさか……」
カリストさんの表情がさっと青ざめる。そして次の瞬間、森の木々の間から巨大なトカゲ、いや恐竜が現れた。その姿はまるでティラノサウルスのようだ。
「馬鹿な! どうしてブラッドレックスがこんなところに!」
『ディーノー! 連れてきたよっ! やっちゃって!』
は? 連れてきた?
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