魔族に育てられた聖女と呪われし召喚勇者【完結】

一色孝太郎

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第156話 アンデッドの狂宴

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今日の夜は、豆の煮込みの缶詰と、缶詰パンを食べた。

缶詰のパンって初めて食べたけど、思った以上に柔らかくて美味いのな。
ふわふわのモチモチだ。
大粒のレーズンが入っているそれは、バルギーも気に入ったみたいだ。
『凄いな、街でもこんなに柔らかいパンは食えないぞ。一体どうやって作られているのだ?』
食べ切るのが惜しいのか、少しずつ大切に食べるバルギーがちょっと可愛い。
バルギーの家に無事到着したら、余った分は全部やろう。
この世界に慣れるまでは、世話になりたいしな。

食事を終えて、俺は横になる。
ちょっとした怪我はしたけど、その分今日はゆっくり休めた。
やっぱり自分で思っている以上に体は疲れてたみたいで、今日の休息で体がかなり楽になった。

今日進めなかった分、明日は頑張らないとな。
平気な顔をしているけど、やっぱりバルギーの怪我も気になる。
俺の怪我はともかく、バルギーのはいち早く医者に見せないとまずいヤツだ。
むしろ、あんな大怪我で涼しい顔をしているバルギーが怖い。
俺だったら、そうそうに駄目になってると思う。
痛いの嫌いだもん。

日中眠ったせいか、横になっても眠気が来ない。
寝るには時間も早いのかもしれない。
バルギーもまだ座ったままで、横になる気配は無い。

何となくゴロゴロしていたら、バルギーの大きな手が伸びてきた。
『ケイタ、寝る前にもう少し揉んでやる』
横になっていた俺の体を、バルギーの手がまたマッサージするように揉みほぐしだす。
「おぉ、今日は大サービスだなバルギー」
日中にしてもらったマッサージの気持ちよさを思い出し、俺はいそいそとうつ伏せになった。
片手だけで揉まれているのに、手が大きいからか力があるからか不足は全然感じない。
俺は目を瞑り、体を揉まれる心地よさに集中した。
バルギーの手が気持ちよくって、体から力が抜ける。
油断すると、だらし無く半開きになった口から涎が出そうだ。
打ち付けた腰辺りを避けながら、尻、太ももと歩くのに使う筋肉を解してくれる。
ちょっと痛気持ちいいくらいの力加減にウットリとしながら、この時、俺はつい余計なことを思い出してしまった。

あぁ・・・そう言えば、昔先輩に連れて行ってもらった風俗でお姉さんにしてもらったマッサージも気持ちかったなぁ・・・。

お姉さんが裸で俺の背中にのって、胸やら腰を揺らしながらイヤらしく揉んでくれたんだ。
ただ気持ちいいマッサージという共通点だけで記憶が繋がっただけなのだが。
次の瞬間、自分のしょうもない思考回路に後悔した。
目を瞑っていたせいで、記憶の中のお姉さんの気持ちいいマッサージと、バルギーの手の感触が結びついてしまったのだ。

あっ・・・やべっ、勃っちった・・・。
バルギーの手つきは勿論全くいやらしいものでは無かったのだが、俺の頭がイヤラしい方へ行ってしまったのが悪かった。
太ももを揉まれた時に、バルギーの親指が腿の内側を押したのにビクリと反応してしまう。
『すまない、痛かったか?』
俺の反応にバルギーが力を弱くしてくれたが、そのせいでサワサワとした触り方になってますます体の中心に血が集まる。
『バルギー!ありがとう!私、大丈夫』
慌ててバルギーの手を掴んで離すが。
『どうした?痛かったのか?それならもう少し優しくやろう』
俺の焦りは通じてないようで、バルギーの手がまた伸びてくる。
「いや、もう大丈夫だから!マジで!」
『急にどうした?』
分かっていないバルギーに、俺はため息を溢してしまった。

・・・まぁ、男同士だし、別にいいか。
俺は起き上がって、バルギーの方へ体を向ける。
『バルギー、ごめん。私、大丈夫、無い』
俺は自分の情けない状態の股間を指差す。
多少の気恥ずかしさはあるが、男同士なら笑って済ませられることだ。
10代の頃なんかアホなダチどもとAV鑑賞会なんぞもしていたから、男にそういう状態を見られるのに正直そこまでの羞恥心は感じない。
いや、まったく感じてない訳ではないぞ?
それなりに気恥ずかしさはあるけど、男同士なら理解してもらえる生理現象だ。
そう思ってバルギーを見たら、彼は目を見開いて固まっていた。
『っ!すまない!そういうつもりは無かったのだっ』
ハッと我に返ったように、バルギーが目を逸らす。
俺よりも動揺している。
そんなに反応されると、こっちも余計恥ずかしくなるんだけど・・・。

さっさと処理してしまおうと、俺は川辺へ向かおうと立ち上がる。
しかし、直ぐにバルギーに手を掴まれて阻止されてしまった。
『どこへ行く?』
「いや・・・さっさと抜いてこようかと・・・」
手を筒状にして扱く仕草をすると、バルギーの顔が驚くほど赤くなった。
いや、そんな顔するなら早く手を離してくれ。
『分かった・・・』
バルギーが杖を手に取り、立ち上がろうとする。
え、ちょ、何ついてこようとしてんだ、こいつ。
流石に抜いてるとこ見られるのはゴメンだぞ。
『バルギー、川、行く、駄目。私、見る、駄目』
バルギーの肩をそっと押す。
『む・・そ、そうか。駄目なのか。だが・・・・その手でできるのか?』
バルギーが気まずそうに、俺の手を指差した。
包帯を巻かれた自分の手を見て、俺は思わず舌打ちしそうになった。
そうだった、包帯してたわ。
せっかく綺麗に巻かれたのを汚したくは無い。
・・・・んー・・・、指だけでいけるか・・?
目を瞑りイメージしてみる。
・・・うん、いけるいける。大丈夫だ。
『バルギー、私、大丈夫!』
今度は指だけで輪を作って動かして見せると、その動きに、やはりバルギーは動揺するように目を泳がせた。
バルギーは下ネタ駄目なタイプか?
俺は大好きだぞ。
『バルギー、ここ。私、川。バルギー、川、行く、ダメ』
ついてくるなよと、立ち上がりそうなバルギーの肩を押さえると、今度はアッサリ手を離してくれた。
良かった、ついてこられたらどうしようかと思ったわ。

『・・・・終わったら直ぐに戻ってきなさい・・・』
俯いたバルギーが早く行けと言った感じに、軽く手を振る。
「いってきまー」
俺は気恥ずかしさを紛らわすように、わざと軽く言って川へと足を向けた。
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